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公共の場所における分煙のあり方検討会報告書(平成8年3月)

1. はじめに

2. 公共の場所における分煙のあり方の基本的考え方
(1)公共の場所における分煙の基本原則
(2)分煙実施にあたっての基本事項

3. 分煙のあり方の具体的内容
(1)屋内の場所
 @禁煙原則に立脚した対策が望まれる場所
  (保健医療機関、教育機関、官公庁)
 A分煙対策を強く推進することが望まれる場所
  (公共交通機関、金融機関、博物館等、運動施設 等)
 B事業主の主体性に基づいて適切な分煙対策を推進することが望まれる場所
  (飲食店、販売業、宿泊施設、娯楽施設、遊技場 等)
(2)屋外の場所(スポーツ施設、公園、道路 等)

4. 分煙対策の推進方策
(1)分煙推進の実施主体に対する働きかけ
(2)公共の場所の利用者に対する啓発普及
(3)分煙機器の開発普及
(4)実施状況の把握と評価

◆ 公共の場所における分煙のあり方検討会メンバー名簿

◆ 参考資料
 1.分煙の現状
 2.WHOにおける分煙対策推進に関する決議
 3.各国における公共の場所での喫煙に対する取り組み
 4.受動喫煙の健康影響


****************************


1 はじめに  

 自分の意志とは無関係に環境中のたばこの煙に暴露され、それを吸引することを受動喫煙という。受動喫煙による非喫煙者への健康影響については、流涙、鼻閉、頭痛等の諸症状や呼吸抑制、心拍増加、血管収縮等生理学的反応等の急性影響が認められているとともに、慢性影響については、肺がん、呼吸器疾患等へのリスクを示す疫学的研究があり、公衆衛生上の取り組みが求められている。また、受動喫煙は、非喫煙者に対し、不快感やストレス等精神・心理面の影響を与えていることが指摘されている。

 また、昭和63年に実施された、総理府の「健康と喫煙問題に関する世論調査」では、喫煙の迷惑感があると答えた者が65%おり、非喫煙者では77%に達している。さらに、喫煙場所をもっと制限すべきと答えた者が52%おり、非喫煙者では60%であった。

 このため、不特定多数の人が、社会的な必要のため利用する公共の場所では、非喫煙者に対する受動喫煙の健康影響や不快感を排除又は減少させるための環境づくりという観点から、分煙対策を積極的に推進することが必要である。

 厚生省では、今後の総合的なたばこ対策の礎となる「たばこ行動計画」について検討を行うため、平成6年10月「たばこ行動計画検討会」を開催し、平成7年3月に報告書をとりまとめた。同年4月に、厚生省の公衆衛生審議会から厚生大臣に対して、「たばこ行動計画検討会報告書」が、今後のたばこ対策を進めるにあたって指針とすべき計画として適当であるという意見具申がなされ、WHO(世界保健機関)にも報告している。同計画は、「国においては、公共の場における分煙のあり方について、施設の設置主体、施設の態様等に応じた分煙対策の実施に関する基本的な考え方及び配慮事項を提示すること等により、分煙対策を支援すべきである。」と指摘している。

 これを受けて、本検討会において「公共の場所における分煙のあり方」について検討を行った。本検討会で取り上げた公共の場所は、たばこ行動計画の中で、分煙対策を進めるべき場所とされた所に加え、上記の世論調査で、喫煙を制限すべき場所として挙げられた所等を勘案して選択した。

 「公共の場所における分煙のあり方」を実効性あるものとするため、学識経験者や、職域の代表者、施設の関係者等を含む各界からのメンバーにより、幅広く検討を重ね、これらの意見の集約の上に、本報告書をとりまとめたものである。

2 公共の場所における分煙のあり方の基本的考え方  

(1)公共の場所における分煙の基本原則

@ 不特定多数の人が社会的な必要のため利用する公共の場所では、非喫煙者に対する受動喫煙の健康影響や不快感を排除又は減少することを目的として、分煙を進めることが必要である。

A 分煙対策を推進するに当たっては、受動喫煙に対する基本認識やたばこを巡る現状等を踏まえ、非喫煙者と喫煙者のコンセンサスが得られるよう努めるなど社会生活の調和の中で十分な配慮がなされる必要がある。

(2)分煙実施にあたっての基本事項

@ 分煙の方法には、喫煙場所を完全に分割された空間とするものから、禁煙時間と喫煙時間を設定するものまで様々であるが、受動喫煙の影響を排除又は減少するためには、空間を分ける分煙を行うべきである。

A 公共の場所は、施設の規模・構造、利用状況等施設の態様が様々であるため、施設の態様や利用者のニーズに応じた適切な分煙対策を積極的に進めるべきである。また、分煙の方法は、その施設の社会的な役割も十分に考慮して行うべきである。

B 喫煙場所には、必要に応じて、分煙機器(環境たばこ煙を屋外に排出する機器、空気清浄器、喫煙場所を他の区域と分割する機器等やその複合体)を積極的に活用すべきである。また、分煙機器を導入する際には、環境たばこ煙が、不均一に拡散したり、濃淡の流れがあること等に留意するべきである。

C 分煙を行っている場所では、禁煙場所と喫煙場所の表示を明確に行い、分煙の周知を図るとともに、来客者等にその旨を知らせて理解と協力を求めることが必要である。特に、喫煙者には社会ルールとして、決められた喫煙場所を守るよう呼びかけるべきである。

D 本報告書は、規制を目的としたものではなく、各々の公共の場所における望ましい分煙のあり方を提示したものである。各公共の場所における分煙推進の実施主体は、本報告に盛り込まれた内容を参考にしつつ、従来の自主的な取り組みをさらに進め、分煙対策を推進することが適当である。

3.分煙のあり方の具体的内容  

 分煙方法は、喫煙空間と分煙手法の組み合わせにより以下のように分類できる。
A:喫煙場所を完全に分割された空間とする。
B:喫煙場所を設置し、分煙機器により環境たばこ煙が完全に流れ出ないようにする。
C:喫煙場所を設置し、分煙機器を用いて環境たばこ煙を軽減する。
D:喫煙場所を設置するが、分煙機器は使用しない。


 分煙の具体的内容については、上記分類による記号により表示する。また、各々の公共の場所の特徴と分煙推進時の特記事項について記載する。

(1)屋内の場所

 @禁煙原則に立脚した対策が望まれる場所

 保健医療機関や教育機関、官公庁においては、その社会的使命や施設の性格に照らし、禁煙原則に立脚した対策を確立すべきである。また、喫煙場所を設置する場合であっても、十分な換気に配慮する等分煙の徹底を行うべきである。

< 望ましい分煙のあり方 >
禁煙 分煙
a 保健医療機関: 医療機関、保健所等
 ・診察室、病室、検査室等  
 ・待合室、食堂等 またはA・B
b 教育機関: 学校、児童福祉施設等
 ・講義室、講堂、図書室、会議室等  
 ・職員室等 またはA・B
c 官公庁: 政府の中央省庁、地方自治体
 ・窓口、相談室等  
 ・ロビー等 またはA・B
a 保健医療機関
 有病者等が、診察や治療、相談等のために訪れたり、入院したりする場所であり、特に公衆衛生上の配慮が必要とされる。多くの保健医療機関では、何らかの分煙対策が行われているが、禁煙原則に立脚した対策をさらに推進すべきである。
b 教育機関
 多数の生徒が教育を受けるために集まる場所であり、教育上の配慮が必要とされる。また、職員室は、教職員の職場であると同時に、多くの生徒が出入りする場所でもある。喫煙所は、特に未成年者を対象とした学校等においては、教育上十分配慮した場所に設けるべきである。
c 官公庁
 公共性が高い場所であり、公的機関であるため、率先して分煙対策を実施するべきである。

 A分煙対策を強く推進することが望まれる場所

 公共性が高い場所や健康のための運動を行う場所等であり、@の禁煙原則に準じた分煙対策が、強く望まれる場所である。多くの場所では、以前より利用者のニーズ、利用状況に応じて、自主的な取り組みが行われてきたが、これまでの取り組みをさらに進め、分煙の徹底が図られるべきである。
< 望ましい分煙のあり方 >
禁煙 分煙
a 公共交通・機関: 飛行機、鉄道、船舶、バス等
 ・車両等 またはA〜C
 ・待合場所(屋内) またはA〜C
        (屋外)   A・D
b 金融機関等: 銀行、郵便局等
 ・窓口、キャッシユコーナー等  
 ・ロビー等   B・C
c 博物館等: 博物館、美術館、ギャラリー等
 ・展示室   
 ・ロビー等    A〜C
d 運動施設: 屋内競技場、スポーツセンター、健康増進施設等
 ・運動を行う場所   
 ・休憩場所 等   A〜C
a 公共交通機関
 通勤や旅行等で利用され、一定時間不特定多数の人を、閉鎖された空間で輸送する機関である。以前より自主的に、車両や座席を禁煙と喫煙に分けたり、ホーム上に喫煙所を設けて、それ以外を禁煙にする等、積極的に分煙を進めている。事業主により、近距離及び短時間利用を主とすると判断されるものについては、車両内は禁煙にするべきである。また、車両内分煙の際には、閉鎖された空間であるため、分煙機器を積極的に活用するべきである。
b 金融機関等
 現金の出し入れ等で、社会的必要から通う場所である。防犯上の観点から、喫煙室の設置等は困難であるが、喫煙所を設定する等、分煙を推進すべきである。
c 博物館等
 博物館や美術館は、美術作品等の鑑賞のために訪れる場所であり、展示室は自主的に禁煙とされているところが多い。快適な鑑賞環境を提供するため、ロビー等では積極的に分煙を図るべきである。
d 運動施設
 スポーツを行ったり、観戦したり、健康のための運動を行うことを目的として訪れる場所である。観戦のための屋内スポーツ施設では、興行場法準則により、喫煙場所以外は禁煙となっている。未成年者が多く集まる施設においては、特に積極的に分煙を推進するべきである。

 B事業主の主体性に基づいて適切な分煙対策を推進することが望まれる場所

 利用者のニーズを踏まえつつ、施設の態様に応じた分煙対策に積極的に取り組むべき場所である。特に未成年者が多く集う施設においては、特段の配慮がなされるべきである。

 < 望ましい分煙のあり方 >
禁 煙 分 煙
a 飲食店:レストラン、喫茶店等
 ・店舗内   A〜D
b 宿泊施設: ホテル、旅館等
 ・口ビー、レストラン、ラウンジ、大浴場等   A〜D
 ・宴会場   (利用者の要望による)
c 販売業: 百貨店、マーケット等
 ・売り場  
 ・休憩場所、食堂等   A〜D
d 娯楽施設: 映画館、劇場、演劇場、公会堂等
 ・客席  
 ・休憩場所等   A〜D
e 遊技場: パチンコ店、ゲームセンター等
 ・遊技場内   A〜D


a 飲食店
 飲食のために、個人の好みに応じて利用する場所であるが、環境たばこ煙は非喫煙者にとって不快である一方、喫煙者としては喫煙したくなる場所である。比較的挟い店舗では、人の集中して集まる時間帯は、分煙が難しいため、禁煙とすることが望ましいが、困難な場合は、分煙機器を活用し、受動喫煙に対する配慮を行うべきである。
b 宿泊施設
 個人の好みに応じて宿泊や食事をする場所である。禁煙を希望する利用者の要望に沿えるように、禁煙フロアーや禁煙ルーム等を設置するべきである。
c 販売業
 買い物のために、個人の選択によって利用する場所である。なお売り場は、火災予防上の観点から、各市町村の火災予防条例により禁煙となっている所が多い。
d 娯楽施設
 娯楽のために、個人の選択によって利用する場所である。なお客席は、火災予防上の観点から、各市町村の火災予防条例により禁煙となっている所が多い。
e 遊技場
 遊戯のために、個人の嗜好に基づいて訪れる場所である。利用者のニーズに配慮しつつ、適切に分煙することが望ましい。

(2)屋外の場所

 屋外でも、人の集まる場所や時間帯等を勘案して、受動喫煙に対する配慮を行う必要がある。また、吸い殻のポイ捨て行為及び歩行中の喫煙については、防災上及び危険性の観点も含め、厳に謹むべき社会ルールとして確立するよう啓発を強化する必要がある。

< 望ましい分煙のあり方 >
禁 煙 分 煙
a 屋外競技場: 野球場、陸上競技場等
 ・観客席等   または  A・D 
 ・休憩場所等(屋内)   A〜C
          (屋外)   A・D
b 公園(遊園地等を含む)
 ・灰皿のない場所  
 ・休憩場所等(屋内)   A〜C
          (屋外)   A・D
c 道路
 ・道路上(人が密集する所)  
       (その他)   (マナー遵守)
a 屋外競技場
 スポーツを行ったり、観戦したりするために訪れる場所である。未成年者が多く集まる施設においては、特に積極的に分煙対策を推進するべきである。
b 公園
 憩いのために人々が集まる場所であり、吸い殻の始末に配慮するべきである。また、喫煙場所を明確にするべきである。
c 道路
 人が集中する場所や時間は、禁煙すべきである。吸い殻のポイ捨て行為や歩行中の喫煙は慎む等、喫煙者の注意を喚起するべきである。


4.分煙対策の推進方策  

 厚生省は、厚生省自ら実施するか、あるいは、関係各省庁、関係団体等に、積極的に働きかけることにより、以下の分煙対策を推進する。

(1)分煙推進の実施主体に対する働きかけ

@ 本報告書の内容を周知徹底する。
A 分煙の状況や先進事例等の情報を、適宜提供する。
B 禁煙時間、禁煙区域等の名称とともに、特に禁煙原則の場所では、喫煙時間、喫煙区域等の名称を積極的に使用するよう要請する。
C 施設の新築や増改築の場合には、分煙を前提とするよう要請する。

(2)公共の場所の利用者に対する啓発普及

@ 各種の広報手段を用いて、分煙の意識の高揚を図る。
A 受動喫煙による健康影響について、客観的な調査研究を進め、適宜最新の知見について、情報を提供する。

(3)分煙機器の開発普及

@ 分煙機器の技術開発を積極的に支援する。
A 分煙機器の普及を積極的に支援する。

(4)実施状況の把握と評価

@ 公共の場所における分煙に関する意識調査等を行い、利用者のニーズ把握に努める。
A 公共の場所における分煙に関する実態調査等を行い、分煙対策の推進状況や事例を把握し、評価する。


公共の場所における分煙のあり方検討会メンバー名簿  

(敬称略、五十音順、所属及び役職は検討会当時)    

淺野 牧茂 日本女子大学教授
石塚  宏 株式会社東急百貨店総務部長
井上  進 東日本旅客鉄道株式会社営業部サービス課長
大熊由紀子 朝日新間社論説委員
大島  明 大阪がん予防検診センター調査部長
糟谷 幸徳 第一勧業銀行お客さまサービス部調査役
川口  正 全国飲食業環境衛生同業組合連合会青年部会常任幹事
菊地 輝雄 東京都衛生局健康推進部健康推進課長
倉沢  章 全国旅館環境衛生同業組合連合会元青年部副部長
古藤 昭子 産業健康振興協会会長
小林道太郎 銀座第一ホテル取締役総支配人
杉浦  稔 日本医師会常任理事
原田 幸男 東京都立市ケ谷商業高等学校教諭
松谷 満子 日本食生活協会会長
宮崎 恭一 タバコと健康全国協議会事務局長
村松茂登彦 日本たばこ産業株式会社たばこ中央研究所所長

(◎印:座長、○印:座長代理)


[参考資料] 

1.分煙の現状
2.WHOにおける分煙対策推進に関する決議
3.各国における公共の場所での喫煙に対する取り組み
4.受動喫煙の健康影響

1.分煙の現状 

「公共の場所における分煙のあり方検討会」において、各職域からの報告として出された、資料及び発言等をまとめたものである。

(l)各公共の場所の現状

a 保健医療機関(杉浦委員)
 医師の喫煙率は、昭和40年(西日本・倉恒らl))の調査では男性68%、女性19%であったが、昭和62年(愛媛県・真鍋2))には、男性30%、女性4%となっていた。平成5年の小林ら3)の全国713カ所の医療機関に対する調査では、73%では何らかの喫煙制限を行っていた。場所別に見ると禁煙を行っているのは、外来待合室22%、外来診察室79%、病棟・病室52%、食堂・喫茶31%であった。また、禁煙を含む分煙を行っているのは、外来待合室87%、外来診察室92%、病棟・病室98%、食堂・喫茶57%であった。なお、国立病院・療養所や東京都立の病院・保健所では、全て分煙を行っていた。
b 教育機関(原田委員)
 昭和63年の東京都教育委員会の東京都内の全学校に対する調査では、喫煙防止教育を行っているのは、小学校22%、中学校85%、高等学校91%であった。校舎内禁煙を行っているのは、小学校9%、中学校9%、高等学校8%であり、喫煙所を設置しているのは、小学校36%、中学校30%、高等学校24%であった。また、原田委員の平成8年の都内40高校の調査では、職員室の制限ありは58%、会議中の制限ありは88%であった。平成3年の国立公衆衛生院の箕輪らの調査では、中学校において教師の喫煙率が高い程、生徒の喫煙率が高いという報告がある4)
c 官公庁(菊地委員)
 厚生省のロビーでは、分煙機器のある喫煙所を設け、それ以外は禁煙であり、また会議室は全面禁煙となっている。平成7年に厚生省保健医療局健康増進栄養課が、全都道府県、政令指定都市等90ケ所に対し行った調査では、ロビー等を全面禁煙しているのがl%、分煙を行っているのは28%であった。東京都庁や港区等では、庁舎内完全分煙化が行われていた。平成7年7月の建設局労働安全衛生委員会の集計では、東京都内の分煙体制の整備状況は、区では68%、市では39%、町村では22%と、市町村での取組みの遅れが見られた。また、東京都では、平成12年までに全ての都の施設を、分煙にする予定としている。
d 公共交通機関(井上委員、JALサービス委員会事務局・田中博文次長)
 JR東日本では、乗客の二一ズを踏まえつつ、分煙を進めている。新幹線の12両編成は、指定席では禁煙4両、喫煙3両で、自由席では禁煙2両、喫煙2両で、グリ一ン車では禁煙1/2両、喫煙1/2両である。また、東京都近郊区間では、全376駅で分煙、普通列車内は全て禁煙となっている。地方駅でも133駅で分煙を実施している。さらに、グリーン車内にJTと共同開発した分煙機器を使用し、喫煙席より煙の流れない車両を導入している路線もあり、この路線では7割以上の人より好評を得ている。

 航空会社については、JALの乗客の約4割が契煙希望者であるが、国内線では、JALは2時間以内(全フライトの約8割)は全面禁煙、ANAとJASは機内を禁煙席と喫煙席に分けている。国際線では、全社とも禁煙席と喫煙席に分けている。また、JALでは、B747型機において、最後部席と背中合わせに契煙専用席を設け、更にその周辺への煙流を防ぐため、JTと共同で空調システムを開発しており、今後これらを展開していくこととしている。諸外国については、カナダでは全面禁煙となっている。アメリカでは国内線6時間以内は禁煙であるが、国際線は行き先によって禁煙となっている所と禁煙席と喫煙席に分けている所がある。ヨーロッパは国内線は禁煙が多いが、国際線は禁煙席と喫煙席に分けている所もある。中国の中国国際航空は6時間以内は禁煙、韓国の大韓航空も7時間以内は禁煙となっている。エアーフランスでは、力一テンで仕切った喫煙所を設けている。
e 金融取引機関(糟谷委員)
 平成7年に厚生省保健医療局健康増進栄養課が、全国銀行協会連合会に依頼して、21の銀行に対して行ったアンケートでは、銀行により取り組みは様々であるが、喫煙所を設置し分煙を行っているのは62%で、喫煙所に仕切り等をおいている支店があるのは10%であった。また、第一勧業銀行では、全店で営業時間中は、カウンター内の行員の喫煙は自粛し、利用者にもキャッシュコーナーは禁煙とし、ロビーは分煙としている。
f 飲食店(川口委員)
 平成6年末で飲食店関係の数は、約145万施設であるが、従業員が5人以下が8割以上であり、個人営業者も81%と高率である。川口委員が東京飲食業環境衛生同業者組合の協力を得て行った、213店舗へのアンケートでは、灰皿を常時置いている施設は85%、禁煙席と喫煙席を分けている施設は6%であるが、今後分けるべきと考えている施設は60%であった。一方、分煙すべきと思わない理由としては、店舗が狭い、客席が少ないが37%と最も多かった。また、東京都の飲食店の22%では、空気清浄器を置いていた。ファミリーレストラン等のチェーン店では、禁煙席を設置している所がいくつかある。
g 宿泊施設(倉沢委員、小林委員)
 全国で8〜l0万軒の宿泊施設があり、内ホテルは6633軒である。平成7年に厚生省保健医療局健康増進栄養課が、日本ホテル協会に依頼し、ホテル12社に対して行ったアンケートでは、禁煙ルームや禁煙フロアー等を設置しているのは54%で、喫煙所を設置し分煙を行っているのは、ロビーでは27%、レストラン73%、ラウンジ36%であった。
 また、平成7年にJTBが全国2万軒の宿泊施設に行ったアンケートでは、禁煙ルームを設置している所は約3%であり、内旅館は0.2%であった。全館禁煙にして売上を伸ばしている施設もある。客室では、たばこ防災上の観点に加え、たばこの臭いが残る等の問題がある。
h 販売業(石塚委員)
 平成7年に厚生省保健医療局健康増進栄養課が、日本百貨店協会に依頼し、都内の百貨店8社に対して行ったアンケートでは、火災予防条例により売り場が禁煙となっているため、全店で分煙となっていたが、半数では喫煙所に仕切り等は設置されていなかった。東急百貨店では、一般の売り場では、各フロアにl、2ケ所契煙場所を設けているが、ほとんど仕切り等はしていない。また、食堂・喫茶店等では1、2ケ所禁煙席を設けている所はあるが、テナントなので営業主の判断によっている。


(2)分煙機器の現状
(浅野委員、村松委員、日本空気清浄協会常任理事会社ミドリ安全株式会社クリーンシステム事業部・岡浩部長)

 平成7年2月のミドリ安全による、大手企業500社へのアンケートでは、職場での時間分煙を行っているのは62%であった。また、職場に空気清浄機を設置しているのは41%で、検討中が33%であった。空気清浄機には、フィルターでろ過する方法と電気集塵法の2種類がある。


 空気清浄機の使用方法として最も多いのは、室内の空気を電気式空気清浄機で浄化する方法であり、設置方法としては、天井埋め込み型、天井吊り型、床置き型がある。分煙機器としては、スポット的に置き、発生源でたばこの煙を吸う、テーブル型やカウンター型の機器がある。その他にも、空気清浄機により浄化した空気を吹き出し、エアカーテンによりたばこの煙を外部に流さない、スペース型やパーテーション型の気流制御機器もある。市場がまだ小さく、設置だけで50〜150万円程度かかり、さらに定期的にメインテナンスの費用がかかることが普及のネックになっている。


 また、OA機器の配線のための二重床を空調搬送用スペースとして共用し、床面に設けた特殊な吹き出し口から空気を室内に送り込み、天井から空気を吸入する「アンダーフロアー空調システム」があり、既に多くのオフィスビルに導入されている。本方式では、従来の天井吹き出し方式に比ベ、室内でたばこの煙が拡散しにくく、比較的速やかに除去できる。


 なお、「建築物における衛生的環境の確保に関する法律」(通称:ビル管理法)では、特定建築物における建築物環境衛生管理基準(浮遊粉じんの量:0.15mg/m3以下、一酸化炭素の含有率:10ppm以下等)が規定されている。喫煙により、上記基準を一酸化炭素含有率は越えにくいが、浮遊粉じん量は越えやすい傾向がある。また、受動喫煙の急性影響については、外気の一酸化炭素濃度より、室内の濃度が2.5ppm上昇すると、40〜60分で約20〜30%の人が、不快感を感じるという報告もある。5)

参考文献:

l)倉恒匡徳、他:日本医事新報、2273、1967年
2)真鍋豊彦:愛媛県医師会報、605、1987年
3)小林友美子、他:財団法人大和證券ヘルス財団 研究業績集第19集、平成5年
4)箕輪真澄、他:青少年の喫煙実態に関する全国調査報告書「中学生の喫煙」、国立公衆衛生院、1992年
5)Muramatu T,et al.:An experimental study on irritation and annoyance due to passive smoking. Int.Arch.0ccup.Environ.Health,51(4),305-317,1983


2.WHOにおける分煙対策推進に関する決議 

総会決議 決 議 の 概 要
1986年(S.61) 第39回 公共の場所において非喫煙者たちがたばこの煙にさらされないような措置、子供や若年者が喫煙の習慣をつけないようにするための措置、たばこの習慣性等についての警告表示等の実施など以下の9項目を最低限満たす喫煙対策を実施するよう勧告した。
@ 受動喫煙からの非喫煙者の保護:閉鎖された公共の場所、レストラン、輸送機関、職場、娯楽場
A 子供、若年者のたばこからの保護及びたばこ使用の防止
B 保健医療施設で保健医療関係者が規範を示すこと
C たばこ使用を習慣化、促進化する社会経済的、行動学的その他誘因の漸進的な排除
D 健康への警告表示の明示:たばこの依存性や成分について包装への明示を含む
E たばこと健康に関する教育や公衆情報プログラムの確立:保健関係者やメディアを積極的に関与させた禁煙プログラムを含む
F 喫煙、たばこ使用、たばこ関連疾患、喫煙対策の効果に関する動向のモニタリング
G たばこ生産、販売、課税の実効ある経済的な代替促進
H 以上あらゆる活動への働きかけ、サポート、協力するための国家的な中核拠点の確立
1990年(H.2) 第43回 以下の項目を考慮し、法的規制を含めた多面的な分かりやすいたばこ抑制策を行うことを決議した。
@職場、公共の場における、特に妊婦、子供に対する効果的な受動喫煙対策
Aたばこにかかる課税の強化
Bたばこの広告、販売促進を排除するための規制その他の措置
1991年(H.3) 第44回 公共の輸送機関における禁煙・分煙の促進と受動喫煙から子供等を保護するために必要な健康教育の推進について勧告した。
注) WHO(世界保健機関)総会における「たばこと健康に関する決議」(現在まで14回行われている。)の中から「分煙対策推進に関する決議」を抜き出したものである。


3.各国における公共の場所での喫煙に対する取り組み 

国 名 内        容
日  本 △医療施設における分煙措導
△公共交通機関に対する禁煙席拡大等の要請及び自主的対策の実施
欧州連合 △公共施設ならびに公共的運輸機関での禁煙(決議)
フ ラ ン ス ○閉鎖空間、屋根付き公的空間、職場、学校、輸送機関における喫煙規制(罰金による担保)
イ ギ リ ス △公共の場所の所有者等に対し実施要綱を提示し、自主的取り組みを求める
イ タ リ ア ○病棟、教室、公共集会場、劇場、映画館、ダンスホール、賭博場、講堂、画廊、博物館、図書館、美術館における禁煙(罰金による担保)
ド イ ツ △官公庁における規制、分煙(自主)
○公共交通機関における禁煙席の設定又は全面禁煙
○職場における非喫煙者保護対策実施の努力義務
ベ ル ギ ー ○公共の交通機関、公共施設の閉鎖空間での禁煙(罰則あり)
○飲食店等では、部屋面積の半分以下に喫煙者用の場所を設けることは可能
○禁煙の場所を明示する義務がある。
オ ラ ン ダ ○政府所属ないし運営の建物での禁煙(待合室・娯楽室では非喫煙者の迷惑にならなければ、面積の1/3又は開館時間の1/3に限り喫煙を許される)
△公共運輸機関(バス、通勤電車、地下鉄)では禁煙、列車及び航空機内では禁煙席と喫煙席を設置
オーストラリア ○連邦政府所有建物等における禁煙
タ  イ ○公共の場所における全面禁煙又は禁煙区域の設定
○禁煙区域の表示義務付け(罰金による担保あり)
アメリカ合衆国 ○45州で公共施設における喫煙を規制。その内の38州では公共機関の職場に17州では個人経営の職場に規制を拡大。
カ ナ ダ ○公共施設における喫煙制限を施行


 注 ○印 = 法律又は法規的性格を有するものによる規制措置
   △印 = 自主的規制、事実上の措置等法的拘束力のない措置・実態
 資料 厚生省保健医療局健康増進栄養課調べ


4.受動喫煙の健康影響 

I.たばこ行動計画における指摘
 受動喫煙による非喫煙者への健康影響については、流涙、鼻閉、頭痛等の諸症状や呼吸抑制、心拍増加、血管収縮等生理学的反応等の急性影響が認められているとともに、慢性影響については、肺がん、呼吸器疾患へのリスクを示す疫学的研究があり、公衆衛生上の取り組みが求められている。


Il.米国環境保護局による報告


○出典:題 名:Respiratory Health Effects of Passive Smoking: Lung Cancer and Other Disorders
        (受動喫煙の呼吸器系への健康影響:肺がんとその他の疾患)
    発 行:National Institutes of Health, National Cancer Institute
        (米国立衛生研究所、米国立がん研究所)
    発行所:1993年

○要約と結論:(文責:厚生省保健医療局健康増進栄養課)
 近年、事実上どこにでもある室内汚染物質である、環境たばこ煙(ETS:environmental tobacco smoke)の健康への影響に対して関心が高まっており、また、ETSの健康影響のデータが数多く集積してきた。このため米国環境保護局(EPA:U.S.Environmental Protection Agency)は、今までのデータの批判的レビューに基づき、数多くの疫学的知見に主眼をおいて、ETSの呼吸器健康影響についての分析的危険度認定と人口危険評価を実施した。EPAは、その結果、米国におけるETSへの広範な暴露が、以下のような公衆衛生上深刻な問題を引き起こしていると結論づけた。

(1)成人の場合:
ETSは肺がんの原因となり、米国の非喫煙者に毎年3000人の肺がん死をもたらしている。
(2)小児の場合:
@ ETSは、気管支炎や肺炎のような下部呼吸器疾患の危険を増し、18カ月末満の乳幼児の年間15万から30万人の患者がETSによるものと試算した。
A ETSは、中耳に分泌物を増やし、上気道刺激症状そして肺機能の軽度の低下の原因となっている。
B ETSは、喘息小児の発作の回数を増やし、症状増悪の原因となっている。ETSによって、20万から100万の小児喘息が悪化していると試算した。
C ETSは、今まで喘息症状のなかった小児を、新たに喘息患者とする危険性を持っている。