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第30回

厚生省保健医療局地域保険・健康増進栄養課

たばこの依存性と有害性

 2月末より閉催されている「21世紀のたばこ対策検討会」の趣旨は、先月号でも紹介されたように、喫煙者の「個人の嗜好」あるいは非喫煙者の「不快・ストレス」という感情論に基づいて、相互理解と自主的取組みを促進するという啓発普及にとどまっていた従来のたばこ対策に対し、今後は、能動喫煙や受動喫煙の害の根底に「ニコチンの依存性」と「たばこ煙の有害性」があるという科学的根拠に基づく議論を行い、リスク管理の視点から適切な管理方策を検討することにあります。

 これまでの検討会の議論では、「世の中にはたばこの他にも危険なものはある」とか「ニコチンの依存性は他の依存性薬物より弱い」などの意見も出されましたが、たばこと健康の問題においては、この依存性と有害性がたばこ製品(たばこの使用)そのものに内在し、切り放すことができないことにこそ留意しなければなりません。「自己あるいは他者を障害する危険性があるにもかかわらず、精神活性物質により自己の行動がコントロールされるようになった場合、依存が生じている」という薬物依存の定義は、そのままたばこに当てはまります。また、たばこのリスクは種々の致死性の要因と比べ極めて大きく、喫煙者の「年間死亡率」は10万人あたり700人、「生涯リスク」でみると、喫煙者の2人に1人は喫煙により早死にすることが推定されています。さらに受動喫煙による死亡も、環境基準における10万人に1人(10-5)を1000倍上回るオーダーです。

 このようにたばこと健康の問題を捉え直してみると、栄養、運動、休養など他の生活習慣の並びで取り上げられることの多い喫煙習慣が、かなり異質なものであることが分かります。むしろ飲酒は依存性と有害性においては喫煙に類似しますが、事故を除き他者を傷つけることは少なく、死亡率も一桁少なくなります。いずれにしても、生活習慣病対策として喫煙や飲酒の問題に取り組む場合、有害性に関する従来からの啓発普及に加え、今後は依存性を中心に据えた対策もますます重要となると思われます。

   「21世紀のたばこ対策検討会」第3回会合について

   日時:4月22日(水)10時〜12時
   場所:未定
傍聴申込:希望者の氏名・所属・住所・電話番号・FAX番号を明記の上、
     「21世紀のたばこ対策検討会事務局」に
     郵送またはファックスで4月20日必着で申し込んで下さい。
     応募多数の場合は抽選になります。
〒100-8045 千代田区霞ケ関1‐2‐2
厚生省保健医療局地域保健・健康増進栄養課内
TEL 03-3595-2190
FAX 03-3503-8563


表1 米国公衆衛生総監報告書 1988年の主要な結論
(1) 紙巻たばことその他のたばこ製品には依存性がある
(2) ニコチンが依存性の原因となるたばこに含まれる薬物である
(3) たばこ依存を決定する薬理学的行動学的過程は、ヘロインやコ力インのような薬物への依存を決定する過程と類似している


表2 種々の活動における推定リスク
暴露集団100万人あたりの
年間死亡リスク:米国の推定
暴露集団10万人あたりの
生涯死亡リスク:我が国の推定
能動喫煙 7,000 喫煙で早死にする 50,000
飲酒 541 喫煙による肺がんで死ぬ 20,000
 事故 275 受動喫煙で早死にする 5,000
 疾病 266 受動喫煙による
交通事故 187  心筋梗塞で死ぬ(a) 3,000
 飲酒関連 95  低体童児 2,000
 飲酒非関連 92  気管支喘息 2,000
仕事 113  肺がんで死ぬ(b) 1,000
水泳 22  乳幼児突然死(c) 100
受動喫煙 19  早死に(a+b+c) 4,100
その他の大気汚染 6 交通事故死 1,000
サッカー 6 アスベスト使用住宅に住み肺がん死 10
感電死 2 環境汚染物質の許容基準 1
落雷 0.5 胸部×線撮影(1回)で肺がんになる 0.5
蜂刺され 0.2 胸部×線撮影(1回)で白血病になる 0.05
バスケットボール 0.02
全死因 8,748
全てのがん 1,917
(米国公衆衛生総監報告書、1989年) (松崎道幸、1998年)