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たばこか健康かに関するWHOプログラム

1988〜1995年の行動計画(…1996〜2000年の行動計画については訳出中)

  1. 問題の公式化

  2. プログラムの位置付け

  3. プログラムの目的

  4. プログラムの構成

1 問題の公式化  このページのトップへ

(1) 世界中で毎年200万から250万の人々が、喫煙が原因で天寿を全うせずに死亡しており、そのうち、がんによる死亡の3分の1、慢性気管支炎や肺気腫による死亡の75%、冠状動脈心疾患による死亡の25%、他の多くの疾患による死亡の多くが含まれている。毎年の肺がんの新規発生66万人の90%は喫煙が原因となっている。ヨーロッパでは毎年50万以上の人々の死亡に、アメリカ合衆国では31万5,000以上の人の死亡に喫煙が寄与している。

(2) 喫煙は喫煙者のみならず、強制的な受動喫煙の障害作用により非喫煙者、特に子供に対して同様の危険性がある。

(3) 喫煙はアルコールやヘロインと同様の依存性を有しており、一旦習慣化してしまうと離脱することが困難である。喫煙はニコチンのような薬物を体内運搬するのに最も効果的な方法であり、数分以内で脳に到達する。

(4) 噛みたばこ、嗅きたばこ、その他無煙たばこによる健康障害が再評価されている。WHOのスタディグループやアメリカ合衆国の公衆衛生総監の報告書によれば、無煙たばこはニコチン依存や口腔がんの点において喫煙と同様に危険なものである。これらはいくつかの先進諸国においては広く出回っているが、無煙たばこの使用が習慣化される前に規制されるべきである。

(5) 長い間、たばこの消費は主要な健康障害であるばかりか、保健や社会関連経費で国家経済に経済負担をもたらしている。しかしながら、今やたばこ生産は多くの発展途上国においては重要な役割を果たしている。たばこ生産や消費の減少を目的としたキャンペーンは、これらの国のいくつかにおいてはすでに経済基盤の弱さを崩すものではないことに注目せねばならない。それゆえ包括的なたばこ対策プログラムには、たばこ生産に匹敵する経済価値をもつ別の形態を見出だす戦略も含める必要があるわけである。

(6) 喫煙予防プログラムは、いくつかの先進諸国においては様々なレベルで何年もの間実施されてきた。これらの国々のいくつかでは紙巻たばこ消費の拡大に歯止めが掛けられてきており、たばこに関連した疾患の減少が、たばこ対策プログラムを最初に始めた国であるフィンランド、英国、北アイルランドのような国においてはみられてきている。

(7) 先進諸国では全男性の3分の1が、発展途上国では約半数が15才を越えると喫煙していることが推測されている。先進諸国では女性の喫煙率はわずかに男性より下回っているのに対し、第三世界では女性の10%が喫煙をしているが、次第にその割合は増加しつつある。発展途上国においては、たばこの促進や使用を制限するような法的措置の欠如、たばこの使用による危険性に関して公衆に対する教育や情報の欠如というものにより、将来のたばこ関連疾患の蔓延が危惧されている。

(8) たばこによる健康障害を取り除くことほど、「2000年までに全ての人に健康を」というWHOの目標にまさに符号するものはないのである。


2 プログラムの位置付け  このページのトップへ

(1) 1980年以来、WHOはたばこ対策プログラムのための戦略や方法論を進展させてきた。そのアプローチについては、たばこ対策に関するWHO専門委員会の報告書として、発展途上国のための喫煙規制戦略に関する「喫煙流行の規制」、心臓血管疾患の公衆予防と規制に関する報告書、「世界の喫煙流行に対する法的措置」が、さらにはIARCは喫煙や喫煙以外のたばこ習慣に関連したがんのリスクを詳細に評価したものを出したばかりである。WHOにより以前から実行されてきた活動は、「たばこか健康かに関するWHOプログラム」に関する第77回執行理事会の報告書や「たばこか健康かの行動プログラム」に関する第41回WHO総会決議に記載されている。

(2) 第39回WHO総会決議WHA39.14では以下のようなことが事務総長に対して要請されている。

  • 公的な導入を待たずして喫煙と健康に関する現在のプログラムを強化すること。

  • 基金やマンパワーの面で、…サポートを動機づけすること。

  • 国連組織の他の組織とも、…活動を協力すること。

  • NGO組織との協力を続け強化すること。

  • WHOは効果的な広い支持を得る役割を果たすこと。

  • 国家レベルの喫煙対策の努力をサポートすること。

(3) セクター間、複数の分野にまたがるアプローチに対するニーズを踏まえ、「たばこか健康かに関するWHOプログラム」はWHO本部、地域事務局、NGO、協力センターとの協力関係を発展させてきた。WHOの第一義的な役割は、たばこ消費量を減少させるために、支援資源を動かすことに有用な情報を提供すること、国レベル、地域レベル、地球レベルの活動を確立させることである。

(4) NGOはWHO活動の補完的役割を有している。NGOはたばこ使用の減少を目的とした国レベルの活動のために国の保健省や他の政府部局、政治家、関連組織、に働きかけ陳情する役割と同時に戦略の発展や活動を補完する役割も含まれている。現在、喫煙規制の活動に直接関与している組織としては、喫煙か健康かのアクション(Action on Smoking or Health)、アルコール・麻薬国際会議(International Council on Alcohol and Addictions)、国際消費者連合(International Organization of Consumers Unions)、国際循環器病学協会並びに財団(International Society and Federation of Cardiology)、国際結核肺疾患連合(International Union against Tuberculosis and Lung Disease)、国際健康教育連合(International Union for Health Education)、国際対がん連合(International Union against Cancer)があげられる。

(5)今日までのそれらの諸活動の領域は以下の通りである。

  • たばこか健康かに関する技術的な情報も含んだ、データの収集、分析、提供

  • 国家レベル、世界規模の喫煙規制戦略のための提言の推進

  • トレーニング(ワークショップやセミナー)

  • マスメディアを使ったアプローチや第1回世界禁煙デーの開催などを含んだ支援や公衆情報

  • 喫煙規制法のレビューとモニタリング

  • 航空機や公共の輸送機関における喫煙規制政策のレビューとモニタリング(ICAOとの協力において)

  • 健康や経済的観点からの違った種々のたばこ規制のための数学的モデルの開発

  • WHOの他の疾患予防や規制プログラムにおけるたばこ規制の項目の充実


(6) 上記の活動は、WHOのいくかの他の関連プログラム、例えば、がんや心臓血管障害、健康関連法的措置、保健統計、健康関連の情報や教育、インターへルス、他の非伝染性疾患のプログラムなどと連携をとりながら、種々のNGO組織と共に実施されてきた。全地域の35か国からの50人以上のメンバーからの専門委員会を設け、協力センターのネットワーク、たばこの法的規制、たばこ使用による健康障害、たばこと健康の経済、たばこ使用の蔓延に関する調査を含むトピックスに関する仕事をWHOに協力している。

(7) 第41回WHO総会の報告の中で、事務総長により招集された諮問委員会は目標を提示した活動プランの作成やWHOや加盟国により達成されるタイムテーブルに関する指針を提示した。その中ではWHOやNGOの補完的な役割を強調し、実施方法や資金調達法を示している。

(8) 決議の支援について、行動計画を策定するよう事務総長に要請された第41回決議には、特に以下の事項が盛り込まれている。

  • 国の主な収入源をたばこ生産に依拠している発展途上国の特殊な問題

  • 将来の禁煙デーの開催を含めた、目標と介入的なプラン

  • その他の粗織のプログラムとの連携を考慮した行政粗織や管埋組織

  • 資源のニ一ズ

  • 財政源とその他の支援

(9)現在の行動計画は要請に応じて提出される。


3 プログラムの目的  このページのトップへ

(1) WHOは「たばこのない社会」というコンセプトとポジティブな社会形態としての生活習慣を推進するリーダー的役割を果たし、たばこ使用とたばこが原因となる疾患の世界的規模の予防と減少を達成することを目指す。

(2) プログラムの特別な目的は以下のとおりである。

  • たばこ使用を防止、減少するための国家プログラムの開発を推進すること。

  • たばこのない社会というコンセプトを促進し、たばこを使用しないことが普通の社会的行動となることを確立すること。

  • たばこと健康に関する情報や戦略を提供し、たばこ消費を規制すること。


4 プログラムの構成  このページのトップへ

(1)国家レベルのたばこ規制プログラム

目的:たばこ使用を防止、減少するための国家プログラムの開発を推進すること。

目標:

  • 1992年までに少なくとも加盟国の20%の国が、公衆情報、学校教育、法的措置を中心とした、たばこ使用を防止、減少させるための国家プログラムを開発すること。

  • 1994年までに少なくとも加盟国の50%の国が、たばこ使用を防止、減少させるための国家プログラムを開発すること。

  • 1995年までに少なくとも加盟国の20%の国が、1988年よりもたばこ消費が10%以上減少するようにすること。

アプローチ:

  • WHOは、国家プログラムを策定する際、各国の保健省との協力を行い、経験の伝達、政策や戦略の指針や支援を加盟国に対して提供する。

  • 戦略は種々のセクターに及んだ複数の分野からなるものでなければならない。国家プログラムとキャンペーンは管埋的、教育的、法的で正規のアプローチが取られていなければならない。

  • アプローチには、薬物やアルコール乱用の防止のような健康な生活習慣を推進するための他のプログラムと取り入れる必要がある。

諸活動:

○ すべての加盟国のためにWHOは以下のことを行う。

  • たばこと健康に関する有用な情報の提供とたばこ消費を規制するための戦略を提供する。

  • 要請に応じて国レベルのプログラムに関する管理者やキーパーソンのためのトレーニングコースを企画実行することにより、国レベルの対策に協力する。要請に応じて、国レベルのプログラム作成に協力する。

  • 要請に応じて、例えば、財政面の保証や国際的な非政府的支援をとりつけるなどの、国レベルのプログラムを支援する資源や技術的な材料を動員することに協力する。

  • 要請に応じて、教育、スポーツ、若者、女性と労働者、非政府組織のために医学会やその他の保健関係の協会、政治的社会的指導者や組織の支援の確立に協力する。これには、医学校やその他の保健医療関係者のための学校において使用するたばこと健康に関する教育教材の提供も含まれる。

○ 各地域において選ばれた3カ国のために、WHOは国レベルのたばこ規制プロジェクトの推進に協力する。

  • 情報やトレーニングの提供、プログラム作成への助言、資源の動員や支援を確実なものにするなど特に深く関わっていくこと。

  • マスメディアやその他のコミニケーション手段を通じての公衆情報。

  • 健康的な生活習慣を確立する中でたばこを使用しないことに関する学校生徒のための教育プログラム。

  • 喫煙者の禁煙を支援するためのプログラム。

  • 妊婦やハイリスク産業の労働者など特別なグループを焦点をあてた他の教育プログラム。

次の事項をカバーした法的措置や行政上の対策

a.広告や大衆を誤誘導する宣伝の禁止

b.健康に関する警告表示

c.公共の場、公共輸送機関、職場における喫煙規制

d.経済対策

e.未成年者に対する効果的な販売禁止

  • たばこ消費と疾病の動向に関する調査一WHOの方法論を用いることが望ましい。

  • たばこ生産や消費に関連した有病率や死亡率と経済因子のモデリング。

○ いくつかの地域では、多くの加盟国はすでにたばこ規制プログラムを始めている。これらのいくつかは、他の加盟国により検討されているプロジェクトの規範として、認められ使用されているだろう。

○ 地域の活動や包括的な活動のためにWHOは以下のようなことを行う。

  • 1991年までに地域の行動計画を推進する。(ヨーロッパ地域の5か年のたばこのないヨーロッパのための行動計画など)

  • 国のプログラム策定のためにWHO指針を定期的に見直す。

  • たばこ関連の経済面の評価のための方法論を示す。

  • たばこ規制の分野における行動学的研究を行う科学団体を啓発する。

  • FAO、ILOや世界銀行など他の国連組織との協力で、いくつかの国を選びその中で、たばこ生産に代わる経済代替に関する研究を推進する。

(2)支持と公衆情報

目的:「たばこのない社会」というコンセプトを推進し、たばこを使用しないことが普通の社会的行動となるように確立すること。

目標:

  • 毎年、WHOは「世界禁煙デー」を企画する。

  • 1990年までにWHOはたばこを使用しないことが普通となるような社会的イメージを推進することを目的としたプログラムを開発する。

アプローチ:

  • たばこ問題の深刻さやそのためにとるべき必要な行動について、政府や保健医療関係者、教育者、政治家、政策決定者、若者などの関連団体に認識させること。

  • たばこの使用を世界的に低減させ、たばこを使用しないことが通常の社会的通念となるようなリーダー的役割を担うこと。メディアを通じて広く公けに用いられる技術的なプログラムにより提供される情報を取り入れること。WHOの支援を通じて、政府、世論、国連組織、NGOに、たばこ消費が原因の健康上の問題や社会的問題に関心を持たせるようにし、協力を取り付け、一緒に可能な解決策を探ること。国の組織や国際的NGOは、支援のみならず物質面における支援もあわせて基本的で補完的な役割を演ずること。

  • 若者の組織に働き掛け活発に参加できるようすること。

  • 優先問題の一つとして、たばこ使用の防止を認識すること。

  • たばこ使用に関する行動学的研究に参画すること。

  • 若者に対して関係する情報を提供すること。

諸活動:

教材の準備に関してWHOは以下のようなことを行う。

  • 若者、女性、保健医療関係者、教育者などの特別なターゲットグループを対象に、既に多くの国にある教育教材や情報を収集し、特に発展途上国に重きをおきつつ、広く使用されるようにすること。

  • まだ存在しないものについては、開発推進し、広く使用されるようにすること。

メディアの関与について、WHOは以下のようなことを行う。

  • 世界禁煙デーも含むメディアによるイベントを行うこと。世界保健デーとは別の日が、世界禁煙デーの恒久的な日として選ばれるであろう。この毎年のイベントの日として多くの候補となる日について主要な非政府組織やとも相談しながら、検討しているところである。著名な人々もメディアの活動に助力するよう求められている。
  • WHOの技術部局や他のソースから提供される情報に基づいた新聞発表やラジオやテレビのプログラムによりメディアを世界的規模でまきこんいくでいくこと。

  • 発展途上国からのメディア専門家のためのトレーニング・ワークショップを企画すること。

  • WHOのニュースレター「TOBACCO ALERT」の準備を企画すること。


他の組織による活動推進に関して、WHOは以下のようなことを行う。

  • 以下の事項を目標として政府、国連組織、NGOにアプローチする。

a.ヘルスの目標として、社会形態の目標としてのたばこのない生活習慣の推進

b.たばこの使用を制限するための政策や法的措置の策定

c.依存性生産物質としてのニコチンの分類

d.活動のための手段の獲得

  • たばこのない環境になるためにあらゆる国連組織に働き掛けること。国連での喫煙規制は強力な手段である。WHOの建物内およびWHO総会開催中の禁煙措置におけるWHOの模範的な役割は、組織としての信頼性にとって重要なことである。

  • たばこに関する法律やいくつかの国々で行われている政府行動の成功例を他の国々にとっての示唆やガイダンスとして利用されるよう本として出版すること。

(3)クリアリングハウス(情報発信基地)

目的:たばこと健康に関する情報や戦略を提供し、たばこ消費をコントロールすること。

目標:1990年までにWHOは情報収集、分析、提供のためのネットワークを、たばこ使用に対する国レベル、地域レベル、世界レベルのサポートの下に発展させる。

アプローチ:

  • 行動計画の最初の二本の柱はもし三番目の基本的な柱である技術的なデータベースがサポートされていれば、認識されるものである。

  • クリアリングハウスは、重要な情報の収集、分析、提供のためのメカニズムを推進するところである。情報は次の二つの一般的な領域に分類される。

(1) 国レベル、国際レベルのプログラムのサポート。

(2) たばこの生産と消費の状況、国レベル、国際レベルのたばこか健康に関する活動、たばこ使用関連疾患の動向に関する世界的規模のモニタリング。

プログラムのサポートに関連して:最も着手可能で、文書で証明でき、評価される諸活動をベースとした戦略が、すべてを網羅しているものよりもむしろ、考えられている。

世界的なモニタリングのために:その事項は費用便益の比較に沿って注意深く選ばれるものである。

  • トレーニングは、またプログラムの各柱をサポートする上で重要な活動である。

諸活動:クリアリングハウスとして、WHOは以下のようなことを行う。

  • たばこ使用の防止や減少に関連した国の窓口や組織を設置すること。

  • 学校をベースとした効果的な教育プログラム、禁煙方法、たばこ規制法、国のプログラム組織、たばこ消費の調査方法、種々のたばこ消費シナリオによる健康と経済的な結果のモデルや技術評価プログラムを含む教材を収集、評価、提供すること。

  • たばこか健康に関する世界の状況についてのモニタリングについての年二回の報告書を刊行し、配布すること。この報告書には、たばこ消費の調査結果、国レベルのたばこ消費の統計、国のたばこ規制法、たばこ関連疾息の死亡率動向、国、地域、国際レベルのプログラムや組織に関する情報が盛り込まれる予定である。このデータはまた総合的なプログラムの評価の際、使用されるものである。


国のプログラム推進をサポートするために、WHOは以下のようなことを行う。

  • 国のプログラムにおける管理者やキーパーソンのトレーニングのために1989年に行われたコースを発展させる。これらのコースは地域事務局やNGO組織との緊密な協力のもとに実施される予定である。