エクササイズガイド2006
「週23エクササイズの活発な身体活動! そのうち4エクササイズは活発な運動を!」
エクササイズガイド2006とは
生活習慣病を予防するには、継続して運動を行うことが大切です。「健康づくりのための運動指針2006」エクササイズガイド2006は、生活習慣病を予防するための身体活動量・運動量および体力の基準値である「健康づくりのための運動基準2006-身体活動・運動・体力-」(運動基準)に基づき、安全で有効な運動を広く国民に普及することを目的として策定されました。健康な成人を対象とし、現在の身体活動量や体力の評価と、それを踏まえた目標設定、達成するための方法を具体的に示しています。
エクササイズガイド2006では、通勤時の歩行、掃除、買い物などの「生活活動」と、ジョギング、水泳、サッカーなどの「運動」をあわせて「身体活動」と呼んでいます。
どれくらい運動したらよいのか
エクササイズガイド2006では、週23Ex(エクササイズ)以上の活発な(3Mets以上)身体活動が生活習慣病予防に効果的だとしています。歩行であれば毎日8千〜1万歩歩くと、週23Exを達成できます。また週23Exのうち、4Exは運動を実施することを推奨。これは、たとえばジョギングなら週約35分に相当します。
目標「いつでも、どこでも、楽しく歩こう1日1万歩(1週間7万歩)!自分に合った運動でいい汗かこう、週合計60分!」
● エクササイズとは
身体活動の量を表す単位(エクササイズガイドで提唱)
エクササイズ(Ex)=身体活動の強度Mets(メッツ)×身体活動の実施時間H(時)
(Mets(メッツ)は、身体活動の強さが安静時の何倍に相当するかを表す単位。
座って安静にしている状態が1Met、普通歩行が3Metsに相当する)
実施したExから消費したエネルギー量を求めることもできる。
エネルギー消費量(kcal)=1.05×エクササイズ(Ex)×体重(kg)
図2 1エクササイズに相当する身体活動
週23Exの根拠
では週23Exの身体活動を推奨する根拠は何なのでしょうか。
エクササイズガイド2006の作成にあたっては、身体活動と生活習慣病予防の関連を調べた根拠の明確な論文を世界中から集めて、内容を精査しました。その結果、生活習慣病予防に効果がある身体活動量は、週19〜26Exだとわかりましたので、その平均をとって週23Exを推奨することになりました。
それらの論文では、対象者を身体活動量の少ないグループと多いグループに分けて、その違いが将来の生活習慣病発症率に影響するかどうかを調べています。もちろん生活習慣病になるかどうかは、身体活動量だけで決まるものではありません。性・年齢や喫煙習慣、代謝性危険因子の有無などの要素も絡むため、論文では、身体活動以外の影響を排除して分析しています。つまり、身体活動量以外の条件が同じ人を多数(たとえば数百人)集めてきて、一つの群の身体活動は週23Ex以上で、もう一つの群は19Ex未満であれば、週23Ex以上の群のほうが生活習慣病になる確率が低いというわけです。
以上の意味において、週23Exをやらなければ生活習慣病になるリスクが高まるのかと問われれば、イエスです。ただし、これらは確率の問題であり、身体活動量が多ければ絶対生活習慣病にならないわけではありません。逆に、全然身体を動かしていない人が生活習慣病にならない可能性もあります。しかし、生活習慣病になりたくないのであれば、週23Exの身体活動はやってみる価値があります。できる人は、そのうち週4Ex以上は運動を行えば、さらに生活習慣病のリスク低下が期待できます。
楽しいと思える範囲がはじめの1歩
そもそも身体活動や運動は、食事制限などと異なり、必ずしもがまんを強いるものではありません。日常生活を活発にすることはちょっとした工夫で可能ですし、少し汗を流す程度の運動を行うことは、爽快(そうかい)で快適なものです。「生活習慣病にならないため」「爽快な気分を味わうため」「若々しい身体や気持ちを維持するため」、運動・身体活動の目的はさまざまでしょうが、まずは楽しいと思える範囲で取り組めるとよいですね。
POINT
週23Exという基準値は、集団の中で身体活動・運動量が最も低い群よりも、各生活習慣病罹患が統計的に有意に変化する群の各指標の下限値です。したがって、より多くの身体活動・運動量の方が効果が高いと考えられます。また、肥満者の減量を目的にする場合は、週23Exでは不十分ですので、より運動量を増やすか、摂取カロリーの減少を含めて総合的に取り組む必要があります。
※ 田畑 泉/国立健康・栄養研究所健康増進プログラムリーダー
運動所要量・運動指針の策定検討委員