21世紀のたばこ対策検討会(第1回)
2-2 薬物依存の定義とメカニズム
| 薬物の依存形成性の要因の一つである強化作用は実験的に定量でき、ニコチンはコカイン、モルヒネ、アンフェタミン等に匹敵する。 |
●薬物依存とは、「精神活性物質により、自己あるいは他者を障害する危険性があるにもかかわらず、自己の行動がコントロールされるようになった場合、依存が生じている」といい、診断基準が確立している(表1)1 。
● 薬物の依存形成性の強さは、実験室内の人や動物においては、薬物自体の要因で規定されるが、実験室外の人においては、薬物の入手可能性、価格、社会的容認度などの社会環境要因も影響する2 。薬物依存の本質の一つである「強化**」作用は実験的に量的な比較が可能であり、ニコチンは、コカインやモルヒネ、アンフェタミン等に匹敵する(表2)3,4 。同一薬物では、投与方法や他の強化刺激(アセトアルデヒドなどの薬物・環境等)も関係する5 。
(**ある反応の確率を増加させる何らかの現象、快楽のような感情的価値をともなう場合「報酬」ともいう)
● 「強化」のメカニズムには、感情や食・性・薬物依存など広範な活動の強化に関わる中脳辺縁系のドパミン作動性神経の活性化が共通している(表3)6。コカインやアンフェタミンは、中脳皮質辺縁系におけるドパミンの取り込み抑制または放出刺激により、細胞外ドパミン量を増やす。モルヒネやヘロインは、オピオイド受容体を介してドパミン作動神経を活性化する。ニコチンには、ドパミン放出促進と取り込み阻害の両面が認められる。
| (1)原則的基準 | (2)補足的基準 | |
| 嗜癖行動にしばしば見られる特徴 | 依存形成薬物にしばしば見られる特徴 | |
| ・高度に調節された、あるいは強迫的な使用 ・精神活性作用 ・薬物強化行動 |
・固定化した使用パターン ・有害な影響にも関わらず使用 ・中断後の再発 ・薬物への反復する渇望 |
・耐性 ・身体依存 ・快楽(多幸)作用 |
[U.S.Surgeon Generall's Report 1998]
| ニコチン | コカイン | コカイン | モルヒネ | モルヒネ | アルコール | アンフェタミン | ジヒドロコデイン | |
| 投与単位(mg/kg/inj) | 0.25 | 0.11 | 0.25 | 0.25 | 0.5 | 800 | 0.06 | 1.0 |
| 最終レバー押し頻度 (強化作用の強さの指標) |
1350〜2690 | 1600〜6400 | 2690〜9050 | 1350〜1600 | 1600〜6400 | 1600〜6400 | 1350〜2690 | 950〜1900 |
[Yanagita1993,柳田 1992]
| 薬物 | 作用 | 結果 |
| オピエート(モルヒネ、ヘロイン) | オピオイド受容体の刺激 | ドパミン系および非ドパミン系の活性化 |
| コカイン | トランスポータ蛋白のドパミン取り込み阻害 | 中脳皮質辺縁系のドパミン系でドパミン放出 |
| アンフェタミン | ドパミン放出の刺激 | 中脳皮質辺縁系のドパミン系でドパミン放出 |
| アルコール(エタノール)、バルビツレート、ベンゾジアゼピン | γアミノブチル酸(GABA)受容体機能の促進、N-メチル-D-アスパルテート(NMDA)グルタミン酸受容体機能の抑制 | GABA、グルタミン酸、ドパミン、オピオイドペプチド、セロトニン等の複数の神経伝達物質の相互作用 |
| ニコチン | ニコチン性アセチルコリン受容体の刺激によるドパミン放出促進と取り込み阻害 | 中脳辺縁系のドパミン系とオピオイドペプチド系の活性化 |
[Koob G.F.et al. 1997]