21世紀のたばこ対策検討会(第1回)
2-3 ニコチンの依存性
| たばこに含まれるニコチンの依存性は国際的には規制薬物の枠組みで検討されはじめており、低タール製品でも実際のニコチン摂取量は表示量を数倍上回ることが示されている。 |
● ニコチン依存は、他の薬物依存との共通の臨床的病態や動物モデルの存在、神経生物学的機構の解明等により、薬物依存であることが確立されている。特に、たばこは、ニコチン依存の転帰としての健康被害が重大であり経済損失も甚大であることから、医学的支援とともに社会的規制の対象となってきた(表1)。世界保健機関の薬物依存専門家会議は、国際条約における規制薬物としてのニコチンの取り扱いについて検討し、医療用のニコチン使用は検討の必要がないが、たばこ製品についてはプレレビューが必要と結論した1。。
● 人におけるニコチン依存の形成過程は、薬物自体の作用の他に、摂取方法(用量・速度)による依存形成の違いや、環境刺激や味・香り、同時に摂取される強化薬物などが2次強化刺激となるため複雑である2。ニコチン自体の作用と用量(濃度)が正の強化作用を有するため、喫煙者は銘柄の選択や喫煙様式の調節により、必要な用量を摂取するようになる3 。最近シェアが増加している低タール・ニコチン銘柄は、実際の喫煙条件では標準測定法による値の2-4倍のニコチンが生じ、低ニコチンの表示と相関しないことが示されている 4。
●米国では喫煙者の70%以上がDSM-IVやICD-10によるニコチン依存5 、我が国でも、喫煙者の約40%がICD-10によるニコチン依存と推定されている6 。離脱症候群を抑えながら禁煙に導く目的で、代替ニコチンデリバリーシステムとしてニコチン製剤(ガム、パッチ、点鼻薬、吸入薬)が開発されており、我が国でもニコチンガムが承認され、ニコチンパッチは申請中である。
表1 ニコチン依存に関する認識の変遷
| 年 | 報告書 |
年 | 世界保健機関 (WHO) |
年 | 診断基準 |
| 1964 1979 1986 1988 |
「たばこの常習的使用は・・・ニコチンの薬理学的作用によって強化され、習慣性をもつようになる」7 「喫煙は・・・典型的な物質乱用依存である」 8 「無煙たばこに含まれるニコチンは依存性がある」9 「紙巻たばこと他のたばこの形態は依存性を有する。 ニコチンはたばこに含まれ、依存性を引き起こす物質である。たばこ依存を規定する薬理学的行動学的過程は、ヘロインやコカインのような薬物への依存を決定する過程と類似している。」10 |
1974 1993 1997 |
薬物依存専門委員会第20回報告「たばこは依存形成性があるが、他の薬物とは様式が異なる。」11 薬物依存専門委員会第28回報告「ニコチンは依存形成性がえる、たばこにより重大な健康被害が生じ、医療上のニコチン使用があることから、検討の対称とした。 たばこやアルコールなど合法的な薬f物、その他の精神活性物質は統合的な対策が必要であり、国際的な貿易協定においても考慮すべきである。」12 薬物依存専門委員会第30回報告「たばこは依存性があり、疾病や死亡をもたらすことから重大な公衆衛生上の問題である。国際条約でたばこを麻薬あるいは向精神薬として規制できるかどうか検討するクリティカルビューの前段階として、1998年の31会会合において プレレビューする必要がある。ガムや、パッチなど医療上のニコチン使用については、重大な濫用が見られないことから、クリティカルレビューは必要ないと結論。」1 |
1978 1987 1992 1994 |
国際疾病分類 ICD-9「依存のない物質濫用に分類(精神毒性がないと考えられていた。)13 米国精神医学会診断基準 DSM-III-R(アルコール、アンフェタミン、カフェイン、大麻、コカイン、幻覚剤、吸入剤、アヘン類等にならび)「精神活性物質による 器質性精神障害」において290.00ニコチン離脱、精神活性物質常用障害として305.10ニコチン依存を分類。14 国際疾病分類 ICD-10「精神作用物質による精神 および行動の障害においてF17−たばこ使用による 精神および行動の障害としてF17.1有害な使用、 F17.2依存症候群、F17.3離脱状態を分類。15 米国精神医学会診断基準 DSM-IV「物質関連障害」 においてニコチン使用障害として305.10ニコチン依存、ニコチン誘発性障害として292.0ニコチン離脱、292.9特定不能のニコチン 関連障害を分類。16 |