
たばこは、喫煙者本人のみならず、喫煙母体の胎児や、喫煙者の近くにいる人たちの健康をも脅かす存在です。『たばこの吸い過ぎが、健康を損なう恐れのある』ことは、日本でもたばこのパッケージやCMの字幕に表示されるようになり、ほとんどの人が知るところとなりましたが、より具体的なデータをもとに、喫煙者も非喫煙者も、たばこに対する姿勢を今一度考える必要があるように思われます。
たばこの煙には、ニコチン、一酸化炭素、各種の発がん物質やその他の有害物質が含まれ、喫煙者では、肺がん、喉頭がんを始めとする種々のがん、心筋梗塞や狭心症、慢性気管支炎などの呼吸器障害、胃・十二指腸潰瘍等にかかるリスクが高くなると言われています。それらの病気の原因として、喫煙がどの程度関与するものかについては、主として国内外の疫学調査で明らかとされてきました。
日本では、昭和40年に開始された『計画調査』が代表的なもので、6府県に住む40歳以上の男女約27万人を対象に面接調査が行われ、その後17年間の追跡調査が実施されました。その結果、喫煙・飲酒、食生活などの生活習慣と、その後の各種の病気による死亡との間の関係が明らかとなりました。
非喫煙者と比べると毎日たばこを吸う人では、男性で約4.5倍、女性で約2.3倍、肺がんによる死亡の危険が高くなり(図)、特に男性では肺がんによる死亡の約70%は喫煙が原因であると言われています。さらに男性の喉頭がんになると95%以上が、喫煙が原因と考えられています。また、がんのみでなく、食生活の欧米化に伴い、今後増加が危倶されている心筋梗塞など虚血性心疾患においても、喫煙は主要な危険因子の一つです。そして、この調査において死亡した男性約3万2000人のうち、18%がたばこが原因であると推測されています。
また、母親が妊娠中にたばこを吸うと、胎児に悪影響を与え、胎内発育の不良、早産などの原因となることも報告されています。わが国では喫煙者に占める女性の割合が高くなってきており、妊娠中の喫煙の健康影響が危倶されます。
一方、非喫煙者が、家庭、職場、公共の場所などでたばこの煙を吸わされる『受動喫煙』でも、小さな子どもの気管支炎、喘息や、成人の肺がんなどの危険が高くなることが報告されています。これらの人たちは、本人の意思にかかわりなく“強制的に”たばこの害を被ることになるので、喫煙場所の隔離・制限、すなわち分煙対策を推進していくことが重要となります。公共の場所における分煙のあり方については、今後検討していく必要があります。