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第7回

1996年世界禁煙デーに向けて

“スポーツや芸術を通じて、たばこのない
世界をつくろう。たばこなしでやろう!”

中島 宏・世界保健機関(WHO)事務局長



 スポーツヒーローや著名な俳優、ミュージシャンなど芸術家の人生や業績は、極めて人目に付き、世界中の人々の関心を広く引き付けます。特に若い人々は、スポーツのスターや芸術の名手を理想的モデルとして目指しています。それゆえ、1996年の世界禁煙デーは、「スポーツや芸術を通じて、たばこのない世界をつくろう」というテーマで実施されることがふさわしいのです。スポーツ選手や芸術家は、たばこの使用がもはや社会通念として認められないような社会における健康的なライフスタイルを率先して推進することができます。

 毎年、世界禁煙デーは、世界保健機関(WH0)とすべての加盟国の人々が、たばこのもたらす害に注意を払うべき特別な日です。また、この日は、政府、地域社会、諸団体、個人が、たばこの流行をくい止め、特に若い人々のこの有害な物質への依存を防ぐ方法をともに探求する日でもあります。私どもは、既に禁煙に成功した人々を称賛し、いまだ喫煙を続けている人々がたばこの依存性から自由になるために格段の努力を払うことを奨励します。

 1996年の世界禁煙デーは、国連教育科学文化機関(UNESCO)と国際オリンピック委員会(IOC)が協賛しています。これらの機関はWHOと連帯して、スポーツと芸術活動を喫煙防止の推進に率先して結びつけることを歓迎してきました。これらの機関はまた、スポーツ選手や芸術家は、一般大衆、特に若い人々に対して、健康的なライフスタイルは「たばこと無縁である」べきだということを説得できる役割モデルとして重要であることを十分に認識しています。

 地域社会や諸団体は、芸術や文化を通じて自己表現を行います。良好な健康とたばこのないライフスタイルを文化的芸術的イベントと結びつけて推進すれば、人々の健康を改善できるばかりでなく、種々の団体や文化の創造性や活動性に十分な表現の機会を与えることに貢献します。

 私どもはまた、「すべての人にスポーツをしということを、人類すべてがリクリエーションや健康と幸福の改善のために、スポーツや身体活動に参加する権利として推進したいのです。定期的な身体活動は良好な健康のためにきわめて重要で、さまざまな心身の疾病を予防します。しかしながら、身体のフィットネスと良好な健康は喫煙によって台なしにされる可能性があります。青年期に喫煙を開始し生涯吸い続けた場合、約半数の者が、最終的にたばこ関連疾患で死亡すると推定されています。喫煙だけでなくすべての形態のたばこ消費、が非常に有害なのです。

 不幸なことに、たばこ産業は、スポーツや文化に関わる人、組織、イベントを大々的に後援することによって、たばこ製品に対してポジティブなイメージを作り上げることに力を注いてきました。多くの国々で、スポーツや芸術は民間企業からの後援に強く依存しており、たばこ会社は主たるスポンサーの一つなのです。多くの場合、スポーツや文化活動は、良好な健康、身体的強壮さ、知的な自由、文化的な独立性を称賛すべきなのですが、皮肉にも、依存性があり有害な製品を若者に広める機会として利用されています。

 対照的に、たばこと無縁のスポーツや文化的なイベントは、良好な健康と健康的なライフスタイルを推進するための理想的な場であります。一般大衆、保健部門、スポーツや芸術に積極的で関心を持つすべての分野が結託して、スポーツや文化団体がこれ以上たばこ産業の後援に頼らなくてもすむように後援活動を行うべきです。このようなことは、世界中の多くの地で行われてきました。保健医療団体はスポーツや文化活動を後援することができ、それによって健康増進のためのメッセージを新しく効果的な方法で伝達する重要な機会を創出することができます。しかしながらそのような後援活動には、財源が要ります。政府によっては、たばこ製品への課税を増額することによって、この目的のための新しい歳入を生み出してきました。この方法は同時にたばこの消費を減らすのにも役立ちました。

 たばこ会社によるスポーツや芸術への後援活動は、今や倫理的に受け入れがたいものとして広く認識されています。ますます多くの人々や地域社会が健康を優先し、たばこのない環境の中で生活することができるようになっています。関連するすべての人々や分野とともに、WHOは、良好な健康をスポーツや芸術の向上とともに称賛する、たばこと無縁のイベントを推進するために努力し、すべての人のために勝利を導くでしょう。

共同宣言

国際オリンピック委員会(IOC)
国連教育科学文化機関(UNESCO)
世界保健機関(WHO)

 良好な健康の維持と改善は、多くのさまざまな活動を通じて、個人や地域社会を積極的に巻き込むことによって達成されることは言うまでもありません。たばこのない環境の推進は、そのような活動の一つであり、文化・スポーツ・芸術のイベントの奨励はまた、別の活動であります。我々の生活に活力と幸福をもたらすために、これらの活動が協調して行われるのは当然のことです。

 IOC,UNESCO、WHOは、それぞれの独自の所管領域において、スポーツ、文化、健康を通じて人類の幸福と友好のために尽力しています。1996年の世界禁煙デーは、我々の力を結集し、心身の安寧が我々すべてにとって最も重要であることを世界に知らしめるための特別な機会となります。心身という健康の二つの局面は、分かつことが出来ず、常にともに推進されるべきものです。スポーツと芸術とを一層価値あるものとすべく、我々はすべての人に「たばこなしでやろう!」と呼びかけたいと思います。