
さる5月31日、本誌5月号でも既に紹介された今年の世界禁煙デーのスローガン「スポーツや芸術を通じて、たばこのない世界をつくろう」に合わせ、2年後の冬季オリンピック開催地である長野市で世界禁煙デー記念シンポジウムが開催されました。長野県では現在、オリンピック競技施設内の禁煙など、TOBACCO−FREE OLYMPIC(たばこのないオリンピック)に向けて検討が進められているところです。
プログラムは、長野県の小学校・中学校・高校の生徒による禁煙ポスター・標語の優秀作品の表彰・展示が行われるとともに、ロサンゼルスオリンピックの体操金メダリスト・具志堅幸司氏(現日本体育大学助教授)、喫煙ならびに受動喫煙の生理学的影響を長年研究している淺野牧茂氏(現日本女子大学教授)をゲストに迎え、「スポーツとたばこ」をテーマにトークショーが行われました。
具志堅氏は、先輩選手の勧めで「強くなるために」喫煙を始め、金メダルという「最高の幸せ」を手にするとともにやめたそうです。1984年のオリンピック当時は、わが国では現在ほどたばこの健康影響について一般には知られてなく、瞬発力・集中力が勝負の体操競技においてリラックスのために喫煙が求められたことなどが話題になりましたが、淺野氏は、たばこは循環器系、呼吸器系、精神神経活動のいずれにもマイナスで、運動には不利であることをデータで実証しました。

高校生によるロールプレイ
また司会者からは、1988年のカルガリー大会以来、オリンピックでは禁煙が原則とされ、たばこを「使用禁止薬物」リストに収載するような勧告も国際オリンピック委員会(IOC)に出されていること、世界保健機関(WH0)の「疾病傷害死因国際統計分類」(IDC−10)において、喫煙は「精神作用物質使用による精神及び行動の障害」に分類されていることが指摘されました。
特別講演では、国際対がん連合たばこ対策議長であるハーリー・スタントン博士により、世界各国のたばこ対策を踏まえ、わが国の現状と問題点が指摘され、家庭で受動喫煙にさらされている子どもたちは在院日数や欠席日数が多いことなどが明らかになりました。さらに(1)たばこ税の増額、(2)警告文の明確化、(3)広告・スポンサーシップの禁止、(4)目動販売機の設置期限、(5)公共の場や職場での禁煙などがアピールとして出されました。わが国ではようやく(5)の点について、厚生省と労働省の検討会報告書が出され、実際に着手されたところです。
その他、箕輪工業高校生徒によるロールプレイが行われ、一クラス全員の参加により、日常で行われているたばことの出会いや喫煙への誘惑、その断り方などが熱演されました。また青少年の喫煙開始を防ぐ「防煙」をテーマとした円卓会議も開かれ、東京衛生病院のエドワード・藤本氏、日本禁煙友愛会会長の小坂精尊氏、高崎工業高校の小林賢二先生らによる体験談の披露と討論が行われました。特に、具体的な視覚教材(ミミズや喫煙人形)を用いての小林先生の発表は迫力があり、現場の健康教育に即応用できそうなものでした。
来年の世界禁煙デーのテーマは「The United Nations and Specialized Agencies against Tobacco」であります。次の世代を担う青少年をたばこの誘惑・害から守るために、国内外を問わず社会全体が一丸となって取り組む必要に迫られているのです。