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第31回

厚生省保健医療局地域保険・健康増進栄養課

世界禁煙デーは5月31日

98年のスローガン「無煙世代をそだてよう!」を考える

 

●第2、第3の喫煙が問題

 たばこの健康被害については、知らない人がいないくらい、いろいろなところで叫ばれています。「たばこを吸うと肺がんになりやすい」とか「ぜんそくや気管支炎の原因になる」など、たばこを吸う本人についての有害性は子どもたちにも知られています。

 ところが、たばこを吸わない人に対する被害についてはとかく見過ごされがちです。しかし、たばこによる健康被害は、たばこを吸う本人よりもむしろたばこを吸わない人たちの方が深刻になっています。たばこ会社は決して周囲の人の健康を考えたたばこはつくってくれません。

 浅野牧茂先生(国立公衆衛生院生理衛生学部長)によると、喫煙には3つの種類があるということです。それは、1.自分が好きで吸う場合(能動喫煙)、2.自分では吸いたくないが、ほかの人の煙をいや応なしに吸わされる場合(受動喫煙)、3.妊娠中の女性が喫煙するか受動喫煙を余儀なくされて胎児が間接的に煙の影響を受ける場合(第3の喫煙)の3つです。肺がんをはじめ、気管支炎やぜんそくなど呼吸器系の病気 につながる有害性について分かっていながら吸うというのであれば、これは本人がすべて承知しているわけですから、どうすることもできません。

 しかし、本人はたばこを吸いたくないのに煙を吸わされてしまったり、母親のおなかの中にいるときに害を被ってしまうというのは、なんとも迷惑な話です。それどころか、いま最も問題になっているのは、この第2、第3の喫煙による健康被害なのです。

●一番の被書者は子どもたち

 生きている以上、私たちは呼吸をしなければなりません。胸いっぱい吸い込みたいような大自然の澄み切った空気も、あるいは嫌なにおいでむせてしまうような濁った空気も、そこにいる限り同じように吸わなければならないのです。従って、どんなにたばこの煙が嫌いでも、近くにいる人がたばこを吸っていると、その煙を嫌々ながら吸ってしまうことになります。これが、第2の喫煙であり、第3の喫煙にもつながるのです。

 喫煙者がたばこ自体を通して吸う煙が主流煙といわれるのに対して、たばこから立ち上る煙は副流煙といいます。非喫煙者はこの副流煙を吸わされてしまうわけですが、それと同時に喫煙者が鼻や口から吐き出した主流煙(呼出煙)もいや応なしに吸わされます。副流煙呼出煙とをあわせて環境たばこ煙(ETS)といいますが、この煙による被害は現在とても深刻になっています。

 環境たばこ煙による急性の影響としては、煙にさらされているために目が痛い、かゆい、涙が出るなどといった自覚的、主観的なものがあります。また心拍数が増えたり、血圧が上昇して心臓に負担がかかったりする客観的な影響があり、呼吸器系の疾患がある人が発作を起こすなどのほか、重大な病気につながる慢性の影響もあることが分かっています。

 特に問題なのは、家庭内で煙を吸わされている赤ちゃんや子どもたちへの影響です。浅野先生によると、3歳児健診でぜんそく様の気管支炎が多く見つかったり、窓を閉め切っている冬場には肺炎や気管支炎を発病する子どもたちが増えることが分かっているそうです。また米国の調査では、子どもの気管支ぜんそくが悪化したときに両親が禁煙すると、90%の子どもの症状が軽快するのに対し、両親が禁煙しないと、軽快するのはわずか30%だったということです。

 浅野先生は「居間、子どもの寝室、車の中ではたばこは絶対に吸わないこと。いちばんの被害者は、子どもたちなのです」と警告しています。

※今回の記事は、(財)健康。体力づくり事業財団の健康ネット(URL: http://www.health-net.or.jp)から抜粋しました。