
受動喫煙は、喫茶店のような、大勢の人が喫煙する場所に限らず、私たちが多くの時間を過ごす家庭、職場などでも起こります。例えば、都市の一般的なオフィスの場合、室内の浮遊粉じん中に占めるたばこの煙による物質の割合は30〜80%に達するという報告があります。また、たばこの煙に含まれる一酸化炭素は、たばこの煙のないところでは、空気中の濃度が2ppmなのに対し、たばこの煙の充満した会議室では8〜33ppm、住居で15〜60ppmにも達します。
これは、ビル管理法*1で定める基準(10ppm以下)を大幅に越えています。しかも一酸化炭素は、いわゆる空調システムでは除去することができないのです。
受動喫煙の証拠は、血液中あるいは尿中の「ニコチン濃度」を測定することでわかります。
「ニコチン」は、たばこの煙に含まれるニコチンの代謝産物で、通常、体内には存在しません。しかし、家庭内に喫煙者がいる人のニコチン濃度は、一家全員たばこを吸わない人より高く、また、より多
くの喫煙者のいる職場にいる人ほど高い数値を記録します。
受動喫煙による急性の影響は、たばこの煙が目や鼻やのどの粘膜を刺激して起こる症状と、口や鼻を通して肺に吸引された結果引き起こされる症状があります。具体的には、目のかゆみや痛み、涙目のほか、くしやみやせき、頭痛といった症状が出る他、呼吸の抑制、指先の血管収縮、心拍数の増加などが観察されます。そしてこれらの反応は、常習喫煙者よりも、たばこを吸わない人に強い反応が出ることも確かめられています。慢性の影響については、狭心症や心筋梗塞の発作が起こりやすくなったり、肺がんになる危険性が増すなどの報上口がされています。
人生最初の受動喫煙の被害者は赤ちゃんです。生後3週間から1歳までの乳幼児でも、既に53〜77%にニコチンが検出されています。最近の厚生省の調査では、両親がたばこを吸う家庭の赤ちゃんは、SIDS(乳幼児突然死症候群)*2の発症危険性が、両親とも吸わない場合に比べて4.7倍高いという結果が出ています。
子どものいる家庭では、両親ともたばこを吸わないようにすることが大切です。女性の妊娠は禁煙のよいきっかけになりますが、妊娠するといろいろなストレスがかかり、やめられないことが多いので、妊娠する前から夫婦そろって禁煙するのがよいかもしれません。
家庭内での喫煙は、大切な子どもたちの健康に大きな影響を及ぼします。なかでも、呼吸機能の低下、せきやぜんそくなどの症状との関係が深いといわれています。
成長期にたばこを吸うと身長の伸びが止まるという話はよく耳にしますが、実は、子どもの発育にも悪影響を及ぼすという報告があるのです。英国のイングランドで行われた調査では、家庭内で喫煙している人の数が多ければ多いほど、6〜7歳児の身長が低いという報告が出されています。
また米国でも、両親の喫煙と6〜11歳児の身長との関係が調査されており、子どもの発育には特に母親の喫煙歴が深く関係していることが明らかにされています。大人が自分の責任でたばこを吸うのは、とやかく言う必要はないのかもしれません。しかし、次の時代を担う赤ちゃんや子どもたちが、たくさんのたばこの害にさらされていることを、喫煙者は自覚しなければなりません。
※1)ビル管理法一建築物における衛生的環境の確保に関する法律。
同施行令第2条1項に規定されている。