たばこが健康にさまざまな悪い影響を与えることが明らかにされてから、40年以上がたちました。その科学的証拠はまたたく間に積み上げられ、たばこが膨大な死亡と障害をもたらすことは、もはや疑う余地がありません。たばこ製品は20世紀の半ばからこれまでに、先進国だけでも6000万人以上の人命を奪いました。この先30年間、たばこ消費が大きく減らなければ、毎年世界中で1000万人がたばこによって殺され、その7割は発展途上国が占めることになります。このような人災による膨大な死亡は、全世界の保健上の緊急事態となっています。この病災の流行をくいとめるには、効果のある保健対策をすみやかに実行しなくてはなりません。
しかし、たばこの流行をくい止めることは、病気の流行をくい止めるようにはいきません。たばこには、健康を守るための対策を無効にするために莫大な金をつぎ込むロビイストや世論工作の専門家が味方についています。さらに、一般市民はたばこの害を実際より小さく見積もっており、この傾向は、市民の健康を守り増進する責任を負う立場にある保健専門家の中にさえ見られます。このようなわけで、甘いままのたばこ規制が続き、たばこ規制をやろうと思えばできる立場にある人々の多くが、効果のある対策を実行せずにきたのです。
その一方で、幸いなことに、たばこ規制の分野で賞賛すべき成果をあげた先覚的な個人、団体、政府が世界中に増えてきました。このような努力によって、無数の人々や社会が早死にから救われ、よりよい生活の質を手に入れることができたのです。これらの実例により、社会全体の健康をよりよい方向に変えることが可能であることが証明されました。
問題が深刻なら、解決策もしっかり立てる必要があります。たばこは、あらゆる個人と社会をむしばみます。幾百万人がたばこにより早死にし、さらに、幾百万人がたばこ関連疾患に苦しんでいます。たばこを吸う友人、肉親、同僚を持つ非喫煙者は、彼らをたばこのために失う危険にさらされています。また、環境たばこ煙を強制的に吸わされて、不快な目に合い健康を損ねるだけでなく、命までも奪われる非喫煙者がいます。政府はたばこ関連疾患の治療のために何十億ドルも失い、さらに、たばこによる早死で何十億ドルもの生産損失をこうむっているのです。
この病災を一個人、一組織、一国の力だけでくい止めることはできません。総合的で持続的なたばこ対策を実行するには、幅広い世論の支持が必要です。社会のあらゆる分野の力がWHOと結びつき「たばこのない世界を作るために力を合わせる」ならば、たばこという厄災をなくすることができるでしょう。
(厚生省保健医療局健康増進栄養課 仮訳)