喫煙の健康に及ぼす害について
(昭三九・二・六 衛発六八)
厚生省公衆衛生局長から各都道府県知事、各指定都市市長宛
標記の件に関し、先日米国厚生教育省公衆衛生局より「喫煙と健康」と題する報告書が発表され大きな反響を呼んでいるが、厚生省においても去る一月二七日専門の医学者の参集を求めてこの報告書の信憑性、日本における特殊性等について討議したところその意見はおおむね別添のとおりであった。
米国の報告書及びこれに関する専門家の意見からみて、わが国においても若年層の喫煙、成人の長期多量の喫煙が健康に悪影響を及ぼすことは明らかであり、国民保健の立場からその害に関する啓蒙の措置をとる必要がある。
未成年者の喫煙防止については、さきに児童局長より通達されたところであるが、さらに成人の長期多量の喫煙の害についても、関係機関、関係団体との連絡のうえ、別途送付する資料を参考として指導啓蒙の措置をとるようご配慮を煩わしたい。
別添 たばこと肺がんの関係について
過日アメリカ公衆衛生局の「喫煙と健康」と題する報告書が発表されて以来特にたばこと肺がんの関係について国民が不安を抱いているので、一月二七日専門の医学者九人の参集を求めて、本報告書の信憑性、日本におけるこの問題の特殊性等について討議したところ、その意見は概ね次のとおりであった。
(1)報告書に対する意見
- 報告書作成に当っての委員の選考、検討の順序等については、相当慎重な考慮を払い、 公正を期していると認められる。
- 資料の収集については、可能な限りの努力を払っているが、なお時間的地域的に止むを得ない限界があったようである。
- 本報告書は、表題(Smoking and Health)に示すとおり肺がんのみならず、喫煙とかなり広い範囲の疾病との関係を、主としてアメリカ、カナダ、イギリスのある時点のデータを集団的に把握して行ったものであり、これらのデータに関する限りにおいて結論は正確であると認められる。
- 多量かつ長期間の喫煙は成人の死亡率に相当な影響を及ぼしていると認められる。影響が大きいと考えられる疾病は肺がん、慢性気管支炎、心臓欠陥障害等があげられている。
- 肺がんについては紙巻たばこが葉巻、パイプに比して危険度が多いようであり、その危険度は喫煙の継続期間、一日の紙巻たばこの本数に比例するものとされている。
- なお、本報告書においても、たばこの利点として精神面における効果を認めている。
(2) 日本における特殊性
- 現在における日本の肺がんによる死亡率は欧米に比してかなり低く、一九六一年においては男子でアメリカの約四分の一、イギリスの約十分の一であり、しかも病理学的な点においても欧米各国の肺がんでは偏平上皮がんが多いのに対し、日本では腺がんが多い等の差もあって、たばこの影響があるとしても欧米に比して少いと思われる。
- しかし、肺がんの死亡率は最近一五年間において男子で五・八倍に急激に増加しており、長期的に見ると若年層の喫煙、多量の喫煙が現在よりも大きな要因となることが、本報告書から推論できるようである。