新型コロナウイルスとたばこ

喫煙者は非喫煙者に比べて疾患を保有している人が多く、新型コロナウイルス(COVID-19)に感染したとき、人工呼吸器や人工心肺装置(ECMO)が必要な重症になる人の割合が、非喫煙者に比べて多くなることが明らかになってきました。
図 COPD-19の重症度リスク 喫煙歴なし vs 過去・現在喫煙者+疾患
図 COPD-19の重症度リスク 喫煙歴なし vs 過去・現在喫煙者+疾患
 (松下「喫煙状況と新型コロナウイルス感染による重症化リスク」2022.1報告資料から作図)
図 喫煙歴によるCOPD-19の重症度リスク 喫煙歴なし vs 過去・現在喫煙者
図 喫煙歴によるCOPD-19の重症度リスク 喫煙歴なし vs 過去・現在喫煙者
(Ashley K Clift et al., Thorax 2022; 77: 65-73 から作図)

また、感染防止のために「密閉・密集・密接の3密を避けましょう」と言われていますが、喫煙所はこの3密が発生しやすい場所となっています。狭い喫煙所内に多くの人が集まる上に、マスクを外して喫煙することになるため、濃厚接触しやすい条件もそろっています。実際に喫煙室での感染が疑われる事例も報告されています。このため日本呼吸器学会は、ウイルスの蔓延を防止するため、喫煙室・喫煙コーナーの使用はやめ、閉鎖することを呼びかけています。
さらに、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、在宅勤務やステイホームが推進されたため、自宅で過ごす時間が増えてきています。日常生活や社会環境の変化に伴って、ストレスも増加しています。自宅では、職場などとは異なり、喫煙禁止の規制や周囲の目を気にすることが少ないため、喫煙本数が増えてしまう人も多いと言われています。喫煙者本人の認識は低くても、同居の家族からみるとたばこの量が増えているという指摘がなされることも多くなっています。国立がん研究センターの調査では、喫煙者と同居する人の3割が、受動喫煙の機会が増えたと、回答していました。
図 ステイホーム・在宅勤務による受動喫煙について
図 ステイホーム・在宅勤務による受動喫煙について
(国立がん研究センター「新型コロナウイルスとたばこに関するアンケート調査」2021から作図)

新型コロナウイルスの対策としても禁煙の推進が求められています。世界保健機関(WHO)などは禁煙を強く呼びかけています。また、喫煙者は心臓や呼吸器の病気や、がんなどを患いやすくなっているため、喫煙歴があって持病のある人は感染対策を徹底することが重要となっています。

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(2022.5.31 作成)