高齢者の生活機能向上のための筋力トレーニングの開発(平成16年度 厚生労働省 老人保健事業推進費等補助金事業)
1. 事業目的
高齢者の転倒予防や介護予防の手段として運動の実践、特に筋力トレーニングに注目が集まっている。また、その具体的な方法として各種施設において専門機具を用いたトレーニングが実践されている。しかし、それらの方法は自宅で自重を用いた方法ではない。そこで、自宅で自重で行える筋力トレーニングの負荷の設定法、トレーニング方法、トレーニング部位、トレーニング頻度などのメニューを高齢者自身が作成する方法を開発する。また、その結果を報告書及びパンフレットを作成配布することによって普及する。
2. 事業概要
- 「高齢者の生活機能向上のための筋力トレーニングの開発研究委員会」の設置
高齢者の生活機能向上のための筋力トレーニングの研究と、実践のためのマニュアルづくりの制作のため、学識経験者等から成る委員会を設置し、被験者の選定、測定項目・方法、トレーニング方法および測定結果の評価などについて、専門的立場から検討した。 - 筋力トレーニング研究の実践
調布市に在住の前期高齢者に対してNPO調和SHC倶楽部の会報などを通じて、運動未実施者で筋力トレーニングを3ヶ月間実施でき、かつ体力測定に参加できる前期高齢者を募集し30人の参加を得ることができた。この30人を対象に体育館で専門指導者による週1回のトレーニング指導をし、自宅でできる方法を図示したパンフレットを配布し、毎日の実践を促した。また、トレーニング前後に各種の体力測定を実施し、その効果を測定した。
主な測定項目
- 体力測定(握力、開眼片足立ちなど8種目)
- 身体組成
- 骨密度
- 下肢筋力
- 脚伸展パワー
- 歩、走パワー
3. 事業の成果
3ヶ月間の筋力トレーニングによって次に示す効果を得ることができた。
- 体力測定:トレーニング実施前と後において有意な変化を認めることができた。即ち、筋力項目、歩行能力(移動)、バランス能力を示す項目の体力は増進されたが、上半身の柔軟性を示す測定項目だけは減少した。
- 身体組織:男性の背部、女性の背部、前椀部、腹部における皮下脂肪厚に有意な減少が認められた。逆に筋厚は有意に増加した。特に腹部において男女共に増加が著しかった。
- 骨密度:有意な増加は認められなかった。
- 下肢筋肉:股関節最大屈筋力(腿を挙げる力)が有意に増加した。
- 膝の屈筋力、伸展力については増加は認められたが有意な向上は認められなかった。
- 脚伸展パワーについては有意に増加した。
- 歩行能力、走行能力については有意に増加した。これらのトレーニングの実地とそれに伴う効果測定の結果、次に示す運動方法が前期高齢者に推奨できる。
- いすのすわり立ち
- 膝のキック(ニーエクステンション)
- 腿あげ(ニーアップ)
- 踵あげ(カーフレイズ)
- 上体おこし(シットアップ)
[高齢者の筋力トレーニング]