寝たきりや虚弱を引き起こす生活要因に関する生活史的調査研究事業(平成17年度 (独)福祉医療機構長寿社会福祉基金助成金事業)
1. 事業目的
高齢者の日常生活環境の向上を支援するために寝たきりや虚弱となった高齢者及び介護している家族に対し、過去の生活について詳細な調査を実施し、寝たきりとなった経緯や自身の体験に基づき地理的・社会的要因も含めたデータを集積し、今後の保健事業における有効な基礎資料を得ることを目的に本調査を実施した。
2. 事業概要
- 事業の実施体制等
調査の企画、実施、分析、報告書の執筆と本事業の評価を行うために研究企画委員会を設置した。委員の構成員は地域保健事業に従事している医師、保健師、理学療法士の有識者。また、委員とは別に、委員会から推薦を得た保健師や看護師などの有識者を調査員として任命し、委員と協同して、面接調査・運動機能検査やグループワークを実施して、調査の集計分析を実施した。 - 事業の内容
面接調査・グループワーク調査の実施
【調査目的】
衰弱の状況を体力・運動機能で明らかにし、面接調査により得られた生活史との関連について調査し、面接調査内容の質的分析を実施(グループワーク調査)するため
【調査内容】
寝たきり・虚弱になる前の生活状況(日常活動、趣味、社会活動、対人関係、運動習慣など)
寝たきり・虚弱であることが意識されたきっかけ
寝たきり・虚弱であることが意識された後の心理的変化
【調査対象】
下記の条件を満たす在宅および施設の寝たきり高齢者・虚弱高齢者本人または家族
(面接調査対象者12名)
【調査方法】
面接調査及び体力・運動機能検査
【分析方法】
面接調査内容の質的分析
3. 事業の成果
本調査研究よりで得られた寝たきり・虚弱の予防に関するテーゼ(判断)は次の3点である。
- 高齢者のいきいきとした生活には、「仲間との交流」や「役割」という対人的なソフト面の環境が、より強く反映される。
- 高齢者は自ら「生き甲斐や人生満足度を最大限に高める」意識をもって生活しており、その生き方の決定には、家族との関係が強い背景要因となる。
- 「身体機能への関心(身体機能低下に対する不安、過去の健康状態から来る自信)」と「老人的外観に対する羞恥心」は、高齢者本人の活動性に直接また強く影響しており、特にサポートの必要な部分である。
今後は、これらに関してケースを通じた詳細な分析、及びこれらに特化した追加の調査を行うことで、高齢者の日常生活と密接に結びついた介護予防の方策が得られることが期待できる。