公益財団法人 健康・体力づくり事業財団

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貯筋運動プロジェクト
(平成22年度(独)日本スポーツ振興センタースポーツ振興くじ助成事業)

1. 研究目的

  健康で活発な生活を遂行するためには、自らの力で活動できる力を保持することが大きく影響する。それには、居住する地域で、仲間と楽しみながら、安価に、スポーツやエクササイズを継続できる環境を整備することが必要である。
  そこで、本研究では、道具を使わずに自体重を利用して効果を上げられる筋力トレーニング「貯筋運動」を指導する健康運動指導者を養成し、総合型地域スポーツクラブと組み合わせ、週1回程度の集合型運動教室"貯筋運動ステーション"を設置して、ステーション参加者の変化を分析した。主にスポーツや運動を行っていない者のスポーツ・運動開始を促し、健康・体力つくり、仲間・生きがいづくりに貢献できるとともに、クラブの地域における存在意義を高め、指導者の活用を図るしくみを提案することを目的とする。

2. 研究概要

  1. 貯筋運動指導者養成講習会のカリキュラム・テキストの作成。
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  3. 貯筋運動指導者と総合型地域スポーツクラブによる貯筋運動ステーションの実施。
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  5. 貯筋運動ステーション参加者の参加前後の変化から貯筋運動ステーションの効果を測定。
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  7. 貯筋運動ステーションの効果をリーフレット、シンポジウム、ホームページ等で周知。
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3. 研究の成果

  1. 健康運動指導士、健康運動実践指導者を対象とした貯筋運動指導者養成講習会のカリキュラム・テキストを作成し、2日間の講習会を実施して7名の指導者を養成した。さらに実践の反省(モニター報告会)を踏まえ、修正・追加を行った。
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  3. 事務局体制、地域性等を考慮し、全国から5つの総合型地域スポーツクラブに協力を求め、貯筋運動ステーションを実施した。
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  5. 貯筋運動ステーション参加者の参加前後に体力測定、質問紙による調査を行い、145名のデータ・回答を得て体力・心理の変化を分析した。
    主な結果は、以下のとおり。
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    1. 1) 身体・体力測定
        体重および大腿部の皮下脂肪厚は,有意な変化はみられなかったが,腹囲および腹部皮下脂肪厚は有意に減少し,大腿部および腹部の筋厚は有意に増加した.膝関節伸展トルクは,運動介入前後で有意に増加した.さらに,椅子の座り立ちタイムおよび5m最大歩行のタイムは運動介入前後で有意に減少し,上体起こしの回数は有意に増加した.
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      貯筋運動ステーションによる身体・体力の前後変化

                       
    3. 2) 日常生活動作能力
        全体の得点および下位尺度得点の変化に有意差は認められなかった.この理由として,ベースライン値において高得点者が多かったことが考えられる.そこで,介入前13点未満で,かつ介入後調査が可能であった42名の前後比較を行った結果,合計得点および3つの下位尺度得点においては有意な上昇が認められた.
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    5. 3) 生活満足度
        「目標達成」を除く全ての因子の平均値が増加し,「興味・関心」では介入前の4.0点から介入後の4.2点,「決意と不屈の精神」では介入前の2.4点から介入後の2.8点,「生活満足度総合」では介入前の10.9点から介入後の11.6点へと有意に向上した.項目ごとに見ると,「自分の人生はやり方によっては今よりもっと良くなったと思う」や「今自分は過去と同様に楽しい生活を送っている」,および「自分はたとえ変えることができたとしても過去の自分を変えなかったと思う」の項目においてポジティブな回答を行った者の割合が増加し,「この頃は年を感じ,少々疲れていると思う」の項目においては有意に向上していることが認められた.全体の得点および下位尺度得点の変化に有意差は認められなかった.この理由として,ベースライン値において高得点者が多かったことが考えられる.そこで,介入前13点未満で,かつ介入後調査が可能であった42名の前後比較を行った結果,合計得点および3つの下位尺度得点においては有意な上昇が認められた.
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    7. 4) 運動実施種目および実施頻度
        運動介入後では介入前と同様にウォーキング(19.7%),体操(軽い体操)(17.7%)が実施率の1位,2位を占めたが,筋力トレーニングが介入前に比べて10ポイント増の14.6%で3位となり,手軽にできる貯筋運動による波及効果と推察される.また,介入前の実施種目数は2.4±0.8であったが,介入後は2.7±0.6と有意に増加した.
        さらに,実施頻度も介入前は週4回以上の実施者は37.7%であったが,介入後は57.6%とおよそ20ポイント増加し,平均実施頻度も59.9±50.4回から76.3±49.8回に有意に増加した.
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    9. 5) 運動目的
        「老化の予防」が最も多く,次いで「美容や運動不足の解消」「スポーツや運動を楽しむ」「ストレス解消」であった.さらに,介入前後で比較した結果,各設問で大きな変化はなかったが,「スポーツや運動を楽しむ」の回答割合の増加傾向が認められた.また,介入前後で目的を持って運動実践している者の割合が116名(複数回答含む)から142名(複数回答含む)へと増加していたことが明らかとなった.
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    11. 6) 1日当たりの歩数および歩行時間
        1日当たりの歩数について、変化量に有意な増加はみられなかった.歩数の度数分布の比較については介入前後で歩数が増加した者の割合は29.4%(42/143)であった.
         1日当たりの歩行時間について,変化量に有意な増加はみられなかった.歩行時間の度数分布の比較については介入前後で歩行時間が増加した者の割合は27.3%(39/143)であった.
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    13. 7) 運動実践者意識
        全ての項目において平均値が高くなっていた.そして,運動介入前後では,「私は運動・スポーツ実施者だと思う」,「自己紹介時,自分の運動・スポーツへの関わりについて述べる」,「運動に関連した多くの目標を持っている」,「運動・スポーツ実施者であるという誇りが重要な意味を持っている」,「運動・スポーツは,自分自身にとってかけがえのないものである」,「他人は自分を定期的に運動・スポーツをする人間だと思っている」の項目で有意な向上がみられた.
     

4. 報告書