健康運動指導者と地域住民組織による草の根の運動開始を促す環境づくりと運動プログラムの開発
(平成26年度厚生労働省地域の健康増進活動支援事業)
目的
健康で活発な生活を遂行するためには、自らの力で活動できる力を保持することが大きく影響する。それには、居住する地域で、仲間と楽しみながら、安価に、スポーツやエクササイズを継続できる環境を整備することが必要である。
そこで、本研究では、道具がなくてもできる自体重を利用した筋力トレーニング「貯筋運動」、高齢者の特性を理解し、安全に楽しく指導できる健康運動指導士、地域住民の自主組織である総合型地域スポーツクラブとを組み合わせ、週1回の集合型運動教室"貯筋運動ステーション"を設置して、高齢者のスポーツ・運動開始・継続を促し、地域の健康・体力つくり、仲間・生きがいづくりに貢献するとともに、クラブの地域における存在意義を高め、指導者の活用を図るしくみを提案することを目的とする。
実施概要
- 貯筋運動ステーションを実施した2クラブにおいて、クラブの拠点施設よりもさらに高齢者の身近なエリアにある公民館や集会場などを、1クラブで2会場ずつ確保し、クラブから出張して集合型貯筋ミニ教室(サテライト)を実施し、クラブに参加しづらい新しい層の掘り起こしを目指した。
- 上記の会場は、狭いスペースだったり、畳だったりすることが多いので、床・畳の上でできる貯筋運動を、筋電図を測定し、考案した。
(1) 被験者:登山クラブに所属する59~69歳の健常な中高齢者8名
(2) 対象動作:自重負荷によるレッグレイズ、ニーエクステンション、ドルシフレクション、ヒップアブダクション、カールアップ(補助台がある場合とない場合)の6種目およびラバーバンドを用いたレッグプレス、ヒップフレクション、ヒップアブダクション(横臥位、長座位)、ドルシフレクションの5種目
(3) 方法:小型軽量の携帯型筋電図計を用いて、双極誘導法により、腹直筋、脊柱起立筋、中臀筋、大腿直筋、外側広筋、大腿二頭筋、前脛骨筋、腓腹筋(内側頭)の計8筋の表面筋電図(electromyogram:EMG)を導出し、対象動作における各筋の活動水準(%EMGmax)の平均値と標準偏差を算出した。
規定動作10回連続実施時のEMG生波形の例(ニーエクステンション/自重負荷)
結果概要
- サテライトの設置について
サテライトへの参加者は、今までクラブに参加したことのない者が89.5%であった。4会場の平均出席率は75.2%であった。 - 貯筋運動畳バージョンの開発について
筋力の維持向上に効果が期待できる30%EMGmax以上の筋活動水準に達した動作
- 腹直筋→カールアップ(補助台なし・あり)
- 中臀筋→横臥位でのヒップアブダクション(自重・バンド)
- 大腿直筋→カールアップ(自重)、ヒップフレクション(バンド)、レッグレイズ(自重)、レッグプレス(バンド)、ニーエクステンション(自重)
- 外側広筋→横臥位でのヒップアブダクション(自重・バンド)、レッグレイズ(自重)
- 前脛骨筋→ドルシフレクション(自重・バンド)
床座位で筋力トレーニングを行う場合、自重負荷法はラバーバンドを用いたときと同等かそれ以上の負荷抵抗を筋に課すことができることが確認された。したがって、主に高齢者を対象とした畳上での貯筋運動プログラムを構成する種目としては、負荷強度の妥当性、安全性、簡便性、経済性の面から、自重負荷によるレッグレイズ、ニーエクステンション、ドルシフレクション、ヒップアブダクション、カールアップの5種目が適当ではないかと考えられる。