公益財団法人 健康・体力づくり事業財団

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「貯筋運動」による地域の介護予防事業に資する調査研究事業

目的

実施内容

  1. フレイルレベルの方々を対象とした貯筋運動教室の開催とその効果検証
    北翔大学倫理審査委員会承認(承認番号:2019-001)
  2. 貯筋運動ステーション※2実態調査
  3. 貯筋運動指導者研修会修了者実態調査

1. フレイルレベルの方々を対象とした貯筋運動教室の開催とその効果検証

実施地域及び体力測定日

北海道古平町 2019年7月6日、9月21日、11月30日
埼玉県飯能市 2019年9月22日、12月1日、2020年2月23日
宮崎県小林市 2019年6月29日、9月14日、11月23日

貯筋運動教室の効果検証のためのプロトコル

●教室開催
週1回の教室を約3ヶ月間(1回1時間 計10回+2回の体力測定)
教室以外では自宅で自主的にスクワットを行い、貯筋カレンダーに記入。

●教室前後の体力測定
A・Bグループとも①と⑫の回に測定(計3回)。
測定項目:10回反復椅子座り立ち、5m最大速度歩行、握力、膝伸展筋力、バランス、腹部と大腿部の筋厚(超音波)、身長、体重、胸囲、質問紙



本調査研究では、各自治体の初回の教室のみ分析した。

貯筋運動の効果検証1 = 実施者と非実施者の比較により運動効果の有無を判定


貯筋運動の効果検証2 = フレイルレベルによる効果の大きさを比較


※1 貯筋運動
福永哲夫氏(東京大学・早稲田大学名誉教授/鹿屋体育大学前学長)が提唱する、主に脚部の筋力と筋量をアップさせるレジスタンストレーニングのことをいう。自重で行うため、特別な器具を必要とせず、個々の体力レベルにあったプログラムを選択することができる。

※2 貯筋運動ステーション
健康・体力づくり事業財団が地域の自主・自立的な住民組織である総合型地域スポーツクラブと、健康運動指導士・健康運動実践指導者のコラボレーションにより全国に設置している貯筋運動実践拠点(教室)。平成22年度に開始し、令和2年度までに135クラブが参加している。

2.貯筋運動ステーション実態調査

(1)目的
貯筋運動ステーションに協力してくださった総合型地域スポーツクラブの現在の貯筋運動実施状況を明らかにし、介護予防における活用の可能性を検討する。

(2) 調査対象
平成22年度~令和元年度に健康・体力づくり事業財団のモデル事業として貯筋運動ステーションを実施した135の総合型地域スポーツクラブ(以下、「クラブ」)のうち現在も活動中の132クラブ

(3) 調査方法
メールによる質問紙調査
回答をいただいたクラブのうち7クラブは電話による聞き取り

(4) 調査期間
令和2年11月20日(金)~令和3年1月12日(火)

(5) 調査票回収数(率)
118クラブ(89.4%)

3.貯筋運動指導者研修会修了者実態調査

(1)目的
貯筋運動指導者研修会修了者の貯筋運動における指導実績を明らかにし、今後の貯筋運動の普及や介護予防における役割を検討する。

(2)調査対象
平成22年度~令和2年度に健康・体力づくり事業財団が主催した「貯筋運動指導者養成研修会」を修了した970人のうちメール送信が可能な760人

(3)調査方法
インターネットによる調査票

(4)調査期間
令和2年12月23日(水)~令和3年1月12日(火)

(5)調査票回収数(率)
280人(36.8%)

まとめ

〇超高齢社会の今、地域の資源を総動員して地域の福祉を充実させていくことが求められている。介護予防は人と人とのつながりづくりに重点が置かれるようになっており、その点から運動は交流などさまざまなオプションを持つ。

〇一方で、その進め方には地域格差が生じている。実施効果における信頼性と道具を使わない導入しやすさから、貯筋運動は選択肢の一つに挙げられる。

〇貯筋運動の優位性
  • 道具を使わないことからだれでもどこでも行うことが可能であり、事業にも導入しやすい。
  • 貯筋通帳を使い、セルフモニタリングができる。
  • 総合型地域スポーツクラブという地域資源を活用し、クラブでの実施や、クラブからの専門指導者派遣ができるシステムを全国に展開できる。
  • 3か月間の貯筋運動教室への参加により、脚筋力及びQOLの改善が見られる。また、その改善幅は2次予防事業対象者の方が非対象者より大きい。

  • 〇課題とこれからの展開

    ① 指導者
    人材の供給と需要のミスマッチが起こっている。専門の指導者による安全で効果的な指導と、住民がサポーターとなって支え広げていくという、役割の違う両輪により普及を図る。プログラムの質を担保しながら地域で展開していくために、指導者やサポーターの普及システム及び養成カリキュラム、DVD・e-ラーニングなどの教材を作成する。既存の養成研修会に加えて、自治体においても研修会を開催して、地域の運動・スポーツ指導者から普及の担い手を発掘すると同時に、現在まで養成してきた指導者のネットワークを立ち上げ、総合型地域スポーツクラブもしくは健康・体力づくり事業財団からの周辺地域への派遣やサポーター養成等に活用する。

    ② 場所
    総合事業の事業所や介護保険施設、サロン、老人福祉センター等、高齢者の介護予防を専門とする前線での認知度を高める。

    ③ プログラム
    より虚弱な高齢者を対象とすることから、対象に応じた留意点をまとめ、実践可能で楽しく継続できるツールや方法論を開発する。

    ④ 普及戦略
    【アプローチ】
    新聞、ラジオ、ケーブルテレビ、防災無線、スマートフォンなど、複数のチャンネルを使って「届ける」バリエーションを増やすことが必要である。コロナ禍においては、自宅で道具を使わず行える貯筋運動の強みを生かし、オンライン空間での交流や指導が可能であり、新たなコンテンツを作っていく必要もある。高齢者がやってみようと思えるように促すアプローチを試行する。

    【総合型地域スポーツクラブの活用】
    全国8割の自治体に約3600ある住民の自主自立組織・総合型地域スポーツクラブを、普及の拠点としていく。行政とクラブとのマッチングについては、できる自治体から少しずつ始めていく。

    【行政施策との連動】
    健康づくり施策、介護保険施策との関連を保ちながら、その地域に適合した方法や資源で、貯筋運動をとおして住民がつながり交流できる拠点、高齢者の居場所を設置していく。


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