公益財団法人 健康・体力づくり事業財団

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認知症理解する

前認知症にみられる記憶障害や対人反応の特徴は

①短期記憶、ついさっきが一番苦手

  例えば電話帳で田中さんの番号を確かめて、3774の…と番号を回し始めます。
途中で「お父さん、お風呂の…」と呼ばれて、返事でもしたら、もう頭の中で繰り返し
ていた番号は無くなり、どこまで回したかわからなくなります。ここでわかるように頭
の中で繰り返していた番号が短期記憶です。自分の家の番号のように記憶の棚に
きちんとしまってあっていつでも引き出せるのが長期記憶です。この短期記憶から
長期記憶への移し替えが障害されます




②健忘感(物忘れ感)がない

  私たちは誰でも物忘れをします。物が思い出せない時、脳のどこかで何かはさま
ったような違和感が残ります。何かを忘れた感じがしてさっきまで何を考えていたか
記憶の道を自分でさかのぼったりします。前認知症の人は、 このような物を忘れたと
きの一種の不全感が全く欠けています。




③全体健忘

  食事の内容を聞かれて、「パンにバターを塗って、ヨ−グルトに…」と思い出し、
10のうち2〜3つ忘れるのは部分健忘です。これに対して「ごはん自体を食べて
いない」と全体を忘れます。


④カンニング力の低下

 日付を聞かれた時、私たちはとっさに頭のなかで確かテレビで10日と出ていたか
らとか、周囲をチラッと見回してカレンダ−を探したりします。質問されると反射的
に手持ちの記憶や周囲から手がかりを利用しようとします。これがカンニング力で
す。認知症の人は、それまでさんざん鏡開きの話をして今が正月であることを重々承
知しているはずなのに、今何月ですかとたずねると1月であることがわかりません。
カンニングする気も力もなく、とっさに手がかりを得ようとする反射が欠けています。


⑤いったん、壁を越えたことにはこだわる

  新しいことはなかなか記憶できませんが、いったんその障害の壁を乗り越えて記
憶してしまうと、今度はそれにこだわり始めます。「明日病院に行くのですね」と何度
も繰り返して言うことがこれにあたります。




⑥記憶史のむら、昔のことは得意

 人間誰しも時間の経ったことは記憶が薄くなり最近のことのほうが思い出しやす
いものです。ところが前認知症の人はこれが逆になっているようです。特攻隊を飛行
場で見送った女学生の頃の記憶は鮮明で、 当時の食堂の名前まで思い出します
が最近2、3年の記憶ははっきりしません。


⑦タイムマシン現象、だんだん若返る

  物忘れが進むにつれて本人はだんだんと若い頃に時間を逆行していきます。は
じめは5、6年の年齢の鯖読み程度があっという間に嫁入り前の旧姓に戻ったりし
ます。現役の子育て主婦の時代に戻って食事をいっぱいに作ってご主人から閉口
されるおばあさんもいます。




⑧鬼の顔と仏の顔、いつもの嫁は鬼の顔、盆暮れにくる娘は仏の顔

 よくあることですが、一番長い時間本人と一緒にいて世話をやいている人は、攻
撃対象にされます。これに対して遠くに住む実の娘がたまに訪ねてきたり、盆暮れ
の挨拶に孫を連れて来たりすると、おばあちゃんの顔色はがらりと変わってニコニ
コ顔で、娘の帰る後ろ姿を拝んだりします。これを見ていたお嫁さんはとても腹立た
しい気分になります。


⑨何でも他人のせいにする

  自分が失禁してしまい廊下にそのあとがあることを言われると「私じゃない」と言
い張ったり、置き忘れたのに「○○に盗られた」といい加減なことを言います。一緒
に捜してあげてなくしものが見つかったときには、まず「ごめんなさい」は出てきませ
ん。「泥棒がいつのまにか返した」とか「これはそっくりだけどなくしたものとは違う」
とほとほとびっくりさせられます。




⑩不機嫌な顔はすぐ伝わる

  認知症が進み、言葉が通じなくなり、表情もボ−ッとしていても、介護する人
の表情は不思議なほど良く伝わります。表情は顔だけでなく、 声の感じ、仕
草の表情も同じです。周囲の人々の気分が伝わると考えてください。家族の
安定が本人の安定をもたらします。