全国健康・体力つくり推進フォーラム2006
シンポジウム
「自分が遊べるもの ひとつ見つけよう―スポーツと体と脳の話―」
子ども時代の環境は重要
荻原氏の生まれは群馬県の草津温泉でスキーの盛んな地域、澤登氏も静岡県富士宮市というサッカーが盛んな地域の出身で、両氏とも子どもの頃から自然やスポーツに親しむ環境が周囲にあった。荻原氏は「自分が通っていた小学校の裏山にはスキーのジャンプ台があった」と述べ、環境がスポーツをする上で重要だと指摘した。
では自然環境にめぐまれない都会の子どもたちはどうすべきか。この点について宮嶋氏は「スクールに通わせてみるとか、ちょっとした距離なら車を使わず歩いてみるとか、大人が考えて少しでも子どもが体を動かせるような環境をつくるべき」と提案した。

[宮嶋泰子氏]
運動が脳を育てる
「子ども時代に体を動かすことが脳の発育には非常に大事なのではないか」という宮嶋氏の問いかけに対して、小林氏は「従来、脳の働きによって体が動くと考えられてきたが、最近の研究では、逆に体を動かすことが脳を育てたり脳の動きを高めたりしていることがわかってきた」と説明。特に、複雑な運動やバランスの取りにくい運動が脳の動きを活発にすると述べた。
小林氏はさらに、体幹に近い部分のトレーニングが脳の動きをより活性化させ、スポーツのパフォーマンスを上げることを指摘(図1)。これは、腸腰筋、脊柱起立筋、内転筋などの体幹深部への刺激により、脳→脊髄→運動神経の回路の繋がりが良くなるためだという(図2)
「体の深い部分を動かすことが脳に良い影響を与え、さらに思考・判断の向上、集中力・意欲の向上、社会性の向上に繋がる」と説いた。

[小林寛道氏]
[図1 50m走のタイムの変化(平均値)]1泊2日の体幹トレーニングにより、学生の 50m走のタイムは平均0.2秒も短縮した。 |
[図2 運動が脳を育成する] |
スポーツと社会性
また、小林氏は「スポーツをする人としない人には社会性などに大きな差がある」と述べ、運動しない子どもの増加が「引きこもり」などの青年期の問題にもかかわっている可能性を指摘した。
これを受けて荻原氏は、ユーモアがあって協調性のある選手ほど好成績を残す人が多く、逆に性格の暗い選手は伸び悩んでいたと現役時代の経験を述べ、社会性がスポーツ選手のパフォーマンスとも関係していることを述べた。澤登氏は「小さい頃からのチームプレーによって、コミュニケーション能力を自然と培うことができた」とし、スポーツが社会性を養うのに役立つことを強調した。

[荻原次晴氏]
中高年期のスポーツは楽しくつきあう
「高齢社会では中高年のスポーツが重要ではないか」との宮嶋氏の問題提起に対して、小林氏は「これからの高齢者は、これまでの高齢者と違う」と強調。これからの高齢者は、「いわゆる団塊の世代であり、スポーツの面白さを知っているため、スポーツに対する欲求がとても強い」と述べ、これからはスポーツを楽しむ高齢者が増えてくるだろうと展望した。
また、「中高年のスポーツではモチベーションの維持が大切になるのでは」との宮嶋氏の問いに対して、荻原氏は「自分が楽しいなと思えるものは上達する。トレーニングと思わず、日常生活の中でも階段を登るなど運動量は増やせる。スキーは、若い頃に楽しんだ方が増えてきている」と提案。一方、澤登氏は「中高年も気軽に楽しめるフットサル場も増えてきている」と、中高年がスポーツに取り組みやすい環境が整いつつあることを指摘。「中高年対象のサッカースクールもあるので、無理せず楽しく取り組んでほしい」と、中高年のスポーツへアドバイスをした。

[澤登正朗氏]
身近なところでマイスポーツを
さらに小林氏は、日本をスポーツ社会にしていくためには、大型のスポーツクラブではなく、小さくても家の近くに手軽に健康づくりやスポーツができる場所を作るべきだと述べた。現在小林氏は、10坪の広さのスポーツジム(通称「トツボジム」)を、柏市内に今後2〜3年で40か所作る計画を進めている。こうしたコミュニティ再生を意識した居住密着型の健康づくりが重要ではないかと提言した。これを受けて宮嶋氏は、「総合型地域スポーツクラブがめざす、成人の50%が週1回スポーツをできる環境づくりの早期実現が望まれる」と締めくくった。
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[図1 50m走のタイムの変化(平均値)]
[図2 運動が脳を育成する]