全国健康・体力つくり推進フォーラム2007
- 開会式典
- 体力つくり優秀組織表彰
- パネルディスカッション〈前半〉
- パネルディスカッション〈後半〉
- まとめ
パネルディスカッション〈前半〉
[司会]
宮嶋 泰子氏(ジャーナリスト)
[パネリスト]
鈴木 隆氏(文部科学省)
浅川 京子氏(農林水産省)
田中 弘之氏(厚生労働省)

【宮嶋】 今日は、体力つくり国民会議関係省庁ということで、3つの省庁のそれぞれのご担当の皆様が集まってくださいました。これからパネルディスカッション前半といたしまして、この各省庁でどのような施策を行っているのか、そしてこれからの問題点には、どのようなことがあるのかということをお話しいただきます。元々、この体力つくり国民会議というのは、昭和40年に何と9つの府省庁からつくられたそうなんですね。もとになったのは、昭和39年。昭和39年といえば、東京オリンピックの年ですね。東京オリンピックのときに「わが国民の健康・体力は食生活の改善、保健・衛生思想の普及、体育・スポーツの振興等により、逐年、改善の方向には向かってはいますが、いまだ諸外国の水準に比べてなお、立ち遅れている」ということを認識したことによって、体力つくり国民会議がつくられたということなんですね。
こうやって文部科学省、農林水産省、さらには厚生労働省というような各省庁を横断した形での会議というのは、今では本当に珍しくないんですけど、当時としては他にこんなものはなかったので、いかにこうした国民の体力つくりというのが大きな問題だったかということがわかります。
その当時としての問題は、まだまだ諸外国に比べて劣っているということでしたが、今はちょっとテーマが違っているのかもしれません。メタボリック症候群などと言われているかもしれませんけれども、そのあたり、今どうなっているのかということも含めてお話を聞きたいと思います。
それではまず文部科学省から、鈴木隆さん、よろしくお願いいたします。

「早寝早起き朝ごはん」と子どもの体力つくり
【鈴木】 文部科学省では、昭和39年から毎年、体力・運動能力調査を実施しておりますが、最近の子どもの体力は危機的レベルであるとか、さらには運動不足が定着ということであるとか、子どもはもっと運動しなきゃいけないんじゃないかとか、いろいろな記事が新聞などで取り上げられております。
子どもの体力のピークといわれている20年前の昭和60年と、現在の小学校6年生を比較しますと、身長、体重あたりの体格面はかなり向上していますが、体力のほうは当時と比べて低い水準になっております。特に体力の高い子と低い子、この格差が拡大している状況にあるのかなと思います。これが将来的にどういう意味を持つかというと国民全体の体力が低下するという恐れがあるわけです。そうすると、生活習慣病が増える、ストレスに対する抵抗力が低下する、健康に不安を抱える方々が増えるといったような様々な影響が懸念されるわけです。

子どもの体力低下の原因についてはいろいろ議論がありますが、大きく3つ挙げると、1つは子どもたちの外遊びやスポーツの重要性が軽視されているということがあるのではないかと思います。2つ目には都市化や生活の利便化による生活環境の変化。3点目として、睡眠や食生活などのいわゆる生活習慣の乱れ。こういった諸々の要因が関係して、子どもが体を動かす機会が減少しているという状況にあるのではないかと見ております。
少し細かく見ていきますと、小学生の運動量ということでは、昭和54年は、子どもの1日の歩数が1日平均で2万7,000歩強でした。若干古いデータですが、平成11年は1万7,000歩ということでかなり減少しています。それから同じく外遊びの時間を比較しても、現在では半分ぐらいになっているというデータがございます。また、子どもと一緒に体を動かしたり、スポーツする機会の頻度について保護者の方に聞いたところ、「全くない」それから「年に数回」という方が6割ぐらいなんですね。「ほぼ毎週」という方は14%でかなり少ないという数字になっております。

さらに、今の子どものスポーツとか外遊びの環境について聞いてみると、昔と比べて6割強の方が悪くなったと回答しております。では、どんなところが具体的に悪くなったのか、大きなところを3つ挙げますと、1つは「子どもが自由に遊べる空き地などが少なくなった」という回答が7割強。それから「スポーツや外遊びの時間が少なくなった」という回答が5割近く。さらに「仲間がいない」という回答に4割強の方。言い換えると「空間」「時間」「仲間」といった「3つの間」が具体的に悪くなったという状況でございます。
このような背景がございまして、文部科学省ではスポーツ振興基本計画の中の政策目標の第一の柱として、子どもの体力向上ということを、昨年の9月の改正の時点で新たに設けました。スポーツの振興を通じて、子どもの体力の低下傾向に歯止めをかけ、上昇傾向に転ずることを目指して取り組んでいるわけです。子どもの体力の重要性について正しい認識を持ってもらうための国民運動の展開、それから学校と地域の連携で子どものスポーツ環境の充実、こういうことを狙いとしているわけでございます。
では、子どもの体力向上のためにどうしたらよいかというと、1つはやはり運動習慣を、さらに広い意味では生活習慣を改善していくということがあるかと思います。適切な運動をするために、先ほど申し上げたような3つの「間」の問題を解決していくことが大事だろうと思います。具体的には、保護者の方にも体を動かすことの重要性や、親子で体を動かすことの楽しさを感じていただく「元気アップ親子セミナー」、有名スポーツ選手の方に直接子どもたちを指導していただく「ふれあい指導授業」そういった取り組みを進めております。それから子どもからお年寄りの方まで、いつでも、どこでもスポーツができるということで、総合型地域スポーツクラブの展開を進めているところでございます。
生活習慣の観点では「早寝早起き朝ごはん」運動の展開ですね。これについては昨年の4月から全国協議会を設立して本格的にスタートしております。また、小学校を中心とした子どもの体力向上に関する取り組みを実践校で平成16年度から進めてまいりました。この中では運動習慣であるとか生活習慣、それから保護者の意識の高揚ということを目標に進めまして、新体力テストの得点がかなり上がり、生活習慣も改善されて、運動する機会も増えるといったいい効果が出てきたわけでございます。
子どもの体力向上実践事業を通じた今後の課題ということでは、地域ではさまざまなスポーツ関係団体が子どもの体力向上についていろいろな取り組みをしているので、そのような取り組みの相互の関連性が構築できると、効果はもっと上がるだろうなという声が出ております。それから、3年間のプロジェクト後も息切れしないで継続していくためにも、学校、家庭、地域が連携して取り組んでいく、そのような体制づくりが必要だといったご指摘をいただいております。
このような課題を踏まえて、今後の取り組みとしては学習指導要領の見直しをご議論いただいているほか、体力・運動能力向上に向けた調査分析、地域連携強化事業、トップアスリート派遣指導事業等を新たに立ち上げ、推進していきたいと思っております。


地域も含めまして、ようやく我が国全体として、子どもの体力の向上ということについて本格的に取り組みが始まったかなというような印象を持っておりますけども、今後とも頑張ってまいりたいと思います。
【宮嶋】 ありがとうございました。ちょうど去年の4月から「早寝早起き朝ごはん」国民運動の全国展開がありまして、それから去年の9月にはスポーツ振興基本計画の中に、子どもの体力向上という項目がつけ加えられました。これはほんとうに画期的だなというか、今いかにこの問題が大きくクローズアップされているのかということを私たちも痛感せざるを得ないような出来事だったんですけれども、いよいよ本格的に、このムーブメントが動き始めるということです。
さあ、続きましては農林水産省、食育の視点からということで、消費安全局消費者情報局、浅川京子さんからお願いいたします。
食育の観点から
【浅川】 私からは食育を通じた健康づくりという観点から、お話しさせていただきます。もともと日本の食生活というのは、地域でできた旬の食べ物を使った、バランスのとれた食生活が営まれてきたわけなんですけれども、ここ最近の社会経済情勢の変化に伴いまして、幾つか健康にも影響があるような食事の乱れというのが起きてきております。具体的には栄養バランスの乱れということで、ほぼ全世代で肥満の割合が増加しています。また、不規則な食事が増えて食生活が乱れてきております。これに対応するために、国に求められておりますのは、食に対する正しい知識をつけて食生活を改善してもらうということ。それから農林水産業とか食品産業といった、食べ物がつくられる過程というのをよく理解してもらって、食べ物を大事にするという心を育んでもらう。また、地域のすぐれた食文化も理解を示してもらう、そのようなことがあるわけであります。

まず食生活を変えるための国の施策についてご説明をいたしますと、平成12年の3月に文部科学省、厚生労働省、農林水産省で、食生活指針というものをつくりました。規則正しい食事をする。バランスのとれた食事をする、また食塩や脂肪は控え目にとるという食事の摂り方の問題。それから日々の活動に見合った食事量をして欲しいということや、食文化も理解してくださいというようなことが盛り込まれております。
しかし、最近は自分で料理をしない人が増えてきておりまして、この食生活指針を唱えても、なかなか具体的に実践に結びつかないという問題が起きておりますし、また、この指針だけ見ても、何をどれだけ食べたらいいかわからないという意見が増えてきております。そのような声に応えまして、平成17年6月に、農林水産省と厚生労働省で共同いたしまして、「食事バランスガイド」というものを新しくつくりました。この「食事バランスガイド」はコマの形をしていて、上から主食、副菜、主菜、牛乳・乳製品・果物といった順番に、1日にとるべき料理の構成が書いてあります。また、コマに一番大事な軸の部分は「水」という構図になっていますし、嗜好品については「ひも」という扱いにしております。また、やはり健康のためには食生活だけではなくて運動も必要だということで、コマの上で人が走ることでコマを安定して回すことができるということを示しております。
私たちは「食事バランスガイド」のPRに当たって、ご飯を中心としていろいろなおかずを組み合わせた「日本型食生活」というものを強く意識してPRしています。農林水産省の立場から言いますと、日本型食生活を広めることで、地域の農林漁業への理解も深めて、また地域の食文化をも受け継いでもらいたいという気持ちも込められています。
また、地域の特色に応じた普及というのも行っております。例えば、農林水産省の事業でモデル地区として行なっているさいたま市と大阪の高槻市では子育て世代のお母さんとその子どもをターゲットにしたいということで、幼稚園や小学校といったところを使って「食事バランスガイド」のPRというのを行ったり、また、世田谷区などでは学生さんが多いので大学祭で「食事バランスガイド」を広めるといった活動を行っております。また、沖縄県のある企業ではこの「食事バランスガイド」のPRと、ウォークラリーといった運動を組み合わせて健康づくりの宣伝をしているという例もあります。
さらに、地域ごとの「食事バランスガイド」も作成をしていただいております。例えば徳島では、コマを走らせる「運動」として阿波踊りの人が踊っておりますし、真ん中のメニューも徳島の郷土料理が入っております。また、この徳島は、小学生用と中学生用ではとるべき食事の量が違ってきますので、きめ細かく年代別のものもつくっています。
また、私たちは「食事バランスガイド」の普及とあわせて「農林漁業体験」というのも行っております。子どもが食べ物をつくる過程を体験することで、どのようにして食べ物がつくられるのかということを理解してもらい、こんなに苦労して食べ物ができているんだよということを実感してもらうことを目的としています。「教育ファーム」という取り組みは、子どもとその親御さんが、地域の農林漁業者の人にいろいろと教えてもらいながら、食べ物のできる過程を体験してもらうというものです。やはり子どもだけが参加するよりも、保護者の方も一緒に共感してもらうことで、より子どもに食べ物の大切さというのを理解してもらえるという効果があるということです。
また、文部科学省と連携をいたしまして、学校給食に地場の産品を使うということも進めております。この取り組みは子どもたちが身近に地域の自然や、産業、文化というのを感じることで、地産地消ということにもつながると思っておりますし、先ほどの「教育ファーム」という体験活動と結びつけることで、より教育的な効果も上がるのではないかと期待しております。
政府では食育推進基本計画という計画を平成18年3月に策いたしまして、平成22年度までの目標をつくっております。特に健康に関することでは、朝食を食べない国民の割合を減らしましょうということです。子どもについてみるとは平成12年度は小学生の4%が朝ご飯を食べていないというデータがありますが、それを22年度までにゼロにしましょうという目標を立てております。また、「食事バランスガイド」などを参考にして、バランスのとれた食生活を送る人たちの割合を60%にするといったような、様々な目標に向かって各省庁が連携して食育を進めております。
私たちは、このような食育の取り組みを通じまして、これらの目標を達成するとともに、国民の心身の健康ということを実現したいと考えております。


【宮嶋】 ありがとうございました。文科省、農水省と来たら、今度は厚労省。「子どもの体型と生活習慣の状況」ということで、健康局総務課生活習慣病対策室栄養食育指導官の田中弘之さんにご発表いただきます。よろしくお願いします。
子どもの体型と生活習慣の状況
【田中】 私ども厚生労働省では毎年11月、全国300単位地区を無作為抽出いたしまして、食物摂取状況調査と、身体状況調査、食生活状況などを調査する国民健康栄養調査を行っておりますが、特に平成17年のときには特に子どもについての食生活状況調査をやりました。その結果からご説明しますと、まず子ども体型の状況では、小学校1年生から中学生で、男女ともに2割から3割が肥満、太り気味、あるいはやせ過ぎ、やせ気味といった状況にあるというのがわかっております。そしてその年次推移を見てみると、男女ともにだんだんと普通の者の割合が減少傾向にあり、二極化が進んでいるのではないかと推測されるわけです。
次に運動状況の年次推移ですが、平成17年の状況を見てみますと「よく運動する」と回答した者が、男子の場合はどの年齢でも50%程度いるわけです。また女子については小学生で30%ぐらい、中学生だと約50%ぐらいという状況です。年次推移で見ていくとだんだん増える傾向にあります。次にスポーツ活動状況の年次推移ですが、学校、地域、民間のスポーツクラブなどで週3回以上運動している人の回答の割合は平成5年と比べて男女ともにいずれの学年においても増えています。特に中学生男子では7割強、女子では5割以上の子どもたちが週3回以上スポーツ活動をしているということです。

次は、食事の話ですが、朝食の欠食率の年次推移です。朝食については、昭和63年、平成5年、17年においても、大体9割程度は朝食を毎日食べているというような回答になっておりますが、中味をよく見てみますと、朝食を子どもだけで食べる者の割合が、だんだんと増えてきていて、特に平成17年度では、すべての学年において4割を超えています。また、朝食を子どもだけで食べる者のうち、子ども1人で食べる者の割合については、小学生で1割強、中学生に至っては4分の1というような状況にあります。
次は夕食をとる時間帯の年次推移ですが、夕食を遅い時間に食べる子どもの割合がだんだん増えています。特に、8時以降のところが平成5年に比べて17年はかなり増えていて、約7.1%くらいになっているという状況があります。そのような中で「お子さんの現在の食習慣について改善したいと思いますか」と保護者に聞くと、6割ぐらいの方が「改善したいと思っている」ということが結果から読み取れます。
次に、そのような状況の中での厚生労働省の食育の取り組みについてお話をさせていただきます。厚生労働省では3つの柱で食育を推進しています。まずは国民の健康づくり運動である「健康日本21」、それから「子ども・子育て応援プラン」に基づく食育の推進、3番目には食品の安全に関する情報提供ということです。
「健康日本21」におきましては、9分野70項目についての目標を立てて、それを推進しています。来年度から始まるメタボリックシンドロームに着目した検診、保健指導を推進していくというものもございます。このメタボリックシンドロームについては生活習慣の改善や運動の習慣の徹底をきちんと行っていくことで、内臓脂肪を減らしていこうというもので、「1に運動2に食事しっかり禁煙最後にクスリ」というようなスローガンを現在進めているわけです。
「健康日本21」の中間評価の報告書によると、疾病につては脳卒中とか虚血性心疾患についての改善の傾向は見られましたが、高血圧とか糖尿病患者というものが増えているというような指摘がありました。また歩数の減少や、肥満の増加というような指摘事項がありまして、今後の施策としては、国民運動を推進するポピュレーションアプローチと、検診結果などからターゲットを絞った健康づくりを推進するハイリスクアプローチのこの両輪から国民の健康づくりを推進していこうとしているところでございます。

具体的には、今まで「健康日本21」で、9分野70項目に渡って立てていた目標値が非常にわかりにくかったということから、運動、食事、禁煙といったものを重点化しまして、それに絞って国民運動を推進していきます。
もう1つは国民運動の着火点として、子どもの食育にも着目していこうということで、今回「健やか生活習慣国民運動」というものを、まず第1弾として取り上げているわけでございます。その他、先ほど農水省さんからもお話がありました「食事バランスガイド」の普及とか、また、食生活改善推進員の方々のお力添えをいただいて、家族や仲間と一緒に食事づくりや、その食事を一緒に楽しむというような、食に対する理解を深める運動を現在行っております。
「子ども・子育て応援プラン」に基づく食育の推進として、具体的には子どもの食に関する支援のマニュアルづくりや、乳幼児栄養調査の結果を広くお知らせしたり、また妊産婦のための食生活指針、授乳の支援ガイドといった、そういったポピュレーションのツールを普及しております。また、保育所指針に食育の推進計画を立て、園児が収穫や調理をする、といったように食べ物に実際に触れて、体験するといった活動を広げるように活動しているところでございます。
最後に食品の安全に関する情報提供ということで、きちんと食品に対する理解を進め、それによって消費者がきちんと選択できるようにしていくことを進める。また、意見交換会の開催でいろいろな意見を取り入れて食品の安全を進めたり、ホームページ、パンフレットの作成などを通じて皆様方に情報発信をしているという状況でございます。
以上、厚生労働省の簡単な取り組みでございます。どうもありがとうございました。


【宮嶋】 ありがとうございました。
以上お3人からご紹介いただきましたように、それぞれの省庁の施策、それからこれからの問題提起ということなんですけれども、やはり問題となる子どもたちが抱えているものは、本当に同じで、そこに各省庁がどうやって取り組んでいるかという皆さんのご苦労、そしてご努力というのが見えてくるような気がいたしました。
これで前半の、それぞれの取り組みのご紹介を終わりまして、この後はそれぞれをちょっと詳しく、いろいろな立場から分析していく作業に入りたいと思います。

