全国健康・体力つくり推進フォーラム2007
- 開会式典
- 体力つくり優秀組織表彰
- パネルディスカッション〈前半〉
- パネルディスカッション〈後半〉
- まとめ
パネルディスカッション〈後半〉
[司会]
宮嶋 泰子氏(ジャーナリスト)
[パネリスト]
津下 一代氏(あいち健康の森健康科学総合センター副センター長)
松尾 哲矢氏(立教大学コミュニティ福祉学部教授)
荻原美樹子氏(ジャパンエナジー/元バスケットボール日本代表選手)
服部 幸應氏(学校法人服部学園理事長兼服部栄養専門学校校長)

【宮嶋】 前半では子どもが抱える現代のさまざまな問題に、それぞれの省庁が「あ、こんなふうに取り組んでいるんだな」ということを、ご理解いただいたと思います。私など「いや、何か同じようなことを、みんなそれぞれの省庁でやっているんだな、税金は大丈夫なのかな」と、ちょっと心配になってしまいましたが、そのあたりを伺ってみましたら「いや、お互いに実はかなり手をとり合って、一緒に連携してやっているんですよ」というお話があったので、少し安心いたしました。
それでは、この後半部分ではそれぞれの分野でご活躍の方々に、今の子どもたちの問題点、それから、どのような取り組みがなされているのかというようなことに関してお話を伺いたいと思います。
まずは最初に、津下先生、お願いいたします。
健康づくりのベースを子どもの時期に
【津下】 私は愛知県の健康づくりの拠点としての「あいち健康プラザ」というところで、子どもから大人、そしてお年寄りの介護予防まで、幅広く健康づくりの活動をさせていただいております。今日はその中の子どもの体力や健康づくりに関する話題、特に中学生はかなり健康、体に対して関心を持つ時期でもありますので、そこに対する取り組みの内容も少し詳しくお話をさせていただければと思います。
「あいち健康プラザ」では、愛知県下の中学校、小学校の多くと連携をしながら、子どもの健康づくり推進活動を行っております。プラザには健康科学館という、健康に関する情報をディスプレーしたり、体験型学習ができる施設がありますが、小・中学に出向いて出前講座のような形でも健康教育をさせていただいております。学校から要望がありますと、どのようなテーマに関心があるのかというアンケートを対象者に実施して、その結果からそれに合わせたプレゼンテーションを作成して、健康教育を実施し、そして後にまたもう一回生活の調査をさせていただいて、その結果を展開の反省につなげながら支援を進めさせていただいております。

私たちは児童・生徒達にずっと関われるわけではなくて、スポット的に先生方のお手伝いをするという形になりますので、やはり動機づけというのが一番大きな役割であろうと考えております。この動機づけをするときに、低学年の場合はイラストを中心にしたりゲームやクイズをやりながら、健康だとか、食べ物や運動、体の構成に興味を持っていただくということを中心にやっております。高学年になってきますと、自分たちの生活習慣は国のデータと比べてどうなの、何々小学校の子どもたちの暮らしぶりはこうなんだよとか、運動はいいけど朝御飯の欠食が多いねとか、身近なデータを持って考えてもらうような時間をとっています。そして中学生になりますと、もう少し詳しく体のメカニズムを知って、それと生活習慣とを結びつけた形でやっていくために、例えば骨粗鬆症の話とか、メタボリックシンドロームの話とかを入れながら、今だけではなくて10年後、20年後、お父さん、お母さんになり、おばあちゃんやおじいちゃんになる世代も見越した健康づくりということを、考えてもらうことになっております。


そのために、小学校の低学年へ健康教育を行うときには、できるだけ保護者同伴、家族ぐるみで行なうことを中心にしています。講義を聞いて「今日、お話聞いたよね。」「今日はお野菜が多いよね」といったコミュニケーションが家庭でもとれるような仕掛けが非常に大事だと思いますので、お母さん方、または3世代で来ていただいて、みんなで健康のことを考えて欲しいと思います。そして高学年になりますと、徐々に保護者から離れていく年代になっていきますので、自らの生活習慣を振り返る時間、そして保健体育・家庭科、総合学習の時間に関わらせていただくことが多くなります。さらに中学生になりますと、自発的にこういうことに関心がある子どもたちと、総合学習として一定の期間ずっと一緒に関わっていくような形でやっております。
具体的に総合学習の時間に関わらせていただいた例をご報告します。中学校の12回の総合学習の授業の中で、健康づくりの知識を得ること、実践すること、そして学んだことを人に伝えることを目標とした授業を行いました。健康ってどうして必要なのということや、運動というと競技力だけに目が向きがちな子どもたちが、うまい下手ではなくて運動していることがすばらしいというような観点を持てるように、運動の必要性をディスカッションして、大人になったときの自己イメージを持ってもらうようなことも話し合いながら、「だから、今の食事や運動が大事なんだね」ということを確認しております。さらにはアルコールだとか、麻薬・覚せい剤とか、ちょっと刺激的なテーマも入れながら、関心を引くような形でカリキュラムを組んでおります。
また、健康感についてたずねると「すごく健康だと思う」、「健康な方だと思う」という回答が80%なんですけれども、20%の子はちょっと健康感が落ちているなとか、中学校3年生ですからちょっと大変だったかもしれませんが寝不足だったりとか、学校の休み時間は運動していない子が多いなとか、そんな日常生活を振り返っています。さらに、体に関する関心や、食事や運動に気をつけた結果、何が異なってくるのかという話につなげていくために、例えば、体をつくるためには大事なのは栄養と刺激で、食事をきちっと食べて運動して刺激があると、骨量がしっかりした骨になるけれども、栄養がバランスが悪かったり、それから、骨に運動という筋肉の刺激が加わらないと、スカスカの骨になっちゃうねというような骨粗鬆症の話を話しながら、体をつくっている時期が今なんだということを、子どもたちに印象づけております。
それから、最近話題のメタボですけれども、心臓のカテーテル検査で9割狭窄している写真を見せています。動脈硬化というのは知らず知らずに血管が痛んでいき、七、八割詰まっていても症状がない人がとても多いわけですから、突然、心筋梗塞、脳卒中につながってくるわけです。そういうことから血液がドロドロになるとか、血管が詰まってくるということを学習して、そのときの内蔵脂肪のCTの写真から、皆さんが食べて飲んで運動しないと、余分なものは脂肪の細胞に蓄えるので、もともと小っちゃかった脂肪細胞が風船みたいに大きくなるんですよということを見せています。さらには、そのことが糖尿病や高血圧につながるので、エネルギーのバランスをちゃんと考えることが大事ですねという話をして、栄養バランス診断のソフトで自分がどんな食べ方をしているのかな、これでいいのかなという確認をして、ポイントをまとめます。
このように学んだ結果を子どもたちがそれぞれの視点でまとめて「健康づくりを学ぼう、伝えよう」という冊子にして、図書館等に設置していただいています。また、健康づくり宣言カードに今後の誓いを記入してもらいます。「たばこと酒には手を出さないことを誓います」とか、「死ぬまで健康」とか、「麻薬に手を出さない」とか元気よく書いていて、中学生って結構素直なんだと、逆にびっくりしていますが、私たちのあいち健康プラザでは、成人式をやることになっていまして、おそらくこの子たちが5年後には成人式に来ると思いますので、そのときに今回の健康づくり宣言カードを手渡して、二十歳からがこれから自分で健康づくりをしていかなければいけませんので、二十歳になったときに15歳のときの誓いを思い出していただければと考えております。

大人を対象にした糖尿病予防、メタボリックシンドローム予防なども主な活動としてやっておりますが、やはり大人になってから今まで身についた生活習慣変えるのは、大変難しいなと感じています。子どもの時代から食事や運動、健康管理、そういうスキルを持った方々というのは、ちょっとぶれてもすぐ戻れるんですが、なかなか悪習慣の根が深い方は修正に時間がかかったりしますので、健康づくりは本当に子どものうちから始めたほうがお得だなと感じております。
そういうことで、子どものころからずっと生涯を通じた健康づくりのピラミッドのベースになる非常に大事な時期に体を大事にすることを、できるだけいろいろな機会に子どもたちに伝えていければと感じております。
【宮嶋】 ありがとうございました。各学年に合わせてオーダメイドで教えていくという方法が、何かとても魅力的だなと思いました。保護者同伴というのも素敵ですね。何より中学生のときの「一生たばこを吸いません」という誓いを、あの成人式のときに渡すというのは、なかなかすてきなアイデアだなと思いました。
続きまして、立教大学のコミュニティ福祉学部教授でいらっしゃいます松尾哲矢さん、お願いいたします。
身体の感覚を大事にする体力つくりを
【松尾】 私の方からは「今の子どものここが変」というところと「じゃあ、どうすればいいの」というお話を整理してみたいと思っています。
先ほど鈴木参事官のほうからも報告がありましたけれども、今の子どもは非常に体格が大きくなっているというお話ですよね。しかし一方で、20年前の人たちと50メートル走をすると、男性で0.15秒、女性で0.18秒も負けちゃいます。それで、次にボールを投げてみると、20年前の人たちよりも男子が4.2メートル、女性が2.9メートル短くしか投げられないということで、雪合戦をするとだいたい20年前の人が勝ってしまう、というような状況になっています。
また、ほとんど朝食を食べない人の体力テストの点数が、やっぱり低くなっています。そして寝る時間が少ない子ほど低くなっているような状況にあるんですね。ですから、やはり私たちは体力や子どもの健康というのを考えるときに、1つだけとらえてはどうもやっぱりまずいんじゃないでしょうか。つまり運動だけやればいいとか、食生活だけやればいいとか、睡眠時間さえしっかりとればいいということではなくて、やっぱりそれぞれの連鎖をつくり上げていくことが大切なのではないかと思います。


それだけではないんですね、「ここがおかしい今の子ども」というところで見ますと、小学生の顔面のケガがここ30年ぐらいの間に1.5倍ぐらいに増えているんですね。顔面のケガというのはいろんな状況で起こるわけですが、原因としては転んだときに手が出るかどうかということが多くなっているようです。そこからも、基本的な走る、投げるとかいう問題と同時に、動きながら自分の体をコントロールするというような能力が非常に落ちている可能性が高いということがわかるかと思います。
「最近増えているワーストテン」という、子どもの体の調査から見てみますと、1978年では「背中ぐにゃ」、「朝からあくび」、「アレルギー」云々とかあるわけです。ところが、2005年は「アレルギー」とか「背中ぐにゃ」はわかるんですが、「授業中じっとしていない」とか、「すぐ疲れたと言う」というような、要するに自分をコントロールできないような結果が出ています。もっと別な言い方すると、いわゆる感覚統合みたいな力が弱くなっている可能性がありますし、もしかすると感覚自体が弱くなっているかもしれません。そのあたりがどうもとにかくじっとしていられないということと関連しているんではないかという気がしているわけでございます。
それはまさに遊びとの関係が当然大きいわけでございます。先ほど3つの「間」がない(時間がない、空間がない、仲間がいない)ということを、鈴木参事官もおっしゃっていましたけれども、そういう元になっているのは遊びのスタイルですよね。30代以上は、野球だ、縄跳びだ、かくれんぼだという遊びをしていたのですが、今は、テレビゲームが一番になっているわけでございます。携帯とかパソコンが、まだできて15〜6年です。ところが、今パソコンを使っている人が6割以上います。携帯なんかもう8割以上です。つまりこの十何年間、そういったいわゆる個人化、機械化というものが生活スタイルとして入ってきて、子どもの遊びの室内化、それから、少人数化ですかとか機械化とか、こういったものがベースになって、そういう感覚のずれなんかを起こしている可能性があるわけです。
次は夜更かしです。夜更かしの理由を見てみるといろんなことがあるんですけれども、「何となく夜更かしをしてしまう」という回答が一番多いんです。これは一体何だろう。最近の子どもでは眠たいんだか何なんだか、よく自分の中でわからないような感じの子どもが増えているのではないかということです。
今まで私たちは子どもの体といったときに何か生理学的な骨とか筋肉を主に見てきました。もちろんものすごく重要なんですけれども、ちょっと角度を変えてみて、もしかすると人間の身体の感覚とか、身体意識までも含めた体というのを考えてみると、今の子どものおかしさが非常によくわかるような気がしているのです。
例えば視覚障害の方が杖をつきながらとても早いスピードで駆け抜けていったりするのをご覧になったことがあるかと思います。その方たちにお話を聞いてみますと、ずっと杖を使っているとその杖の先が自分の指先のように感じて、身体の感覚が自分の手を抜け出して、杖を通って杖先まで行っている、こういう感じになっているという話なんです。つまり感覚は延びたり縮んだりするという話かもしれない。もっと別な言い方をすると、テニスとかなさる方はおわかりかと思いますが、最初ボールが当たらないですよね。もうラケットなんか要らないと思うわけですが、仕方ないからラケット持ってやっていると、だんだんと当たるようになってくる。もっとうまくなると、どんなふうに当たったかわかるようになってくる。「あ、今のは入る」とか「入らない」とかも含めて、手のひらの感覚がラケットの感覚と同じような感じで、つまり感覚が延びたといえる可能性があるんですね。つまり感覚が手までずーっと延びて、ラケットまで延びて、もしかするとコートの中まで延びている可能性がある。感覚が広がっている可能性があるんですね。
それは日常生活でも同じで、お風呂も気持ちがいいとどんどん自分がお湯になっていくかのような、あるいは、音楽をやっている人はあたかも自分がオタマジャクシになったかのような感じで音楽になっていく。あるいは、波乗りも最初はボードに合わなくて波に揺られているんですけれども、やがては上手になると波と一体化して、自分があたかも海になったかのような気がすると言う人がいます。これはとても大事です。ベルクソンという人は、人間が生きてて気持ちいいと感じるときというのは、自分の感覚が広がって自然の一部になった自分を自覚したときに、強烈な快感をもたらすというふうに言っているんですね。それが生きるエネルギーにもなっていく。

そういうふうに考えますと、今の子どもはどうやら眠たいのか、疲れているのかどうかわからないとか、時間が来たから食べるみたいとか、何か自分の感覚とか感性みたいなものから出発しないで、誰から言われるからやるという感じになってしまっている可能性があります。また、友達も感覚で「何か言葉は通じないけど気が合うよね」みたいな、そういうことってあるじゃないですか。そういうところでもなかなか自分の感覚が延び切れてないので、何か一体化するような感じをなかなか受け入れなくて、友達ができにくいのではないでしょうか。自分の感覚をコントロールできない、感じられないということが実はそういういろんな行動につながっている可能性があるんじゃないかと思うのです。
運動とかスポーツというのは、身体感覚をもとにして広がりをもたらすような活動です。後でバスケットボールのお話しあるかもしれませんが、ボール1つで「我々は1つだ」みたいなことを、容易に感じることができるわけですね。だから、運動して心拍数が上がるとか筋肉が強くなるとかそれはもちろん重要なんですけれども、身体感覚を含めて体がどんどん広がっていって、それが自然の一部になるような感覚をもたらすような体づくりというか、そういったものも私どもは視野に入れながら、健康、体力づくりの問題を考えてはどうかと思います。

その取り組みのひとつが「アイーダアイダ」です。「アイーダアイダ」というのは自分の身体感覚が延びて、延びて、相手とも一体化できるような体操をつくろうということで、文科省さんを中心にしながら作って、NHKさんと一緒にやってきました。そのときに、どうやら子どもだけで考えるのではなくて、やっぱり先ほど津下先生の話もありましたが、親御さんと一緒にやったほうがいいんじゃないかということで、「元気アップ親子セミナー」というのを、今、文科省さんと一緒にやらせていただいています。その参加者の保護者の皆さんに「あなたの子どもはどうですか?」と聞いたところ、自分が運動している親御さんは自分の子どもの体力を高いと評価して、自分がやってない親御さんは低いと評価する。それから、いつも運動をしている親御さんの子どもは、定期的に運動をやっている子どもが多くて、「まあイベントだけかな」という人は子どもの運動もイベント主義。「ほとんどやってない」という人の子どもさんはほとんどやってないという結果でした。ああ、やっぱりそうかと思うのは、親御さんがどうするかということによって、子どもというのはどうにでも変わる可能性がある。また、逆もあるかもしれませんけれども、そういうことを含めて考えていく必要があるだろうということでございます。
我々は子どもの体ということを考えるときに、要するに肉体としての生理学的な意味での身体はもちろんそうなんだけれども、身体感覚とか身体意識も含めた体づくりといったものを、もっと日常的にできるような仕組みを、つくっていったらどうだろうと思うのです。それから、3省庁の方からもお話しがありましたけれども、食事や睡眠といった、先ほどから出ているような生活連鎖を、どうつなぐかということがこれからの重要な課題になってくるのではないかなと思います。
そして親が変われば子も変わるというこの仕組みをどうやってつくるのか。それが総合型地域スポーツクラブの展開ですとか、そういったものがこれからはもっとファミリーというキーワードで、展開していく必要があるんじゃないかなと思います。その場を考えるときに、その環境を考える必要があります。アフォーダンスという考え方がありまして、人は座りたいから座るんじゃなくて、いすが私を座らせるといった具合に、環境がその人をそういう行動にさせるという考え方なんです。草原があると思わず走りたくなる子どもがいるでしょう。遊具を置くることで「あ、遊具がある、遊べといってるのよ」というような、子どもがいっぱい遊べる空間づくりや環境づくりということが、ベースにないといけないんじゃないかなと感じているところでございます。
【宮嶋】松尾先生ありがとうございました。

それにしても、子どもの自分の体をコントロールする能力が、落ちているということで、顔面のケガが全負傷の43.7%というのには驚きましたね。そして身体意識が延びる感覚ですね、こういったものを含めて、これからちょっとウオッチしていったらいいんじゃないかというご提案、それから、親のスポーツへのかかわり方がそのまま子どもに投影される、ああ、さもありなんという感じでちょっと想像してしまいましたけれども、こういったことについて松尾先生には後で、また環境のお話などもお伺いしたいと思います。
続きまして、日本バスケットボール界のハギーといえば萩原美樹子さんです。今、津下先生、それから、松尾先生からいろいろなお話があったんですけれども、現場で子どもを教えながら、ちょっとこれは変だぞとお感じになる点がかなりあるんじゃないかと思いますが、ちょっとお話しいただけますか。
早期の専門化の問題
【萩原】 そうですね、今日は私がいつも見たり、子どもと実際に触れ合っている中で「いや、おかしいな」と感じていることが、今日こちらに来てデータで見せていただいて、「あ、私の感覚は間違ってなかったんだ」と感じることが多かったです。
具体的にはスキップができない子がすごく増えていると感じますね。これは非常に面白くて、バスケットボールというととても専門的な動きが多くなる競技ですけれども、練習の一番最初に体を温める運動をするんですが、「じゃあ、スキップしましょうね」なんて言うと、スキップができない子が非常に多いんですよね。ただ、これがバスケットボールのレイアップシュートという、ゴール下で走りながらシュートを打つというプレーを、これをやらせるともう大人顔負けのきれいなシュートを打つ子たちが多いんです。それなのに、スキップさせるとこれが本当に不細工なんですね。例えば私がやって見せたり、もっと親切に「左足が上がったら右手を振り上げるとやりやすいかな」なんて説明しながら、やってみせるんですけれども、何回自分の目で見ても自分の体で表現するということができないんですね。でも、この子たちがバスケットをやらせると、ものすごく上手だったりするのが、非常にアンバランスというか、何かおかしいなと感じます。ここ数年すごく増えましたね。

【萩原】 そうですね、今日は私がいつも見たり、子どもと実際に触れ合っている中で「いや、おかしいな」と感じていることが、今日こちらに来てデータで見せていただいて、「あ、私の感覚は間違ってなかったんだ」と感じることが多かったです。
具体的にはスキップができない子がすごく増えていると感じますね。これは非常に面白くて、バスケットボールというととても専門的な動きが多くなる競技ですけれども、練習の一番最初に体を温める運動をするんですが、「じゃあ、スキップしましょうね」なんて言うと、スキップができない子が非常に多いんですよね。ただ、これがバスケットボールのレイアップシュートという、ゴール下で走りながらシュートを打つというプレーを、これをやらせるともう大人顔負けのきれいなシュートを打つ子たちが多いんです。それなのに、スキップさせるとこれが本当に不細工なんですね。例えば私がやって見せたり、もっと親切に「左足が上がったら右手を振り上げるとやりやすいかな」なんて説明しながら、やってみせるんですけれども、何回自分の目で見ても自分の体で表現するということができないんですね。でも、この子たちがバスケットをやらせると、ものすごく上手だったりするのが、非常にアンバランスというか、何かおかしいなと感じます。ここ数年すごく増えましたね。
【宮嶋】 それはどうしてだとお思いになります。
【萩原】 やはり小さいころから専門的な競技をし過ぎるんじゃないかと私は思っております。バスケットボールの競技環境だけの話を申し上げますと、小学生ではミニバスケットボールというのをやるんですけれども、私たちの世代では小学校4年にならないとミニバスケットボールを始められません、あるいは、バスケットボールクラブに入れませんという時代だったんですが、今は少子化で子どもの数が減っているので、小学校4年生以上だとクラブで大会に登録するだけの子どもの数が確保できません。そのために、1年生から入れるクラブがほとんどなんですね。そうすると、小学校1年生とか2年生のようなとても小さな、自分の体よりバスケットボールのほうが大きいような子たちが、バスケットボールの専門的な動きをさせられてしまうんです。
例えばスキップをする、それこそさっきの松尾先生のお話のような草原を走るとか、何かそういったバスケットボール以外の動きをする前に、すごく専門的なものを初めからしてしまうので、特化した動きしかできないという状況になっているかなと。これはおそらくバスケットボールだけの話じゃないんじゃないかと考えています。
【宮嶋】 おそらく萩原さんはバスケットボールを始める小学4年生になるまでは、多分走り回っていらしたんでしょうね。
【萩原】 私、福島県の出身なんですけれども、回りが野山だったので、とにかく遊ぶものに事欠かないというか、夕方になるまで外で遊んでいる、小学校4年でバスケットで始めるまでは、ほぼ毎日そういう状況でしたね。
【宮嶋】 ですから、今の子どもたちというのは、萩原さんが小学校4年生までやっていた遊びの部分が欠落して、いきなりスポーツというものに持っていかざるを得ない状況にあるという?
【萩原】 そうなんですよね、おそらく遊び場が減っているということもありますし、バスケットでもサッカーでもそうだと思うんですけれども、お子さんたちに運動をさせようと考えるとスポーツクラブとかで、そういうところで運動する。逆にそういうところじゃないと運動ができない状況になっちゃっているのかなという気がしますね。
【宮嶋】 今、子どもの動きに関するお話だったんですけれども、現場からそういった動きの問題、それから、体型の問題、先ほどの基調講演の3省庁の報告にもあったのと、ほんとうにオーバーラップするようなお話がありました。そのほか子どもたちを取り巻く環境に関しましては、後ほどまた教えていただきたいと思います。
ここまでのお話をうなずきながら、服部先生はお聞きになっていらっしゃいましたけれども、食育の点から現状はどうでしょか。

食育の課題は3つある
【服部】 私は食育というのは3つの柱があるんじゃないかと位置づけています。1つは、どんなものを食べたら安全か、安心か、健康になれるかということを自分で選ぶ能力で「選食能力」と名づけています。これは消費者である我々が食べる物を選ぶときに、安全・安心・健康なものを選択する能力が必要だということ。
2つ目は、我々の食文化というのはやはり食卓が非常に重要だということをいつも考えておりまして、今日もお話がそれぞれ出ましたけれども、0歳〜3歳、3歳〜8歳、8歳〜14歳、そして0歳〜20歳までというのは、非常に重要なポイントの数字だと思うんです。私は今から19年前にうちの学校の、入ってきたばかりの新入生に1週間の食事日記を提出させましたら、朝食抜き、バランス悪い食生活、ダイエットしているのが多いんですね。それでこれから栄養士とか調理師になるのに、そんな生活習慣じゃだめだよと言って聞かせたんです。そして2年たったところでまた1週間の食事日記を提出させて入学時と比べたんです。僕は50〜60%は改善していると思ったんですが、改善したのは何と6%だったんです。これでは何のために専門の勉強をしていたかわからんと言ったのですが、彼らの試験の点数を見ましたら80点以上とっている。例えばバランスのいい食生活の献立作成の試験なんていうのは、100点とっているのがざらざらいるわけですよ。要は理論は頭でわかっていても、もう18歳ぐらいになって幾らそういう勉強しても、自分の生活習慣は変えられないんですね。

そこで僕は研究に入りまして、0歳〜3歳というのはまず親子のスキンシップが大事だよということがわかりました。それから3歳〜8歳というのが最も重要な食育の期間だと思うんです。というのは、脳が完成するのが10歳なので、そうすると、8歳〜10歳の間ってものすごい勢いで脳細胞と脳神経が伸びていきますから、好奇心も旺盛で、この好奇心を持ってからではもう人の言うこと聞かなくなるんですね。ですからそれまでの食育が大切なんです。それで3歳〜8歳の6年間の食卓の数ですが、1日3食食べたら1年で何食になります?1,095食です。我々の時代は大体年間で800食ぐらいだったんです。それが今は300食ですよ。そうすると、800食×6年間、300食×6年間で、4,800対1,800ですよ、3,000食も食卓が足りないんです。
さらに食卓での問題はテレビなんです。テレビが食卓に必ずあるんです。数字を調べてみましたら68%の家庭がテレビつけたまま食事しています。28%がつけたり消したり、全体で96%の家庭がテレビをつけっ放しで、あるはつけたり消したりして食事しているんです。テレビがついていると、親も子もまずテレビに目が行きますね。そうすると、子どものことに注意が行かないんですね。ということは、しつけができないんですよ。「きょう顔色悪いね、どうしたの」と言ってあげられないんです。もし一言かけてあげたら「実はいじめにあっているの」って言えるのに。
それから、8歳〜14歳というのは家庭で教わったことを、今度は学校でたたき込んでいく時期。そうすると、14歳ぐらいで大体世の中の物の道理というものが9割まで分かるところまで行くんですよ。そうすると、悪い誘いに来られたとしても、それをはねのける能力がそこでつくんですね。
僕はアフリカ行くのが好きでして、例えばライオンの親は身ごもりますと1人で子どもを産みに行って、母乳をあげて、離乳食あげて、ちょうど1年後にまた群れに戻るんですね。そして子どもたちを狩に連れていって、あの草原の草むらからどういうタイミングで飛び出ると、シマウマがつかまえられるかを何回も訓練するんですよ。その次に今度は子どもたち同士で、群れをなして餌をとりにいくんですね。大きい獲物にはみんな逃げられるので初めのうちは小さいんですが、それがだんだん大きくなったころに、親はこの子はもう一人前だから一人立ちしなさいといって、子どもたちを自分のテリトリーから出しちゃうんですね。世界中の地球上の動物すべてがそうなんですけれども、親の役目というのは子どもが一人で生きていけるようにしてあげることなんです。例えば昔よく言いました、100匹の魚をあげちゃだめだと、釣り糸と釣り針をあげなさいと、それこそ教育なんですね。これができない親がだんだん出てきた。

3番目は食糧問題です。日本の食糧自給率ってご承知のように39%になりましたね、これは先進国で最下位です。それで年間の食糧の量は9,200万トンあるんです。ところが、その中で残飯は2,160万トンですね。これは全体の4分の1ですよね、世界一なんです。EU諸国の3倍です。食糧をこんな無駄に使っていいのか。今、世界は67億の人がいるんですけれども、このうちのほんとうに豊かな生活している人って8%にすぎないんです。ということは、6億2,000万人。この中に日本人は一人残らず入るんですね。残りの92%というのは何かというと、8億4,200万人が栄養失調なんです。一日2万5,000人、年間で900万人が餓死しているんですね。この900万人のうちの大体30%が5歳未満。これ日本人が捨てている2,160万トン残飯のうちの1,200万トンあると、みんな生き返るんですよね。
今から45年ほど前に日本の自給率は73%あったんです。それがあっという間に減ってしまった。この原因の1つは、食生活が高脂肪、高カロリーなものに切り替わっていって日本にないものを仕入れなきゃいけなくなったこと。もう1つは、工業化を図るために戦前には1,380万人いた農業従事者が、今は210万人しかいなくなったこと。そのように、いろんなものが入れ替わってきている中で、日本人は日本のことはわかっているのかもしれませんが、世界の中で自分がどういう位置にあるかというのは、教育の中に入ってないんですよ。我々が日本人としてどうあるべきかというのを、きちんととらえることが食育だと思っているんです。その運動を今させていただいているというわけです。
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【津下】 私も子どもの子育てをずっとやってきまして、医師なので育休も取らずに産休明けからすぐ保育園ですけれども、それでも一緒に月明かり見ながら帰ってきて、そして息子にジャガイモの皮をむくのはあなたの役目だよとか言いながら、料理を一緒につくったというのが、せめてもの母としての役目を果たしたかなと思っていますけれども、それともう1つ、食について、10年前なんですけれども、アメリカの方が話していたときに、私たちは食事療法を教えるのに患者さんに食品交換表とか、勉強してもらわなきゃいけないという話をしていたら、アメリカは「うちは簡単よ、どの箱を選んでチンするか決めればいいだけ」という話を聞いたんですが、今まさしく私たちの食事というのは、そういうように考えなくても、袋を見て食べるみたいな感じになってきていて、本当にきちっと意識をしてやっていかないと、いけないのかなということを感じました。
それから、もう1つですけれども、JICAの研修生が私たちのところに来ていまして、それで世界各国で女性と男性の肥満者を見ると女性の肥満度が高い国が圧倒的に多いなと思うんですね。南太平洋の州ですと60%の女性が肥満で、男性の肥満率は変わらない。後進国で開発途上国では太っているほうが美人だとか、お金持ちだと言われていますからね。女性はそういう価値観にすごく左右されるというところで、やはり情報を提供するサイドの考え方というのも、大事かなということを感じました。
【服部】 逆に、パリ、ロンドン、ニューヨーク、日本などのアパレル産業や、洋服業界なんかは痩せた子ばかりをポスターにしますね。15年ぐらい前にミスユニバースの審査員やっていたんですよ。15年前はミスユニバースのBMIは22前後だったんです。ところが、最近優勝する人は18.5以下なんですね。ですから、栄養失調が優勝するんですね。
【宮嶋】 特に女性はよいとされるイメージに、自分を近づけたいという願望が非常に強いですからね、これはテレビに出てくるスターの皆さんを、ちょっと太めにしないといけませんね。
私、中国のシンクロナイズドスイミングの取材に行ったんですね。中国というのもやっぱり背が高くて細い人が美人とされるんですね、そのせいか、中国選手ってむちゃくちゃ細いんですよ。でも、体が柔らかいものですから足なんかぴゃーって開くんですけれども、それを戻すときに必要な脚の内筋があまりないのでぴゅっと戻らないんです。それでコーチが半年かけて筋肉をつけて四、五キロ体重を増やしたんです。そうしたら選手は今まで痛かった肩が痛くなくなったとか、疲れにくくなったそうです。コーチに言わせると、要するに今まではただ美しいことだけを見せるシンクロで、スポーツをする体ではなかったと。おそらくこの違い、間違ったイメージというのが、日本のいろんなところで起きているんだろうなという気がします。
ちょっと話が横に行きましたが、松尾先生、先ほど服部先生のほうから、3歳〜8歳まで食育というのが、非常に重要であるというお話がありましたけれども、これは体を動かすことに関しても同様じゃないでしょうか。
キーワードは親子
【松尾】 全くその通りだと思いますね。小さい子どもにどうするかという話のときに、何か子どもにとってのスポーツの自給率がどんどん下がっていると思うんです。子どもというのは昔から自分で遊び方を決めて、遊ぶ場所を決めていろいろ遊んでいたんだはずなんだけれども、今は、親が全部用意してあげるという環境になっていると思うんですね。要するに子どもが自分たちの思うようなものに、自分たちで工夫しながらスポーツを楽しんでいくことが必要なのではないかと思うんです。

それで1つ、ご紹介したい例があるんです。これは東京都の杉並区にあるサッカークラブなんですが、普段使っている区立のグラウンドが天然芝なんですね。そうすると芝の養生のためにたびたび業者が入ってきて閉鎖されて、一年を通じてほとんど使えない。これでは一体誰のための施設なんだということで、もっと子どもたちも一緒になって、自分たちでその環境をつくりたいということを思い立って、クラブでNPO法人格を取り、芝生の勉強をして、区からクラウンド管理の一部を受託したんです。それで、全部親が用意して、親が全部水まいて何とかじゃなくて、子どもたちも一緒にやろうよという形で、一緒にやっているんですね。そうしたら、芝がキレイになっていくと同時に、子どもたちが大きく変わったというわけですよ。今までは親がせっかくきれいな芝にしたんだから、蹴るときは1回1回場所を変えるんだよと言っても、いいじゃんとかいって聞かなかった子どもたちが、そうやって自分たちでグラウンドをでつくるものですから、もう芝が大事で、大人が何も教えないのに、同じ場所で続けて蹴る子はいなくなった。つまり、芝が傷むからといって大事にグラウンドを使うようになった。これはとても大事なことなんではないでしょうか。それももっと小さい子どもも一緒にやっていますから、あ、サッカーをする場所はこうやって自分たちでつくるんだと、自分たちで大事にするんだというものを自然に植えつけられて、みんなでつくっていくということもわかっていく。そういうスポーツの自給率みないものを上げていく必要があると思うんです。
【宮嶋】 以前は親だけがつくって、子どもは使う人だクラブ会員の協働参加と意識変革ったわけですね。それが共にやっていこうと、ちょうど服部先生が食事のときに一緒に食べようというのと、それをスポーツでも同じようにやっていこうということですね。どうやらここで「親子」というキーワードが出てきたのではないかという気がするんですけれども、萩原さん、親子というのは本当はとてもいい関係で進んでいかなきゃいけないんだろうなという気はするんですが、スポーツの現場の親子というのはどうなんですか。
【萩原】 私が見ているミニバスケットの現場では、やっぱり親御さんとバスケットとしている子どもたちのかかわりって非常に大事ですが、まずミニバスケットボールの会場に足を運んで、一番うるさいのは応援席の親御さんなんですよね。まず一番最初に目立つのは応援席です。その次にうるさいのがベンチのコーチ。肝心の競技をしている子どもたちがしーんとして、ただ淡々とバスケットをしている。これは関係者から見ても非常におかしな構図だなと思いますね。
今年、全国の中学生大会へ行ったときに、親御さんの応援マナーみたいのも非常に気になりました。中学生が大会で試合していて、おそらく出場している選手の親御さんだと思うんですが、敵の学校のエース選手が捻挫をしたんです。その捻挫をしている選手が痛そうで、試合続行が可能かどうかというのを審判が確認しているときに、それを見ていた親御さんが「ラッキー」と言ったんですね。これは気持ちはわかりますよ、非常に競っている場面で敵のエースが捻挫したわけですから、ラッキーなのはラッキーなんでしょうけれども、これは大人としておかしいんじゃないのかなと非常に感じましたね。ですから、子どもの社会の図というのは、親の社会の図の縮小版だと言いますけれども、やっぱりそういう親の態度が子どもに及ぼす影響って、多分大きいんじゃないかなと思います。

【宮嶋】 本当は親の役割というのは、子どもを一人立ちさせることであると、服部先生はおっしゃったんですけれども、どうもそれは親が子どもに自分を投影しちゃって、何か自分がエキサイトしてしまっているということなんですかね。自立させるどころではないわけですね。
【服部】 今うちでも学生扱っていますけどね、学生の親御さんが兄弟みたいですね、同じこと考えて同じことやるんですよ。学校がだめでしょうと言ったら、逆に反感持ってきますね。昔は「申しわけございません、うちの子どもがご迷惑をおかけいたしまして」と言ったのが、今は「どうしてくれんの、うちの子ども」。昔と違いますね。もっと悪い子は「びんびんやってください」って親御さんは言ったものですよ。今は「何するんですか、うちの子に」って、もう本当に日本はおかしい、うん。
【宮嶋】 本当に日本はおかしいんですけれども、その中でも子どもは次々に生まれて、次々に育っていくわけで、松尾先生、ここにはスポーツが持っている競技性と、本当は子どもがすべき運動という、そこのギャップもかなりあるのかという気がするんですが、その辺についてちょっと教えていただけますか。
【松尾】 そうですね、やはり重要なことは、とくに小さな子どもにとって大切なことは、さまざまな運動をいろんな角度からやらせるということです。ところが、スポーツというのは競技性を持っているものだから、一度試合に勝つともっと勝ちたいんですね。指導者の人はよくわかっていて「1回負けたっていい、君たちがよく今まで積み重ねてきたことを、ちゃんとやれたじゃないか」というんです。ところが、その後の反省会で最初は明るく「いいんだ、それでいいんだ」と言っているんだけれども、ずっと負けていると親御さんは「またまた負けましたね」というふうにだんだん暗くなっちゃう。じゃあ、やっぱり勝たせなきゃだめだよね、成功体験をさせなきゃというような形で指導者はどんどん強くしようとする。そうすると、スポーツの持っている競技性がどんどん勝っていって、そしてもう親御さん方は基本的にうちの子しか見ていませんから、まさに自分勝手に、うちの子さえよければと、どんどん輪をかけて競技志向へ走っていくという。やっぱりおかしいですよね。子どもにとってのスポーツをきっちりと、いろんなスポーツを楽しめるような空間づくりとか、場所づくりとか、やはりそのとこをきっちりやっていきながら、子どものスポーツの文化みたいなものを守っていくような風土をつくっていく必要があるんじゃないですかね。
【宮嶋】 今日はいろいろな観点から、子どもたちの健康・体力に関係するお話を聞いてきたんですけれども、この30年というか、高度成長を始めてからでしょうか、日本だけではなく世界全体が、私がよく例えて使っているのは自己家畜化というんですけれども、まるでブロイラーのように檻に入れられて、自動的にえさを与えられて、体を動かすこともあまりしないような家畜と同じような状況に、人間がどんどん陥っている。そしてその中で失っていく能力というのが、おそらくたくさんあるんだと思うんですよね。その失っている能力のつけというのが、全部子どもに現れてきている。体力が落ちていたり、それから、昔、成人病と言われたような高血圧であるとか、糖尿病であるとか、そういったものも子どもたちが持ち始めているというような、もう以前はなかったことがたくさん起こっているのだろうと思います。
きょうは4人の先生方にお話しいただいたことの共通項は、おそらく「前はなかったよね、こんなこと」ということだと思います。私は、前はなかったよね、じゃあ、本当に今の進んでいる社会を変えることは無理なのだろうか。でも、子どもには「不便が便利、不便がいいよ、体には、不便がいいんじゃない、健康には」みたいな、そんなキーワードがあってもいいのかなと常々思っているんですけれども、そういうことをちょっともう一回思い返していただいて、昔はこうだったよとか、こんなことが昔はあってねと、やっぱり皆さんから子どもさんにもお話をしていっていただきたいと思いますし、ぜひ人間がブロイラーにならないようにということを、皆さんの頭の隅にぜひ置いておいていただきたいなと思います。
今日は本当に長い時間、4人の先生方に貴重な体験、そしてさまざまなこれからの、こうしたらいいんじゃないかというご提案をいただきまして、ありがとうございました。



