公益財団法人 健康・体力づくり事業財団

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全国健康・体力つくり推進フォーラム2009

基調講演

講演テーマ「自分流輝きの発見 - Active Aging -」

由美 かおる
女優

基調講演 講演テーマ「自分流輝きの発見 - Active Aging -」由美 かおる (女優)

人気時代劇『水戸黄門』で、他の配役が世代交代していくなかで、ひとり、同じ役どころで24年間出演を続けておられ、デビュー当時(15歳)と変わらぬ若々しいプロポーションを維持しておられる。
テレビやステージで活躍されるほか、厚生労働大臣の私的諮問機関「国民健康会議」委員、厚生労働省「医療審議会」委員、酒田短期大学客員講師、大阪国際女子大学客員講師などを歴任。
京都市観光特別大使、源氏のふるさと大使(兵庫県川西市)、水戸大使。
合気道4段。『スリムな体で弾む毎日』(竹書房)など、著書多数。京都市出身。

基調講演 講演テーマ「自分流輝きの発見 - Active Aging -」

こんにちは、由美かおるです。今日は雨の中をようこそおいでくださいました。
これからの人生を元気で豊かに、また、楽しく過ごすためにはどのようなことをしたらいいのかという提案をさせていただき、皆さまと一緒に考えていきたいと思っております。 
どうぞよろしくお願いいたします。

今日、わたしは、京都からやって来ました。ご存じ水戸黄門の撮影をしています。1週間にだいたい5日ぐらいは京都にいまして、週末には東京に帰ってきます。しょっちゅう新幹線で移動し、毎日毎日旅をしています。人生はまさに旅だなあと、いつも感じております。
そうした旅の毎日で、車窓から景色を見ておりましたら、突然女性の姿をしたような雲が現れたんです。このスライドの絵はわたしが描いたのですが、ちょうど静岡あたりで雲が出てきて、なんだか女神のように感じまして…。目がきらっと光って、わたしにメッセージを送ってくれたのでは、と。
人生には楽しいこともたくさんありますが、嫌なこともあります。そんな嫌なことは忘れて、もっとおおらかに生きなきゃ。そんなふうに女神がささやいてくれたのかなぁと思いまして、家に着いてから雲の女神の絵を一気に描き上げました。それがこの油絵です。
(拍手)
まぁ! まぁ! ありがとうございます。
決してうまくはありませんが、集中して何かを描き上げたりやり遂げたりすると、とても気持ちがいいものです。
わたしは、毎日いろいろなことに感動しております。毎日毎日いろいろなことがあって新鮮で、胸をわくわくさせているのです。

アメリカの幻の詩人 サミュエル・ウルマン『青春』
最近、素敵な詩に巡り会いました。幻の詩人と言われている、アメリカのサミュエル・ウルマンの「青春」という詩です。

- 青春とは人生のある時期を言うのではなく心の様相を言うのだ。
優れた創造力、逞しき意思、炎ゆる情熱、怯懦(きょうだ=臆病)をしりぞける勇気、安易を振り捨てる冒険心、こういう様相を青春と言う。
年を重ねただけで人は老いない。理想を失うときに初めて老いがくる。歳月は皮膚のしわを増すが情熱を失う時に精神はしぼむ。
(中略)
年は七十であろうと、十六であろうと、その胸中に抱き得るものは何か。いわく「驚異への愛慕心」、空にひらめく星晨、その輝きにも似たる物事や思想に対する欽仰(きんぎょう=敬い慕う)、事に處する剛毅な挑戦、小児の如く求めて止まぬ探究心、人生への歓喜と興味。

 人は信念と共に若く、疑惑と共に老ゆる
 人は自信と共に若く、恐怖と共に老ゆる
 希望ある限り若く、失望と共に老い朽ちる
(後略)

岡田義夫さんが訳されたのですが、漢文調で、いろいろと難しい字が出てきまして、一生懸命辞書を引きながら意味を理解して、感動しました。
終戦直後、マッカーサー元帥が日本に来たときに、この詩を自分の部屋に飾り、いろいろと演説をされたそうです。戦後に、焼け野原となっていた日本の国を、政財界や実業界の皆さまがこの詩に励まされて立て直されたと聞いております。
力強い意志。炎(も)える情熱。臆病をしりぞける勇気。それから、敢えて難しいことに立ち向かう心。驚異なるものを愛慕う心。不屈の闘志。そして、少年少女のように、胸をわくわくさせながら、いろいろなことを探究していく心。
「人生、どうでもいいや」となげやりになるのではなく、喜びを見出して、いろいろなことに興味を持って挑戦していく。そして、優れた創造力。何もないところからこつこつと何かをつくりあげていくということ。こういったことが大切だと思います。

60歳からの人生
わたしもあともう少しで60歳になります。まだまだ先のように思っていますけど、本当に月日が経つのは早いものです。あっという間です。
60歳近くになってきますと、更年期や五十肩など、からだのあちこちにガタが出てくる方も多いようです。
会社を定年退職して、仕事がなくなり肩書きもなくなり、ただの人になってしまいますし、収入もなくなります。仕事関係の友人や同僚と交流がなくなり、さびしくなりますし、情報も入らなくなってきます。
子どもたちはみんな巣立ちをして、結婚していなくなってしまいます。配偶者もどんどん年を取ってきて、先立たれたり、介護しなければならなくなったり。熟年離婚なんてこともあるらしいですね。
そして親。双方の4人の親の高齢化や死別。介護が大変なお友達もいます。
こういう避けられない喪失や別れをいかに受け入れるか、どううまくつきあっていくか。
大変ですけれど、何とかしなければいけません。

それにはまず、健康でなければいけないと思います。健康でないと、ものごとを暗く考えてしまい、どんどんどんどん悪いほうへ落ち込んでいきます。心の健康、体の健康、頭の健康-ぼけてしまってはいけません- いろいろありますが、やはり、ベースとなるのは、健康なからだづくりだと思います。元気なからだがあれば、心も、ものの考え方も健全になると思います。

生命エネルギーを培う西野流呼吸法
健康なからだづくりのために、わたしは毎日行っていることがあります。西野皓三先生が創始された西野流呼吸法です。朝起きたときと寝る前に毎日必ず実践しています。
水戸黄門では忍者の役をやっておりますので、跳んだり跳ねたり、悪の代官をやっつけるときには足蹴りをやったりしているわけですが、鬘が結構重いんです。
わたしたちの頭蓋骨はだいたい5キロぐらいですが、それを首と肩で支えているわけで、それだけでも大変なのに、それに鬘が乗ると肩が張ったり首が痛くなったりして大変な思いをしています。水戸黄門1本のドラマを撮るのに、約1週間かかります。朝8時から鬘をかぶって、夜10時ぐらいまでかぶりっぱなしというときもざらにあるんです。頭の中はヘルメットをかぶったよう。夏だと熱くなって、汗びっしょりになってしまいます。
夜帰ってきて、お風呂に入って温まって、それでも疲れがとれないとき、呼吸法を行うんです。これは、是非覚えていただきたいのですが、生命の根源だと思います。この呼吸法をいたしますと生命エネルギーに満ちたからだになります。
わたしたちは、いつも何気なく、無意識に息を吸ったり吐いたりしております。ところが、ストレスや疲れがたまってきますと、夜眠れないようになったりすることがあると思いますが、それはからだが緊張しているからなんです。
それをいかに、からだの内側からゆるめるか。この「ゆるめる」ということが大切です。その方法として、わたしがいつも行っている呼吸法を皆さまに覚えていただきたいと思います。

まず、ゆったりと温泉につかったように全身の力を抜いて、ふぁーんとからだが温泉に浮かんでいるような、リラックスした状態で行います。
そして、これぞ極意というのが、足芯呼吸なんです。この「足芯」というのは足の裏のことで、足の裏を意識して息を吸い上げます。
人間のからだは、なんと60兆個の細胞からできています。その細胞のひとつひとつが呼吸をしています。そこに、意識でエネルギーをめぐらせてあげるのです。
自分のからだが樹木だと思ってください。緑の葉っぱをいっぱいつけた木が、根っこからぐんと、水と養分を吸い上げていく感じです。緑の葉っぱの先端にまで吸い上げていく、そんなイメージを描いてください。
まず、からだの中にある空気を吐き出してゆきます。
からだの中心、丹田(下腹部) - とても大切なところです - に意識を持っていき、両足の裏に向かって細く長く、口からゆっくりと息を吐ききります。
木が根から水分を吸い上げるように、両足の裏、膝、太もも、そして丹田、肛門に意識をおいて、背骨を通って頭のてっぺん = 百会(ひゃくえ)まで吸い上げていくイメージで鼻から空気を吸っていきます。百会まで吸ったら軽く止めて、- ここが少し難しいです - 息がもれてしまわないように、吸い上げたものを意識で丹田に下ろします。そこから両足の裏に向かって、すーっと口から吐いていきます。
そうしますと、まずうまくできた方は、からだが熱くなって、いろいろなところから汗が出てきます。呼吸って、深くやるとこんなに効果があるのです。
今からでも遅くはありません。今から始めることによって、からだをいきいきとさせることができます。
では、やってみましょう。
(会場、由美さんのインストラクションに従いながら、呼吸法を実践)
できましたか。
皆さん、なかなか筋がよろしいようです。
これを朝起きたときお布団の中で、上を向いて、おなかのところに手を当てて、足の裏に向かって、まず吐きます。吸うときは、鼻でゆっくりと今のように吸い上げて、軽く止めて丹田に下ろしてから、口からすぅーっと吐いていきます。これを5回くらい続けてやってみてください。血流がよくなり、筋肉もゆるみ、内臓の働きも活発になってきます。
今、熱くなったと思う方?
(たくさんの手が挙がる)
はい、今2、3回しかやってないですね。呼吸だけで、こんなに効果があるんです。
日頃からこうしてやっておきますと、自分の体を自分でいきいきとさせることができるようになり、元気が出てきて、若さも蘇ってくるのです。


基調講演 講演テーマ「自分流輝きの発見 - Active Aging -」


頭の健康
からだの次に大事なのが、頭の健康です。これは、ものを覚えたり、新しいことにチャレンジをしながら鍛えます。指先を使うということも、いいですね。
わたしも最近、いろいろな難しいことにチャレンジしています。
小さいときにピアノをやっていました。芸能界に入ってから全然やらなくなり忘れてしまっていたのですが、5年ほど前からまた始め、弾き語りもしています。さらに最近アコーディオンを始めました。これがなかなか難しい。重さがだいたい9キロあるんです。
まだ始めて半年ぐらいなのですが、肉付きがよくなりました。筋肉質になりました。
(といいながら、舞台袖にアコーディオンを取りに行き、手にして戻ってこられる。アコーディオンを重そうに抱えながら…)
今日は、セルフサービスで。
(会場、拍手と笑い)
ありがとうございます。
何でも、自分のことは自分でやらないといけません。
そういう習慣が大事だと思います。
(会場、笑い)
(アコーディオンを装着し、左側のボタンの列を指しながら)
さて、このボタン、120 あるんです。最初のころは、どこに何があるかわからなくて…今も、まだ、探っております。
(アコーディオンの音)
あ、これは、Cですね。
こちらは、ピアノと同じように鍵盤があります。
それでは、わたしが最初に覚えた曲を、ちょっとお聞きください。
(アコーディオン弾き語り)
(大きな拍手ありがとうございます。)

今日はじめて人前で弾きましたが、何とかうまくいきました。
基調講演 講演テーマ「自分流輝きの発見 - Active Aging -」由美 かおる (女優) 難しいことにチャレンジするのは、大変なことですが、絶対やってみるといいですね。
今日は、もう1曲、やってみましょう。
(拍手)
うまくいくといいのですが…、あ、今の曲、何語かわかりました?
フランス語だったんです。
フランス語に聞こえなかった?
(笑い)
すみません、一応フランス語で、シャンソンでした。今度の歌は、アメリカの歌です。
日本では、江利ちえみさんが歌われて大ヒットした曲、テネシーワルツ。アメリカでは、パティ・ペイジさんが歌われて、とてもいい曲です。

(アコーディオン弾き語り)
(大きな拍手)

温かい拍手をいただいて、ありがとうございます。
もっともっと努力して頑張っていきたいと思います。

生涯青春を貫くための 由美流八か条
最後に、生涯青春を貫くための、由美流八カ条を書いてきました。

1番目、あなたがいてくれたからわたしの人生は楽しく豊かなものだったと、そんなふうに思ってもらえたら、とても素晴らしいですよね。
自分から進んでボランティアをしたり、困っている人の相談にのったりしてあげるといいのではと思います。
2番目、昔、やりたかったけれど中途半端に終わってしまったこと、それを今からもう1回、再挑戦してみてはいかがかと思います。
詩、俳句、陶芸なども手を使うのでいいですね。歌や楽器、スポーツ。旅行もいいですね。そして読書。年を重ねると、読むことが億劫になってきますが、読むことも、とてもいいことではないでしょうか。
そして3番目。今まで全く知らない世界、未知の世界を探検する。
たとえばNHK講座、お稽古事に通ったり、カルチャースクールに行ったり。
4番目。人を愛するということは、人間として素晴らしいことです。求めているだけではなく、自分から優しさを送るといいますか、自分のほうから優しく接してあげる。これがいいんじゃないかなぁと思いますね。
そして5番目は、何もないところから何かを創り上げていくこと。時間はたくさんありますから、先ほどのわたしの油絵のように、うまくなくてもいいから、何か描き始めてみてください。どんどん上達すると思います。作曲とか、お料理も、なかなかいいものですよね。お庭とかベランダにお花を咲かせてお友達に見てもらったり、近所の人が見て「なんて綺麗なの」と喜んでもらえる、そんなことでもいいのではないでしょうか。
6番目の名誉、地位、お金。お家もそうですが、どんなに立派なものを建てても、お金があっても、お墓の中には持って行けないのですから、そこそこ、あればいいですよね。
7番目。人を恨んだりするのではなく、妬んだりするのではなく、この世に誕生できたことを感謝する。
8番目。わたしのお友達で、朝、目が覚めたとき「3人の人を喜ばせよう」と思う方がいらっしゃるんです。それを聞いて、わたしはびっくりしました。なんて優しい人なんだろうと。わたしも、3人とまで行かなくても、ひとりでもいいから、今日あの人を喜ばせようと、そんなふうに目を覚ましてみたいと、そういうことを実践してみたいなと思っています。
皆さまも、この、全部でなくてもいいんです。この中のどれかでいいです。ぜひ何か、やってみていただければいいなと思います。人生、たった一度です。お金じゃなくて、心が満たされるもの、自分で何かを作りあげること、なんでもいいからチャレンジしていただきたい。
そのためには健康でなければいけませんから、ぜひ、呼吸法もやっていただきたいと思います。
今日お話しました呼吸法、今日からやってみようかなと思われた方、手を挙げてみてください。
(多くの手が挙がる)
ずいぶんいらっしゃいますね。
(拍手)
忘れないように、三日坊主にならないようにしてくださいね。

人生成功へのレシピ
これは、エマーソンという博士がおっしゃってることですが-

たくさん笑うこと。
知的な人々から敬意を得ること。子どもたちに愛されること。
率直な批判をありがたいと思い、邪悪な友の裏切りに耐え、美しいもので心を洗い、他人の中に最善のものを見出すこと。
この世を去る前に、ひとりでも健康な子を残したり、小さなお花畑を残したり、社会をほんの少しでもよくすること。
あなたが生きたことで、わずかひとりであっても、その人の人生が生きやすいものとなること。
それが人生の成功を導く。

毎日、どんどん笑って、信用していた人に裏切られても、美しいもので心を洗濯して、何か人のため、世のためになることをする。
さて、最後のスライドです。これは、わたしがはさみで切った貼り絵です。何も考えないで切りましたら、こんなふうに、「踊っているわたしとワンちゃん」、エッシャーのような感じになりました。
こんなことも、やってみると楽しいものですよ。
皆さんも、いろいろおやりになってみてくださいね。

では、皆さん、ご清聴、ありがとうございました。


基調講演 講演テーマ「自分流輝きの発見 - Active Aging -」由美 かおる (女優)