公益財団法人 健康・体力づくり事業財団

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認知症理解する

代謝面からみた変化

  加齢に伴いさまざまなレベルでの変化がみられますが、生体内の代謝に関
わる化学的変化もみられます。代謝に関して最も重要なものがエネルギー代
謝であり、 通常基礎代謝量といわれています。平均基礎代謝量は、体表面積
当たりでは男女とも20歳でピークを示しそれ以降徐々に減少していきます。

  生物の代謝にとって重要な物質は水ですが、人体を構成する水は、細胞の
中に含まれる水分(細胞内水分)と血液・リンパ液にある水分(細胞外水分)に
わけられます。図2は若年者と高齢者とにおけるからだの構成部分の割合を
示したものです。細胞内水分は高齢者では減少しているため、老人では容易
に脱水症状に陥りやすいことと関連しています。細胞外水分は若年者でも高
齢者でも構成比率は変わりがありませんが、高齢者では病気を含めたさまざ
まなストレスの下で容易に変動し、不安定になっています。細胞外水分の増
加の際には顔や足などにむくみを生じ、減少の際にはショックといった問題が
起こることもあります。


図2  主要体構成要素分布の年齢的比較

資料:吉川政己、老いと健康、岩波書店、東京、1991


  他に代謝に関係する重要なものに血液中の酸素分圧があります。通常1回
の呼吸で入れ換わる空気の量(1回換気量)には、 若年者と高齢者の間には
ほとんど差はありません。しかし、高齢者では同じ量の空気を吸っても、若年
者よりも血液中の酸素濃度が低い状態になります。


図3  血中酸素分圧の加齢変化

説明:加齢とともに同じ空気を吸っても血液中の酸素分圧は低くなる。
資料:東京都老人総合研究所編、サクセスフル・エイ ジング(老化を理解するために)、
    ワールドプランニング、東京、1998


  血液中の酸素濃度が低くなると元のレベルに戻そうとする反射が働いて
呼吸が増加しますが、高齢者ではこの反射が低下しています。また、 高齢
者では肺が線維化して、肺のなかで使えない部分の容積が多くなり、 予備
能力がなくなっています。高齢者では、ごく軽い運動をしてもすぐに息切れす
るといった現象が起こるのはこのためです。