認知症理解する
家族への支援
生活の様々な場面で介護を担うことになるのは家族です。ここでは介護者である
家族に対する3つの主な支援について述べてみます。
1) 相 談
相談者には、大きくわけて2つのタイプがあります。ひとつは認知症性老人の介護
が初めての経験であり、一体何をどうしたらよいのかと途方に暮れており、とにかく
具体的な対応の仕方を早く知りたいという切羽詰まっている家族、あるいはそれま
で長い間、我慢を重ねてきたけれども、もう限界だという家族があります。そのよう
な人にはすぐに対応することが必要です。
2つめは、現在問題行動などなく悩まされていることも特にないが、今後変化があ
った場合に即対応できるための準備として、情報収集を目的として相談する人もい
ます。そのような人に対しては豊富な社会資源や病気に関する情報を提供すること
が必要になります。
次に主な相談場所について挙げます。
① 市町村の高齢者保健福祉担当課
② (社)認知症の人と家族の会
1982年発足したぼけ老人テレホン相談は、家族の会東京支部の世話人で在宅
介護経験者が相談員となり、介護家族に対する精神的援助として医療・保健・福祉
の情報提供を目的としています。在宅介護者へのピアカウンセリング(同じ仲間のカ
ウンセリング)、介護方法を話し合う場、専門職への橋渡しとして位置づけられてい
ます。
③ (財)ぼけ予防協会の「ぼけ110番」
認知症性老人の介護方法やデイサービス、入所サービスの利用について、月・木
の午前10時から午後3時まで無料で電話相談を行っています。
④市町村の老人保健福祉担当課および福祉事務所
日常生活のこと、老人ホームの入所、デイサービス、ショートステイなどの利用手
続きをします。
⑤ 介護実習・福祉センター
介護実習を通じて、介護知識・技術を教え、介護機器を展示しており、その利用
方法や住宅改造などの相談にも応じます。
⑥ ボランティアセンター(各市町村の社会福祉協議会内に設置が多い)
ボランティアを必要としている人、ボランティアをしたい人に情報を提供します。
⑦ 東京いきいきライフ相談センター
無料で、認知症性老人の医療・介護相談、日常生活・社会活動にかかわる問題に
ついて、面接・電話・ファックス・手紙による相談を行なっています。
2) 教 育
認知症性老人は概して家の中に閉じこもりがちになります。また、呆けを心配して痴
呆相談に来た人々の中には、日中何もせずにボーッと過ごし、家族や地域の人々
との接触が少ない方もいます。社会との交流がなくなると、残存能力までも低下して
いき、気分転換にならず、また常に家の中にいることで介護者の気が休まることが
なく、被介護者、介護者どちらにとっても情緒不安定な環境を作りやすく、両者の関
係が悪くなっていくことになります。認知症性老人あるいは高齢者にとっての健康教育
も重要なものなのです。
人間なら誰もがそうですが、安心できる雰囲気の中で人とのかかわり合いを続け
ていくと、情緒は安定してきます。当然、認知症性老人の場合も、理解力は十分には
ありませんが、感性はとても繊細であるため、人との交流は良い刺激になります。
3) 訪 問
①家庭訪問の意義
保健婦は、みずからが家庭を訪問することによって、よく実態を観察し、問題をと
らえ、その問題に焦点をあてて、その家庭にあった方法で具体的に支援することに
なります。家族に介護方法を教える場合、保健婦の価値感で家族の介護力を評価
するのではなく、被介護者が介護に満足し安全であれば、家族の介護方法を尊重し
自信をもってのぞんでもらうほうが被介護者との関係も良いものです。
②訪問看護について
訪問看護は、老人保健法による保健事業の一つで、市町村が実施主体となって
83年2月から実施しています。対象は、40歳以上で、寝たきりまたはこれに準ずる
状態にある人や認知症性老人などです。保健婦または看護婦が、医師の指示のも
と、必要に応じて理学療法士や作業療法士の協力を得ながら各家庭を訪問し、
家庭における看護・療養方法、機能訓練方法などを指導します。
③家庭訪問の内容
訪問の目的は、家族が安心して介護を継続することができるように援助すること
です。疾患についての知識、老人の身体状態のケアの仕方と予防、問題行動への
対応の仕方、ストレスを軽減する工夫を教えたり、家族の健康全般に関する相談を
受けたり、必要に応じて適切なサービスや制度、関係機関の紹介をします。一方的
な指導教育ではなく、介護者の悩みを聞く、介護上の問題を観察するという臨床的
視点がとても重要になります。