公益財団法人 健康・体力づくり事業財団

  • サイトマップ

認知症理解する

不潔行為

 不潔行為も認知症老人によくみられる行動異常の1つです。主に排泄に関連した行
動がうまくできないために起こります。 失禁があるために起こっているもの、トイレの
場所がわからないために起こるもの、 習慣的行為としての排泄行為の手続きがわ
からなくなった場合に分けて考えます。

 失禁は、高齢になるとよく見られるようになります。認知症老人では、軽症の場合で
も、失禁に対する対応がうまくできなかったり、あるいは失禁を隠そうとして不潔行
為につながることがあります。例えば、汚れた下着を着たままでいたり、部屋のすみ
に隠してしまうとかいったものです。失禁の原因としては、前立腺肥大症によるもの
から、括約筋の筋力低下によるもの、神経系の異常による尿意や便意の喪失によ
るものなど、いずれのものでも不潔行為につながります。失禁に対する医学的対策
を講じることで、不潔行為を減少させることができます。患者さんが恥ずかしがった
り、きまりの悪い思いをして失禁を隠そうとすることが不潔行為につながる訳ですか
ら、粗相をしても叱ったりせずに対応することが望まれます。

 中等度の認知症になると、徘徊のところで述べたように、トイレの位置がわからない
ためにうろうろする患者がみられます。重症になると尿意や便意を言葉で訴えるこ
とができない患者さんもみられます。このような場合、よく観察し尿意や便意のある
時の行動パターンをつかむことが大事です。尿意や便意のサインを見つけたら声か
けをしてトイレに誘導するようにします。トイレの場所がわかりやすいよう矢印などを
つけて工夫することも大事です。

 認知症では、若い頃に覚えたことほど記憶が保たれる傾向があります。人生の後
半で覚えた洋式トイレの使い方がわからなくなる認知症患者さんは少なくありません。
こうした場合、トイレに誘導した際に便座に座るところまで介助することが必要です。
中等症以上の認知症患者さんでは衣類の着脱がうまくできない場合があり、このため
に不潔な状態になることもあります。こうした場合には、衣類の着脱を介助すること
で不潔行為を防ぐことができます。

 重症例では、放尿あるいは放便する患者さんも出てきます。こうした場合には、
排尿・排便の起こる時間帯や行動上の特徴を把握するようにして、定期的なトイレ
誘導を試みます。介護者の努力にもかかわらず放尿や放便が止まらない場合は、
尿意や便意がないと判断しておむつに切り替えます。

 重症患者で言語了解も悪くなってくると、便いじりもみられるようになりますが、こう
した場合はおむつに加えてつなぎパジャマなどを使用して衛生状態を保つようにし
ます。このような患者では、おむつ交換時にも協力が得られず、困難が生じます。言
葉がわからない患者さんは、言葉の内容よりも語調に反応している場合が多いの
で大きな声を出さず優しく声をかけて緊張を解きほぐす必要があります。