認知症理解する
認知症とは
認知症とは、いったん正常に発達した知能が、脳の病的な変化により低下し、日常 生活上あるいは社会生活上支障をきたした状態をいいます。かつては、認知症という と非可逆的な、つまり回復不可能な知能低下がみられる状態を指していましたが、 原因疾患によっては早期に適切な治療を行なえば知能低下が改善し得ることから、 近年では可逆的なものも含めて認知症ととらえるようになっています。
平成7年の東京都の調査によると、在宅の65歳以上人口に対する認知症者の割 合は4.1%と推計されました。この数値から都内の認知症性高齢者数は、平成7年 度では5.8万人になりましたが、平成12年には7万人を超え、平成27年には11 万人にも達すると見込まれています。
また、図7は年齢階級別にみた認知症の有病率ですが、65歳から74歳までは 100人あたり1〜2人にすぎませんが、80歳から84歳には10人に1人、85歳 以上になると5人に1人となり、75歳以降急激に認知症の有病率が増加していまし た。
図7 年齢階級別の認知症有病率
資料:東京都高齢者施策推進室、認知症が疑われたとき
ーかかりつけ医のための認知症の手引きー、1998
認知症をきたす原因疾患にはアルツハイマー型認知症や血管性認知症の他、さまざま なものがあります。つまり、認知症とは記憶障害や理解・判断力の低下などの知的機 能低下を主症状とする「症候群」であり、診療の場においてはその原因疾患が何で あるのか、どの程度の障害であるのかといったより具体的な判断が求められるよう になっています。
また、認知症とまぎらわしい状態との区別(鑑別といいます)が重要です。
ここでは正常範囲内かどうか、さらに、せん妄、うつ病とを見分けるポイントにつ いて検討しましょう。