公益財団法人 健康・体力づくり事業財団

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認知症理解する

家族・介護者への理解

  認知症性老人は、記憶、思考、了解、判断、見当識、学習能力、言語などの障害を
持ち、それによって人とのコミユニケーションがとれなくなり、日常生活能力の自立
性の低下、さらに妄想、幻覚、不安などの随伴精神症状を持つことから、1人で日
常生活を送ることが出来なくなります。

  安全で人間らしい生活を送っていくためには、他者の介助が必要ですがその介
助を担う人の多くが家族でありますが、主たる介護者となる人は、圧倒的に女性が
多く、認知症性老人が男性の場合は妻か嫁であり、女性の場合は嫁と娘が一般的で
す。

  介護し始めてそれほど日がたっていない家族にとっては、毎日の介護や家事を
こなす忙しさから、社会との繋がりが希薄になりがちであり、この孤立感・孤独感が
ますます自分のストレスを高めていくことになります。

  具体的には、家族の理解や協力の欠如、他の家族との緊張、口を出しても手は
出さない親戚との確執、 経済的負担などの家族関係のストレス、認知症状へどう
対処してよいのかわからないという困惑、外出しても介護のことが頭から離れない、
他人や施設スタッフヘの迷惑をかけないか等、精神的ストレス、慢性疲労、健康状
態の悪化、睡眠不足、熟睡できないなどの身体的ストレスを抱えています。

  配偶者が介護者の場合は、自分がもし倒れた時に代わって介護してくれる人が
直ぐには思い当たらないと考えると、多少体調が悪くても我慢し、自分の健康は後
回しにし、ぎりぎりまで頑張ろうとする人が多いようです。

  また、介護者が嫁の場合、自分が寝込んだ時に、介護は勿論家事、さらには小
さい子供のいる場合には、子育てにも影響を与えることになるので、家庭崩壊にな
るのではと心配し、そうならないためにも常に緊張感を持っていることでしょう。

  精神的負担を軽減し、介護者が気持ちに余裕を持って介護するためには、一時
的に老人から離れることも時には必要です。

   しかしながら、家族だけで介護することが自立的であり、望ましいという一種介護
神話的なものが残っており、施設入所や入院、福祉サービスの利用に対しては、後
ろめたさや罪悪感を持っている場合が多々あるので、できるところまで自分でしよう
としますが、そのことが家族や高齢者本人の精神的負担になっています。

  十分に介護できる環境ではないのに、介護するのは子供の任務、夫婦の任務と
いった規範に縛られ、介護の社会化が遅れています。

  また、福祉に頼るのは親不孝という福祉に対する偏見や誤解、在宅サービス特
有の他人が家の中に上がり込むことに対する抵抗感を払拭しきれないことも、介
護者のストレスを増幅させる要因となります。

 わが国における家族のあり方もその要因のひとつです。介護が家族によってなさ
れてきた背景には大家族が大半であり、高齢者の扶養、介護は家族が果たすとみ
なされており、それを全うできない場合は世間に対する恥とされていました。

  加えて、人生50年という短い介護期間であったことが、家族による介護を可能と
してきました。

  しかしながら、現在は、平均寿命が伸び、介護を受ける人も介護をする人も高齢
化し、介護期間も長くなっています。家族も少人数化しており、主介護者は女性1人
の肩にかかっていたり、高齢者2人の世帯も増えているので、配偶者1人による介
護が多くなっています。