認知症理解する
うつ病
老年期のうつ病では、意欲の低下、注意集中困難の他、記憶力の減退がみられ ることがあり、認知症との鑑別が問題になることがあります。
うつ病の患者は自分の状態が最近になって変化してきたことを自覚しており、自
らの能力低下について深刻に悩んでいることが多いものです。しかし、実際に心理
検査などを施行してみると、本人が気にしているほどの能力低下はみられなかった
り、知能検査の成績が日によってまちまちだったりします。また、検査の場面では、
認知症の人は通常できないことを認めようとせず、あれこれ言い訳を言ってその場を
とりつくろう傾向がありますが、うつ病の場合には、考えたり言い訳をする前に「わか
らない」とあきらめてしまうことが多いといわれています。うつ病でみられる記憶障害
は、うつによる思考の制止(考えがうかばない、考えがまとまらないなど)や集中力
の低下によるものであり、治療によりうつ病が治れば、記憶障害も改善するもので
す。認知症とうつ病の鑑別点については表6にまとめました。
表6 認知症とうつ病の鑑別点
うつ病 | 認知症 | |
発症のしかた | 急性 | 緩徐で潜伏性 |
症状の持続 | 症状の持続が短期 | 症状の持続が長期 |
態度 | 能力低下を苦にして深刻に悩むことが多い | 能力低下をとりつくろうことが多い |
質問への答え | 質問に対して「わからない」と答えることが多い | 質問に対して誤った答えをする |
認知機能障害 | 認知機能の障害が大きく変動する | 認知機能の障害が一定している |