認知症理解する
認知症の程度の評価
認知症の程度を評価する方法には、心理検査による評価法と行動観察による評価
法とがあります。ここでは後者について簡単に述べることにしたいと思います。
行動観察による認知症の評価法は、その人の日常生活における意欲や関心、身の
回りのことの処理能力などについて判断し、知的能力を総合的に評価します。行動
観察によるものですから、心理検査による評価法と異なり、その人の協力が得られ
なかったり、認知症が高度で言語理解能力や表現能力が著しく低下しているような場
合にも評価できるという利点があります。但し、日常生活における様々な側面を評
価することから、評価対象者の日常生活について熟知している介護者から確かな
情報を得ることが必要になります。
よく用いられている行動評価尺度としては、柄澤式「老人知能の臨床的判定基
準」があげられます(表4)。
表4 柄澤式「老人知能の臨床的判定基準」
判定 | 日常生活能力 | 日常会話・意思疎通 | 具体的例示 | |
正 常 |
(−) | 社会的、家庭的に自立 | 普通 | 活発な知的活動持続 (優秀老人) |
(±) | 同上 | 同上 | 通常の社会活動と家 庭内活動可能 | |
異 常 衰 退 |
軽度 (+1) |
・通常の家庭内での 行動はほぼ自立 ・日常生活上、助言 や介助は必要ない か、あっても軽度 |
・ほぼ普通 | ・社会的な出来事へ の興味や関心が乏 しい ・話題が乏しく、限ら れている ・同じことを繰り返し話 す、たずねる ・いままでできた作業 (事務、家事、買物 など)にミスまたは能 力低下が目立つ |
中等度 (+2) |
・知能低下のため、 日常生活が1人 ではちょっとおぼ つかない ・助言や介助が必要 |
・簡単な日常会話はどう やら可能 ・意思疎通は可能だが 不十分、時間がかかる |
・なれない状況で場所 を間違えたり道に迷 う ・同じ物を何回も買い 込む ・金銭管理や適正な 服薬に他人の援助 が必要 | |
高度 (+3) |
・日常生活が1人では とても無理 ・日常生活の多くに助 言や介助が必要、あ るいは失敗行為が多 く目が離せない |
・簡単な日常会話すらお ぼつかない ・意思疎通が乏しく困難 |
・なれた状況でも場所 を間違え道に迷う ・さっき食事したこと、 さっき言ったことすら 忘れる | |
最高度 (+4) |
同上 | 同上 | ・自分の名前や出生 地すら忘れる ・身近な家族と他人の 区別もつ かない |