公益財団法人 健康・体力づくり事業財団

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睡眠

レム睡眠とノンレム睡眠

 入眠してから徐々に睡眠が深くなっていくと次にあらわれるのがレム睡眠です。この睡眠の特徴は脳波上はノンレム睡眠の段階1に似ていますが、急速な眼球運動が見られ、またオトガイ筋の筋電図が消失しています。このような睡眠期には夢を見ていることが多く、急速眼球運動(rapid eye movement, REM)の頭文字を取ってレム睡眠と呼ばれます。レム睡眠は様々な生理現象も睡眠の深さもノンレム睡眠とは質的に異なっています。このようなレム睡眠とノンレム睡眠は1セットになって一晩の睡眠のなかで交互に繰り返して、朝目覚めるまでに5〜6回現れます。健常成人ではレム—ノンレム睡眠の1セットの長さは大体90分位です。
 レム睡眠とノンレム睡眠の睡眠の状態をさらに詳細にみてみましょう。
 レム睡眠の特徴としては、
①急速眼球運動があらわれること、
②脳波が入眠期から軽睡眠期に似たパターンを示すこと、
③身体の姿勢を保つ筋肉(抗重力筋、姿勢筋)の緊張がほとんどなくなること、などです。その他の特徴として、
④感覚刺激を与えても目覚めにくい。
⑤レム睡眠には脈拍、呼吸、血圧など自律神経機能が不規則に変化し、この時期には性器の勃起が起こるため、自律神経系の嵐とも呼ばれる。
⑥この時期に眠りについている人を起こすと80%以上の人が夢を見ているなどがあげられます。レム睡眠はヒトでは全体の睡眠の約20%を占めますが、新生児では50%にも達しており、成長するに従って減少していきます(図9)。このことからレム睡眠の役割として中枢神経系の発達に関連すると考える説もあります。また、昼間に多く学習した日は、夜にレム睡眠が増加することなどから、記憶情報処理などに重要な働きをしていると考えられています。このように脳は働いているが、身体の筋肉がゆるんでいることから、身体の睡眠ともよばれています。
図9 加齢による各睡眠段階の割合の変化

 これに対してノンレム睡眠の特徴としては、
①入眠期の浅い睡眠段階ではゆっくりと揺れるような眼球運動がみられるが、その後、睡眠が深くなると眼球の動きは停止する。
②脳波は活動が低下し、周波数が遅くなる。
③身体の筋肉の緊張は保たれ、
④脈拍、血圧、呼吸が安定し、
⑤この時期に眠っている人をおこすと、目覚めが悪く、夢を見ていることは少ない。またこの時期には後に述べるように成長ホルモン分泌や蛋白同化が行われ、また、免疫増強作用がある。このようなノンレム睡眠は大脳の睡眠ともよばれます。
 レム—ノンレム睡眠は併せて疲労、ストレスが回復する役割を果たしているといえましょう(表1)。
表1 ノンレム睡眠とレム睡眠の役割
ノンレム睡眠
(徐波睡眠)
レム睡眠
(夢見睡眠)
大脳の睡眠
成長ホルモン分泌
体温低下
蛋白同化
免疫機能増加
身体の睡眠
記憶の固定、消去、学習
情報処理?
疲労、ストレスの回復