公益財団法人 健康・体力づくり事業財団

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睡眠

ノンレム睡眠時の障害

① 行動障害
 夜驚症および睡眠時遊行症(夢中遊行)は、深いノンレム睡眠から生じるねぼけで、眠ってから1〜2時間後の寝返りを打つ時期にほぼ一致して生じます。これらは、レム睡眠や夢体験と関連が少なく、以前使われていた夢中遊行という名称が病態と合わないため睡眠時遊行症と呼ばれるようになってきました。眠っていた患者に体動が出現し、そこから起き上がりぼんやりした表情で歩き回ります。これに、悲鳴や叫声をあげたり、強い恐怖の行動的表出と自律神経症状が出現する夜驚症が合併することがあります。通常小児期(5歳〜12歳)にみられるものとされていましたが、近年、小児期に発症した睡眠時遊行症が20〜30歳台まで続く場合があることがわかってきました。夜驚症および睡眠時遊行症は、夢見体験を伴わない点、覚醒しにくい点、好発年齢がより若年層で多くは小児期である点が特徴です。経過としては大部分は2〜3週で自然に起こさなくなります。



 夜驚症や睡眠時遊行症は学童期に多い睡眠時随伴症ですが、エピソード自体が暴力的な動作を含むことはまれです。しかし、行動を止めようとした場合や覚醒させようとした場合に、完全に覚醒できず錯乱に陥り、覚醒させようとした人間に対して暴力的行動をとることがあります。通常夢体験は伴わず、速やかに覚醒させることが困難です。異常行動中の記憶はほとんどありません。
 睡眠時遊行症のエピソードにおいて、患者は睡眠中の体動に引き続いて寝床から起きあがり、軽い前傾姿勢で歩き回ります。時に、逃走するように走り始めることもあります。エピソード中は開眼しており、ドアや窓を開けたり、的確に障害物を避けたり、階段を上ったりと比較的複雑な行動をとることがあります。転倒などの身体的な損傷が起こることもありますが、頻度は高くありません。ほとんどが学童期に起こり、その後にはみられなくなります。しかし、近年、20歳〜30歳代の成人においても同様な異常行動のエピソードがみられるようになりました。
② 主観的体験の異常
 子供に多い睡眠時驚愕症(夜驚症)においても、恐怖や不安を伴った悪夢に似た体験を聴取できる場合がありますが、この場合夢内容は断片的で悪夢と比べストーリー性を欠いている点でレム睡眠から起こる悪夢と区別できます。
 精神的外傷体験に引き続いて悪夢がみられることがあり、外傷後ストレス障害において悪夢は重要な症状とされます。戦闘体験や大災害の後に悪夢をみるようになることが報告されており、これらの場合は専門家による精神療法が必要です。