公益財団法人 健康・体力づくり事業財団

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睡眠

ナルコレプシー

 日中に突然強烈な眠気に襲われ入眠してしまうことを症状とする疾患で、授業中や仕事中に居眠りしてしまうために「怠け者」「だらしがない」ととらえられがちです。また、突然入眠してしまうため、思わぬ事故にあったり、怪我をしたりすることもあります。一般人口での発生頻度は約0.05%であり、比較的頻度の高い疾患です。
 従来より「ナルコレプシーの4主徴」として睡眠発作、脱力発作、入眠時幻覚、睡眠麻痺があげられています。
 睡眠発作はその名の通り突然の強烈な眠気で、ナルコレプシーの最も基本的な症状です。デートの最中や入学試験のように普通なら居眠りすることは考えられないような場面においてさえも、急に眠気に襲われて、数分から十数分眠り込んでしまったりします。ナルコレプシーの患者ではこうした短い睡眠でも眠気がすっきりと解消されることが多いのが特徴です。
 脱力発作は情動性脱力発作とも呼ばれています。笑う、怒る、驚く、得意になる、感動するなどといった陽性の強い情動を体験した際に、身体の一部ないし全身の脱力が急に生じるものです。「膝が笑う」「しゃべりにくくなる」などと表現されたりします。脱力発作に引き続いて入眠してしまうこともあります。
 入眠時幻覚は、就床後まもなく、患者自身がまだ眠ってはいないと思っている時に体験する、非常に現実的で鮮明な幻覚です。寝室の調度品が動いたりといった幻視が多く出現します。身体が浮かんで空を飛ぶ浮遊感と幻視の合わさった幻覚や、身体を虫が這う感じや、身体に何物かがのしかかってくるような感覚の体験がナルコレプシーでは特徴的です。
 睡眠麻痺は、入眠時などに患者は覚醒していると感じているのに、全身が麻痺して身体を動かそうとしても力が入らず、声も出ないという、いわゆる「金縛り現象」です。入眠時幻覚に引き続いてこの状態になりやすく、強い恐怖感に襲われます。健常者も同様の体験をしますが、そのほとんどは明け方で、夜の入眠時に起こるのはまれです。
 これらの4主徴のうち、ナルコレプシーの基本症状は睡眠発作であると考えられています。これに残りの3主徴のいずれか、特に、脱力発作が存在すれば診断を確定できます。しかし、発病当初は、睡眠発作のみが出現する場合が多く、診断の確定には数カ月〜数年以上の観察を要する場合もあります。これらの4主徴の他に、夜間の熟眠困難、複視、頭痛、頭重を訴えることもあります。